「シュミット使いです」って言うと大体「なんで?」と聞かれます(人気投票でぶっちぎり最下位だったらしい)。俺は単に高速機が好きなだけなんだ…!
歴史の話から始めさせてください。
かつて、ADKというゲームメーカーがありました。旧称はアルファ電子工業。1980年設立のアーケードゲームメーカーです。
他の多くのゲームメーカーと同じく、ADKもまた、ユーザーに対して様々な「顔」を見せたメーカーでした。
一般的には「ジャンピューター」の開発で著名だったメーカーですが、アーケードゲーマーの多くは「SNKと一緒にネオジオを開発したメーカー」と認識している筈です。
ネオジオというフィールドにおいて、ADKは「マジシャンロード」や「ラギ」「ニンジャコンバット」などをリリースし、「バカゲーも作るアクションゲームメーカー」としてゲーマーに知られるようになります。特にニンジャコンバット・ニンジャコマンドー等における、独特な「ADK色」は後々までユーザーの記憶に残りました。「取りあえず忍者が出てくるゲームをたくさん出してるメーカー」としてADKを認識していた人もいたかも知れません。
個人的には、この頃のADKタイトルでもっとも好きだったのは、一人称視点のチャンバラゲーム「クロスソード」でした。私は、擬似3DSTGとウルフェンシュタインの間にあって、FPSの草分けとなったゲームって実はクロスソードなんじゃないかとまで思っているのですが、それに賛同してくれる人は極めて希少です。違いますかね?いや、クロスソードが面白いことは取りあえず保証します。
1992年の「ワールドヒーローズ」や93年の「ワールドヒーローズ2」で初めてADKを認識した人、というのも勿論いると思います。この後の「痛快GANGAN行進曲」や「ニンジャマスターズ」などの存在もあり、「なんか妙に濃い格闘ゲームを作るメーカー」としてADKを認知していた人が、もしかすると一番多いかも知れません。この辺り、メーカーの認知度としては、データイーストへのそれと近いものがあったような気がします。
そんな中。そのゲームは、1996年になって、極めて唐突に我々の前に姿を現しました。
ティンクルスタースプライツ。対戦型縦スクロールシューティング。1996年、ADK開発、SNKより発売。
このゲームのビジュアルを見た人が、まずメーカーの名前を見て目を疑ったことについては議論の余地がないでしょう。ニンジャコマンドーの、ワーヒーの、痛快GANGAN行進曲の、あの暑っ苦しく濃いゲームを世に送り出してきたADKが、こんなビジュアルのゲームを出してきたのか…!? その衝撃は、丁度データイーストがマジカルドロップを繰り出してきた時の衝撃と近似していたと思います。
私の知人が、スプライツを見て思わず漏らした声を私は覚えています。「ADK、何か悪いモン食ったのか!?」
まず、ティンクルスタースプライツのビジュアル、ゲームシステムについては、下記の動画を一通り見ていただくのが一番話が早いと思います。
ちなみに、上の動画でプレイヤーキャラになっているのが、私のメインキャラであるシュミットです。動画のプレイヤーは非常に上手いですが、基本的に下位ランクのキャラクターです。
さて、ゲームの話をしましょう。
・熱い、ひたすらに熱い「対戦型シューティング」
勿論言うまでもなく、ティンクルスタースプライツのキモは「シューティングで対戦が出来る」という一点に尽きます。ただしゲームの成り立ちとしては、「STGの進化系というよりは落ち物パズルの変化球」と言った方が近いように、私には思えます。
・左右二画面に分かれて、それぞれのフィールドで縦スクロールSTGが展開する
・敵を倒すと敵が爆発し、その爆発に敵を巻き込むと「連爆」が発生する
・連爆がたくさん発生すると、相手のフィールドに攻撃を送り込むことが出来る
