面白かったです。
長男9歳は、去年くらいに初めて読んだ「ルドルフとイッパイアッテナ」が大のお気に入りでして、「ルドルフといくねこくるねこ」「ルドルフとスノーホワイト」など続刊も含めて、寝る前に何度も読み返すくらいの愛読書になっております。
その為、春先に「ルドルフとイッパイアッテナ」が映画化されると聞いた時は舞い上がってしまいまして、「パパ絶対観に行こうね!!」と約束させられて、先日めでたく観て参りました。世間ではシン・ゴジラが話題の中、猫たちが戯れる映画に突入してきたわけです。
結論を先に書いてしまいますと、映画は非常によく出来ていたと思いますし、展開も原作に忠実で、原作ファンも、原作未読の方、単純に猫好きな方も楽しめる丁寧な作品だったと感じました。
元々「ルドルフとイッパイアッテナ」自体がいうに及ばぬ名作でして、それほど大きく手を加えなくても、十分素晴らしいシナリオになるという事情もあると思うんですよね。
簡単に原作との比較をまとめると、
・大筋の展開は原作に忠実
・ストーリーは、「ルドルフとイッパイアッテナ」の最初から、二作目「ルドルフともだちひとりだち」の最後まで
・原作の中から、「ルドルフの成長・学び」という部分が大きくクローズアップされていた
・原作では割とさらっと流されていた描写の中でも、非常に丁寧に描かれていた部分があった
・半面、「猫たちの日常シーン」的な展開の中には削られてしまった部分もかなりあった
・ルドルフの見た目はほぼイメージ通りだった
・イッパイアッテナはいかにも強そうな風格漂うデザインになっていた
・ブッチーがだいぶエキセントリックな性格になっていた
・三作目の「いくねこくるねこ」で登場するミーシャが序盤から既に登場していた
こんな感じです。
映画にするにあたっては、これはこれで正解だったのではないかと。綺麗にまとまっていたと思います。
ということで、大きなネタバレは避けますが、以下は一応「ルドルフとイッパイアッテナ」「ルドルフともだちひとりだち」のストーリーに触れておりますので、原作未読の方はご注意ください。というか、原作読むべきだと思います。猫もの児童小説の傑作です。
以下は折りたたみます。
○ルドルフの「成長と学びの物語」
まず簡単に、「ルドルフとイッパイアッテナ」のあらすじをご説明します。
「ルドルフとイッパイアッテナ」の主人公は、黒猫の「ルドルフ」。
勿論「ルドルフとイッパイアッテナ」は猫の猫による猫たちのお話ですので、登場人物は7〜8割型猫(一部犬)です。とある地方都市で平和に飼い猫をやっていた子猫のルドルフは、ある日ひょんなことから魚屋のトラックに飛び込んでしまい、そのまま気絶してしまいます。そして気がついた時、彼は高速道路を一晩走って、東京のとある下町にたどり着いてしまいました。
そんなルドルフが出会ったのが、下町の大きなボス猫。おそるおそる名前を聞いたルドルフに、「おれの名前は、いっぱいあってなぁ」という言葉から、ルドルフはボス猫の名前を「イッパイアッテナ」と勘違いします。
こうして、イッパイアッテナに様々なことを教わりながらの、ルドルフの野良猫生活が始まるわけです。
原作を読んだ方にはお分かりかと思うのですが、原作「ルドルフとイッパイアッテナ」は、「ルドルフの成長や学びの物語」と「猫たちの日常物語」が絶妙に配分されていて、その比率は大体3:7くらいになっております。
一方、それが映画においては、より「ルドルフの成長や学びの物語」の部分が強調されており、比率が 7:3か、もしかすると8:2くらいになっているかなあ、と感じました。
一時間半という時間の関係上、細かいエピソードがある程度カットされるのはそりゃもう仕方がないことなんですが、ルドルフが「野良猫生活」に適応していく中で様々に経験していく、「猫ならではのエピソード集」がかなり少なくなっているところは、個人的に残念な部分ではありました。スズメ取りのエピソードとか。
この辺り、長男的には若干残念なポイントだったようで、きゃーきゃー喜んでみていた割に「いつものルドルフたちの生活シーンがもっとみたかったーー」とか、映画の後の夕飯時に話していました。
ただ、一方、例えばイッパイアッテナとルドルフとの関係性とか、ルドルフがイッパイアッテナから色々と大事なことを教わる部分なんかがクローズアップされて、非常に印象的な場面になっている部分は数多くありました。あれ、こんなエピソードあったっけ?と思って原作を確認してみたら、割とさらっと流されていたところだった、みたいな。特に、ルドルフの岐阜行関連のエピソードにはそういう改変が多くあったと思います。
ルドルフがイッパイアッテナから様々な学びを得る部分では、本当に、「ああ男の子ってこういうところあるよなー」と思う部分が結構あります。父親視点でイッパイアッテナに感情移入する人もいるのではないでしょうか。
○猫たちの饗宴
日常エピソードが削られているとはいえ、登場猫たちはとにかくよく動きますし、人間キャラクターを含めて味のあるキャラクターは満載です。
映画の公式サイトでは、体毛の生え方まで細かくこだわった3Dモデル作りについて触れられていますが、
これについては掛け値なく、「すげー猫っぽく動く」といって問題なかったのではないかと思います。原作者の斉藤洋先生が出した数少ない映画化条件の内、「ルドルフは二本足で歩かない」というものがあったそうですが、特にルドルフとイッパイアッテナの挙動はいちいち本物の猫っぽく。イッパイアッテナがルドルフの首をくわえて運んでいったシーンなど、「親猫か」と思いました。
ただしブッチーは歩きます。二本足で歩きまくります。今回ブッチーが狂言回しというか、コミカルスタッフの役を割り当てられているようで、なんかディズニーアニメのキャラクターみたいでしたが全体的にいい味出していました。
一方、人間キャラクターもかなり気を使ってモデリングされていたようで、給食のおばちゃんや魚屋の兄ちゃんなんかもかなりの存在感を見せていました。クマ先生がいい人過ぎる。
ということで、さらっと感想を書いてみました。
長男に「ルドルフとイッパイアッテナ」の評価を聞いてみると、
「おもしろかったけど、もうちょっと日常シーンが見たかったから75点ってところかなー」
ということだったようですが、私としてはなかなかお勧め映画になるのではないかと思います。みなさんよろしければ足をお運びください。