2016年03月11日

ケーナを始めた頃の話、あるいは人生いつ何をすることになるのかわからないという話


ちょっと昔話をします。


大学に入ってすぐ、フォルクローレという音楽を演奏するサークルに入って、ケーナを吹き始めました。


実際のところ、私の楽器経験はその時点で皆無に等しく、楽器に対する親和性も高いとは全く言えませんでした。小学校のごく一時期を除くと、私が唯一触っていた楽器は小さなハーモニカで、その理由は「ハーモニカを隣の家のポチに向かって吹くと遠吠えを始めて面白い」というだけの話でした。

ハーモニカの演奏技術は「吹いたり吸ったりすると何か音が出る」という段階でした。小学校の授業でやったリコーダーも鍵盤ハーモニカも、中学に入る頃にはさっぱり忘れていました。鍵盤ハーモニカについては「あ、これがドだっけ?」というレベルでの認識は一応ありますが、リコーダーの穴をどう押さえればドが出るのかについては、今でも思い出せません。

楽譜の読み方に至っては、「えーと、この左の方のにょろっとした記号にはどんな意味があるんだ?」というレベル。これについては、一応18年音楽をやってきた今でもあんまり変わりません。


当時の私を知っている人は、私がケーナを始めたことを知って、一様に驚きました。「え、お前が楽器とかやんの?」という反応だったと思います。ニュアンス的には、「え、ジャワ原人が火とか使えんの?」という疑問と同じレイヤーでした。まったく同感です。


私は一時期長距離走をやっていて、高校の時には色々部活の掛け持ち(囲碁将棋部でモノポリーをしたりであるとか)をしていましたが、基本的には体育会系の人間のつもりでした。大学では、スポーツ青年としての立ち位置を確固たるものにする為、バスケか何かを始めるつもりでした。


そんな私がケーナを始めたのはなぜかというと、これがまた全くの偶然でした。


大学に入っての4月、サークルオリエンテーションというものが盛んにおこなわれていました。要は、各サークルの新入生の勧誘競争です。


件のフォルクローレ演奏サークルは、大学の並木道に陣取って、街頭演奏をしていました。私は、何か他のサークルの説明の列に並んだ時に、たまたまそのサークルの演奏の目の前に位置することになって、ほへーと眺めていました。


後になって分かったことですが、その時演奏されていた曲は、CUANDO FLOREZCA EL CHUNO(チューニョの花が咲く頃に)という曲でした。この曲は、私が初めてスペイン語の歌詞を覚えた曲でもあります。



単に「なんか知らんが変わった楽器ばっかだなあ」という程度の認識で見物していると、ビラを配っていた先輩が唐突に前ダッシュしてきまして、私に声をかけてきました。

「おーー!なんや興味ある!興味あるか!君はどんなサークル入りたいんや!」
「(興味あるとい訳ではなかったんだが)バスケをやろうかなーと」
「おお、そうかそうか!それは民族音楽向いてるな!!高校の時は何かやっとったんか!」
「長距離走やってました」
おお、それはケーナに向いてる!ケーナがいいな!君は!どう見てもケーナ向きや!」

この物凄いごり押し具合にはある意味感服しました。後にわかることですが、この先輩は、学園祭での民芸品販売で過去数年間の売り上げ合計を余裕で凌ぐ売り上げを挙げるという、途轍もない商才の持ち主でした。


で、その先輩に敬意を表す意味でサークル説明の部屋に立ち寄ったところ、ぼーっと受付席に座っていた女性の最初の一言が


「え?何か用?」


すごい。物凄い落差。落差のジェットコースター。テーブルマウンテンの崖かよ、と言わんばかりの凄まじいまでのテンションの差でした。ちなみに、後にわかることですが、この女性の先輩は、サークルでも最強の部類ののんびり屋さんでした。


「流石に大学のサークルにもなると、こちらの意表をつく新入生勧誘をしてくるもんだなあ」とよくわからない感銘を受けた私は、その場のノリだけで当該サークルへの入会を決めたわけです。1998年の春でした。



それから18年が経ちました。



全く主体的でない理由で始めたケーナは、今、私の人生の数パーセントを占有し、確実に人生の中で無くてはならない存在になっています。同期の中には、今でも演奏を続けている人もいれば、演奏活動から足を洗ってしまった人もいますが、ケーナのみを得物にして、ケーナ吹きとして活動を続けているのは、今では私一人です。


人生、どこで出会ったものが、どう続くものかわからんなあ、と。最近つくづくそう感じるようになりました。


今までなんの興味もなかったものが、ある日突然生活の中心になるかも知れない。今までなんの接点もなかったものが、ある日突然数十年にわたって付き合うものになるかも知れない。


一期一会という言葉とはちょっと意味が違いますが、そう考えると、なかなかおいそれと「出会い」を軽くは扱えないなあ、と思う次第なのです。


ネットのどこかで、皆さまとこの文章が出会ったとしたら、それはそれで何かの縁だと思います。今後ともよろしくお願いします。



posted by しんざき at 11:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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