長男はドラえもん好きでして、ここ最近の「映画 大長編ドラえもん」はだいたい欠かさず観ています。なんだか次の作品は南極が舞台のようで、狂気山脈のような展開を個人的には期待してるんですが、恐らくショゴスとかは出てこないと思います。
私もかつてドラえもんを摂取して育った者の一人ではあるわけなのですが、実はアニメ版や映画版は当時あんまり観ておらず、私が触れていたのはもっぱら漫画版でした。そして、「大長編ドラえもん」もほぼコミックスで読んでおりました。
で、私が好きな原作「大長編ドラえもん」の順位は以下の通りとなります。
1.のび太の大魔境
2.のび太の宇宙開拓史
3.宇宙小戦争
4.海底鬼岩城
5.日本誕生
初期の作品ばっかりなのは仕様です。
で、以前新旧魔界大冒険の比較をしてみたりもしたんですが、個人的には新版よりも旧版の描写の方が好きであることが多く、特に『宇宙開拓史』についてはギラーミンの描写の問題があり、強く旧原作漫画版押しです。
旧原作のギラーミン先生超かっこいいですよね。「わたしはどんな強い相手もおそれない。同時に、弱い相手も見くびらない主義です」とか、見た目でなめられ勝ちなのび太の銃の腕前をひと目で見抜くところとか、大物っぷりが凄まじいと思います。大長編の敵方の中でも1,2を争う好きなキャラクターです。
で、私が宇宙開拓使と海底鬼岩城を推していると知った長男が、「昔の宇宙開拓史や海底鬼岩城を読みたい」というので、最近原作版「宇宙開拓史」を見つけて買ってきました。
で、改めて読みなおしまして、特に終盤の展開があまりにも完璧過ぎて思わず笑っちゃうくらい感動したので、ちょっと感動ポイントを書いてみます。
当然ネタバレが含まれるので、未読の方はご注意ください。というか、原作買って読むことをお勧めします。超面白いです、原作宇宙開拓史。
ということで、以下はネタバレです。
「宇宙開拓史」の舞台は、重力が弱い星、コーヤコーヤ星。この星において、普段は地球の重力で過ごしているのび太たちは、力もジャンプ力も並外れたスーパーマンになります。
コーヤコーヤ星は、反重力を発生させる特殊な鉱物「ガルタイト」の塊であって、強引な企業「ガルタイト鉱業」に星ごと狙われています。のび太たちは、コーヤコーヤ星の住人であるロップルたちと友達になり、ガルタイト鉱業の地上げ屋たちと敵対することになります。
終盤、のび太たちに地上げを阻止され続けて業を煮やしたガルタイト鉱業は、トラブルバスターであるギラーミンを派遣。ギラーミンは「コア破壊装置」でコーヤコーヤ星をまるごと破壊することを目論見、のび太・ドラえもん・ロップル・チャミーの4人はそれを阻止しようとするも、ギラーミンの的確な働きもあり、のび太たちは大ピンチに陥ります。
ドラえもんは、以前から「ピンチになると目当てのひみつ道具を取り出せず、見当違いの道具を取り出してしまう」という弱点を持っているんですよね。劇中、もうちょっと前のガルタイト社員との対決でもその弱点が出ているということもあり、当然、読者もその「弱点」を認識しています。ここで、ヒラリマントと間違えてごく自然にタイムふろしきを取り出しているのが、本当に絶妙な伏線。
ピンチになるのがごく自然で、かつなんの違和感もなく大逆転アイテムが話に出てくるわけです。というかこの絵面も、大ピンチだっていうのにのび太とロップルののんきな風情がまたいい味出してますよね。
そして、この大ピンチに助けにくるのが、
一度は仲違いしたジャイアンたちであることも美し過ぎる。そもそもこの物語の発端が、「普段野球に使っている空地を占領されてしまって、野球が出来る場所を探す」ということだったことが、このスネ夫とジャイアンのコンビプレイによって見事に回収されています。しかも、ここできっちり「コーヤコーヤ星の重力のちいささ」をしずちゃんやスネ夫も存分に利用しているという描写のおまけつき。
ほんの1ページの中に、この「宇宙開拓史」の主要な設定が凝縮されているのです。物凄くありませんか。
そしてこの後、物語は言うに及ばないのび太とギラーミンの一騎打ちに突入していくわけなのですが、
ここで、お互いひと目で相手の実力を理解しているという描写も素晴らしいものの、なんといってもドラえもんたちの背後をさり気なく飛ばされていくタイムふろしき。この展開、少年向け漫画として完璧過ぎると思われませんか。
緊張感といい、のび太の「銃が並外れてうまい」という設定が活かされるカタルシスといい、強敵の描写といい、この一騎打ちシーンも数あるドラえもん大長編の中でも屈指の名シーンだと思います。やはり、どうせ戦うのなら有能な強敵と戦った方が盛り上がりますよね。
そしてもちろん、最後には
タイムふろしきが決め手になっての超絶大逆転。
・昔からのドラえもんの特徴を活かして、ピンチとタイムふろしきの登場を全く無理なく描写
・大ピンチへの仲間の登場で逆転を演出している上、序盤の展開を回収
・クライマックスの決闘シーンで、さり気なくタイムふろしきの存在を描写
・最後の大逆転
もうね、逆転に次ぐ逆転、伏線、展開回収が重なりあって、少年漫画の展開としてこれ以上ない程の「完璧な展開」なのではないかと感動した次第なのです。藤子F先生ほんとーーにすごい。
大長編ドラえもんの醍醐味は、やっぱりなんといっても「ピンチからの大逆転」だと思うんですよね。その点でも、のび太の決闘にコア破壊装置と、ぎりっぎりまで追い詰められた状態からの伏線回収大逆転という展開は、もはや素晴らしいとしか言えないと思うわけです。
私が一番好きな大長編ドラえもんは、同じくピンチからの大逆転の描写が秀逸で、途中のジャングル行の描写も出色の「大魔境」ではあるのですが、この終盤の展開を含めて、「宇宙開拓史」も改めて超絶名作だなあ、と感じ入った次第です。
未読の方、是非宇宙開拓史を手にとってみていただければ。ドラえもん史上でも最大級の大ピンチとなる、「海底鬼岩城」も合わせてお勧めです。
今日書きたいことはこれくらい。