・対戦相手からの攻撃を更に攻撃したり、連爆に巻き込むと、「リバースアタック」「エキストラアタック」「ボスアタック」といった様々な攻撃を展開することが出来る
・敵の出現パターンはパズルゲームを意識したようなものになっており、上手く攻撃すると大量の連爆を発生させることが出来る
・エキストラアタックやボスアタックの性能はキャラクターごとに異なる
ティンクルスタースプライツの特徴をざっと書き出すとこんな感じでしょうか。
画面構成などをふくめ、ゲームの性質が「ぷよぷよ」などに代表される対戦型落ち物パズルに近い、というのはすぐに思う所かと思います。コラムスやぷよぷよについて、「これでシューティングやったら面白いんじゃね?」という形で発想されたのではないか、という推測も可能です。
で、そんなティンクルスタースプライツが面白かったかというと、
もう理屈抜きで超面白かったです。
連爆で、相手に大量のアタックを送り込む爽快感。
相手からの攻撃を、「うおーーー!!」とか叫びながら凌ぎに凌ぐ達成感。
敢えて敵や相手の攻撃、溜め段階をプールして、一気に反撃を送り込む戦略性。
エキストラアタックやボスアタックのバラエティ。
「エキストラアタック!」「リバース!」といったボイスのノリの良さ。
長時間聴くことになりながらも全く飽きのこないBGM。
正直なところ、ADKのゲームには荒削りなゲームの方が多かったと思うのですが、そんなADKタイトルの中でもぶっちぎりのスーパー完成度だったと思います。
パズル的な思考が得意な人も、STGが得意な人も、それぞれの強みを生かして闘うことが出来ました。
キャラクターごとのバラエティは、格ゲーでいうところの「キャラ差」的なものを生み出し、それぞれのキャラごとの遊び方を提供してくれました。
遊びやすく、遊んでいて気持ちよく、奥が深い。ティンクルスタースプライツは、STGとしてみても、対戦ゲームとしてみても、素晴らしい楽しさをプレイヤーに提供してくれるゲームだったのです。
勿論言うまでもなく、対戦型シューティングというジャンルが、このティンクルスタースプライツだけで構成されているわけではありません。古くは「スペースウォー!」やウォーロイド。新しくは、チェンジエアブレードや旋光の輪舞。アウトフォクシーズなんかも、ゲームとしてはSTGの感覚に近かったかも知れません。
ただ、対戦型STGというジャンルで、この「ティンクルスタースプライツ」のフォロワーというものは殆ど生まれていません。この完成度のゲームであれば、もっと色々なタイトル、色々なキャラクターでこのゲームシステムが使われてもよかったような気がするのですが…このゲームが「ネオジオ最後のADKタイトル」であるということもあり、個人的にはもっと色々なフォロワーの姿を見てみたかったという気もします。
これもまた、ゲーム業界における「惜しい一作」だったのかも知れません。
・メモリー女王が強すぎるんですが(あと若干影が薄い魔王の人)
話は変わりますが、先述の通り、このゲームの世界観は既存のADKゲームとはかけ離れまくっています。
今までのADKであれば、「主人公の大半が男くさい忍者」とか「「エキストラアタック!」の代わりに「みねうちでござる!」と言う」とか普通にやらかしそうなところ、ティンクルスタースプライツのストーリーはイカのような感じです。
魔法世界プレアミューズに伝わる伝説の星、「ティンクルスター」。この聖なる星を手に入れた者は、どんな願いでもかなうといわれています。しかしある日、悪の帝王メヴィウスにティンクルスターが奪われてしまいました。このままでは大変です。プレアミューズの王女ロードランは、お供のラビキャットを連れティンクルスターを取り戻すために旅立ちました。行く手にはティンクルスターを狙う者や邪魔する者がたくさん待ち受けています。さあ!冒険の始まりです…!
