ところでここ数年のキン肉マンが超熱いです。
上記は最新55巻。「2016年の今発売されるコミックスの表紙を飾るのがシルバーマン」という、ただそれだけのことがここまで感動を呼ぶとは思いませんでした。シルバーマンですよシルバーマン。黄金のマスク編から30年経ってますよ?
「ここ数年」っていくら何でも期間が大雑把過ぎるやろオイ、という突っ込みが来るのは承知しておりますが、実際そうなのでしょうがない。私にとっては、完璧無量大数軍が襲来し、彼らを相手に一部の正義超人が絶望的な戦いを繰り広げる中、割って入ったのがまさかのブラックホール、という展開を観て以来、38巻以降のキン肉マンは常にヒートアップしまくりなわけですが。
そんな中でも、いよいよ「完璧超人始祖」編がクライマックスを迎えそうで、ここ数週間の展開は読者のボルテージを一方的に上げ続けまくっています。
漫画自体は、下記リンクから最新話を読むことが出来るのですが、正直最新話を是非読んでみて欲しい気持ちと、単行本を読んでいない人が最新話だけ読むのはもったいなさ過ぎるのでは?という気持ちがせめぎあっています。最新話だけでも十分面白いですが、最近の展開を知らない方は自己責任でお読みください。あと38巻以降のキン肉マンマジで買った方がいいです。面白いので。
以下は、上記最新話のネタバレを含む為、一応念のために折り畳みます。
いよいよ、残すところ(多分)あと、二戦。
キン肉マン vs ネメシス、
そして
ストロング・ザ・武道こと「ザ・マン」 vs 悪魔将軍。
ここまでの数々の激戦・熱戦の集大成というべき二つのカードを前に、それぞれの陣営の姿が描写される回が続いています。
最新話、「歴史を変える一日!」の見せ場というか最大の魅力が、ネメシスとストロング・ザ・武道の会話であることは間違いないと思います。
ここに来て、ずっと完璧無量大数軍を引っ張ってきたネメシスと、悪魔将軍との会話で正体が明かされて以降は余り語っていなかった武道こと超人閻魔が、やっとその心情を垣間見せるシーン。
シルバーマンとサイコマンの戦いを、ジャスティスマンの離反を、悪魔将軍ことゴールドマンからの糾弾を、静かに受け止め続けた彼が発したたった一言、
「私は何か間違っていたのか?」
という台詞なんて、もう涙なしには読めませんよ。
ああ、やはりそこなのか、と思わせる、たった一言。そしてそれを必死にフォローするネメシス。完璧超人の間での絆、彼らの戦う理由。
こういう「敵方の大義」の描写とでも言うべきシーンは、かつて、ジャンプ紙面に連載されていた頃のキン肉マンにすらなかったと思います。進化し続ける「キン肉マン」という漫画の、一つのクライマックスなのではないかと感じました。
この、「ずっと持ち続けていたけれど、いつか霞んでしまった大義」と、それに真っ向から対立する悪魔将軍。彼らの対戦に、否が応にも期待が盛り上がりまくります。
あと、武道がベンチに座ってベンチが体重でたわんでるシーンとか、武道が立ち上がったら天井に頭がつっかえてるシーンに関しては、ゆでたまご先生の進化するユーモアセンスに戦慄しました。

めっちゃベンチたわんでます。
こういう、完璧にシリアスなシーンでのさりげない真面目なギャグ、みたいな描写も以前のキン肉マンではあまり見た記憶がなく、最近のキン肉マンが素晴らしいと思う理由の一つです。
それはそうと。
私が「キン肉マン」の凄さを感じる理由の一つとして、「キン肉マンが毎回きちんとかっこ悪い役をやって立ち位置をリセットする」というものがあります。
前回、前々回、キン肉マンはネメシスとの闘いに怖気づいて、戦いから逃げ出そうとします。それを引き留めるのが、それぞれかつてキン肉マンと戦い敗れた、ウォーズマンとネプチューンマンの二人。ここに来て、ネプチューンマンもまさかの再登場でファン大歓喜だったわけですが。
この時点でキン肉マン、全超人でも指折りの実力者であって、実績だけ考えればまともに戦って勝てるヤツなんて殆どいない筈なんです。
キン肉マンの戦績、冷静に考えなくても物凄いですからね。まともな敗戦はカメハメとミキサー大帝相手くらいで、バッファローマンを、悪魔将軍を、キン肉マンゼブラを、オメガマンを、ネプチューンマンを、フェニックスを下してきたキン肉マンなんです。普通に考えて圧倒的強者。
ですが、「キン肉マン」という物語の根底に流れるテーマは、「普段は気弱なダメ超人が、ここぞという時に友情パワーと火事場のクソ力で大逆転」だと思うんですよ。
かっこ悪いところから強敵を打ち倒すからこそ、かっこいい。追い詰められたところからの大逆転。これはワンパターンとは言いません。作品のテーマの一番巨大なところなんですから、むしろこれが踏襲されていなかったらおかしいわけです。
ここまでキャラクターが大きくなってしまったら、並みの創作者さんなら「大きくなったキャラクター」に振り回されて軸をぶらせてしまっても不思議ではありません。そこを、何の力みも衒いも変化球もなく、ただただシンプルに「怖気づいたキン肉マンをかつてのライバルが引き戻す」という描写で踏襲してみせたゆでたまご先生は、本当にすごいと。
「このかっこ悪さこそがキン肉マンなんだ!かっこ悪いからこそかっこいいんだ!」というのは、多分キン肉マンのテーマの一つであって、ゆで先生はずっとそれを描き続けられているような気がするのです。
あと、全然関係ないんですが、キン肉マンがリングに向かうシーン、
「ヘイキン肉マンどこへ行くんだ リングの入り口はこっちだろ」
「何を言うとるんじゃ ラッキーゾーンのある外野行きの通路はこっちだろ」
まさかここに来てラッキーゾーンネタが回収されるとは思いませんでした…。(キングコブラ戦参照)
まあ何はともあれ、シリーズの集大成がすぐそこに待っていることを考えれば、この後のカードの展開をただただ座して待とうと思うわけなのです。
今日書きたいことはそれくらい。