早い話、ロリ魔法少女ものが唐突に忍者ゲーメーカーから出てきたんですよ。当時の驚天動地っぷりを皆さん想像していただけるでしょうか。
登場キャラクターは全て、大きなお友達にも好まれそうなかわいらしい少女やキラキラした青年たち、あとはメルヘンちっくな「いかにも魔法少女ものに出てきそうなキャラクター」で占められており、ニンジャコンバット路線からすると突如の480度大転換といっていいでしょう。ビックリする他ありません。
キャラクターについて簡単にレビューしてみますと、
・ロードラン:主人公の魔法少女。エキストラアタックの「ラビボム」が使い方次第で凶悪な攻め方を可能とし、スタンダードな性能でありながらかなり強い
・リアリー・ティル:主人公のライバルポジション的な少女。エキストラアタックがちょっと特徴的だが、そこまで強いという印象はない
・ヤン・ヤンヤン:露出度の高いつるぺたロリキャラ。エキストラアタックは変則的で強いものの、足が遅いため相手の攻撃に囲まれて逃げ場を失いやすい。対戦はキツい印象。
・ド・ケスベイ:スケベな猫仙人。短射程のエキストラアタックが使えないにもほどがあり、かなり弱い。ハンデ用キャラという印象
・ティンカー&リンカー:双子の妖精。「チームワークの勝利でーす!」ボイスがやたら耳に残る。画面を跳ねまくるエキストラアタックがかなり強力。
・アーサー=シュミット:私の持ちキャラ。昔の魔法少女ものにありがちな、色男三枚目キャラ。移動速度が超高速。しかし、攻撃力は貧弱。エキストラアタックも画面下からの直線攻撃という、避けやすく追い詰めにくい残念性能(一応、ノーマルアタックと挟み撃ちにすればそこそこ避けにくい)。弾を大きく避けまくって持久戦を狙うのに特化したキャラ
・ナンジャモンジャ:毛玉。エキストラアタックの軌道が極めて避けにくく、暴力的な性能。正直、ド・ケスベイと同じゲームに存在していい性能ではないと思う。通常ショットもやたら強く、初期キャラの中では最強候補か。
・マッキー&ペンテル:猫耳コンビ。エキストラアタックが追いかけてきて若干うざい。
・メヴィウス親衛隊(グリフォン):色男三人組。シュミットが三人いるような感じ。エキストラアタックが避けやすく、そこまで強キャラという印象はない
通常キャラ群は上記のような感じです。
他にも何人か隠しキャラがいまして、特に「悪の帝王メヴィウス」と「メモリー女王」の性能が極悪。
・メヴィウス:表ボス。通常ショットの攻撃力が鬼のように高く、エキストラアタックの追尾性能も鬼。適当に相手の攻撃を打ち返し、エキストラアタックを送ってるだけで圧殺できるだけのポテンシャルを持っている
・メモリー女王:裏ボス。ランの母親。エキストラアタックが画面ランダムの位置から自機を狙ってくるという超高性能弾で、一瞬油断しただけで逃げ場がなくなる。溜め撃ちの性能も暴力的。「お食べになって!」じゃねえよ節食しろ。
個人的には、対戦で使うならメヴィウスが最強なんじゃないかという気はしてます。ケスベイかわいそうです。
まあ色々と書いてまいりましたが、私が言いたいことを一行にすると
・今からでも遅くないからティンクルスタースプライツのシステム使ったゲーム増えろ
ということになり、他に言いたいことは特にない、ということを申し添えておきます。キャラゲーの器としても適したシステムだと思うんだけどなあ…
今日書きたいことはそれくらいです。
対戦STGというフォーマットにおいてはこれを超えるシステムは今でもないと思っています。
キャラ性能は、メヴィウス>マッキー&ペンテル>スプライトぐらいの順位だったかなと思います。
基本的には、エクストラアタックが強いキャラが強いのですが、メヴィウスは、AC版でもL1のチャージ時間がほかのキャラより短いという特徴もあり頭一つ抜けてたと思います。
SSに移植された際には、L1のチャージ時間はキャラごとに差が生じるようになり、キャラ性能に若干影響がありました。
ケスベイはどこまでいっても弱かったですが・・・。
メモリー女王は、自分が使うといまいちなんですよね。あれはCPUの先読みチャージと超回避性能に支えられてることがよくわかります。
対CPUでも、逃げ場をなくすとあっさり落ちるので、勝てるときは割と拍子抜けできるほどなんですが・・・
またこの作品は、曲が実にすばらしかったです。
続編は、体勢がいろいろ変ってしまいあまり期待していなかったのですが、思いのほかよくできていて結構楽しめました。
すでに社会人になっていたため、やりこむとはいきませんでしたが・・・。
一時入手が困難でしたが、いまはPS2アーカイブスで買えるのでお勧めの作品です。
未だにゲーセンで大会とかもちょくちょくやってて十数年やり込んでるプレーヤーの対戦はほんと見応えありますね。