先日twitterで、こんなお話を観測しました。
shinzaki / しんざき
RT @1_3drop: 女性にMTGを教えて欲しいと言われて教えたんだけど、今まで魔術やゴブリン、エルフなどのクリーチャーが出てくる作品に触れたことがなかったせいで、「イメージができなくて数字の計算にしか思えない」と言われた。
ファンタジー導入的な作品があれば理解して貰える… at 10/03 15:07
ここでいう「魔術やゴブリン、エルフなどのクリーチャーが出てくる作品」というのは、いわゆるトールキン的世界観に基づく王道ファンタジー、と考えていいんじゃないかと思います。
・魔術ないし魔法の描写がある
・ゴブリン、エルフ、トロール、ノーム、ドラゴンなど、デミ・ヒューマンやモンスターが登場する
というあたりを取りあえずの定義にしてみましょう。
子どものころから、ごく自然に「魔術やゴブリン、エルフなどのクリーチャーが出てくる作品」に触れてきた人間としてはちょっとピンとこないところもあったのですが、確かに言われてみると、そういう作品に全く触れてこなかった人にとっては、色々と「知らない文法」が存在するんだろうなあ、とは思いました。
ゴブリンって何?トロールって何?ドラゴンって何?魔術って手品と何が違うの?という人がいても全然不思議はありません。
では逆に、「どの年代で、どういう作品が「王道ファンタジー」の入り口になり得るのか?」ということについて、自分及び周囲の何例かの観測でちょっと考えてみました。
恐らく代表的なカテゴリーとしては、
・幼児〜児童向けアニメ
・絵本
・児童小説
・ゲーム
・小説、ライトノベル、漫画
これくらいになるのではないかなーと思います。
〇幼児〜児童向けアニメ
絵本と並んで、乳幼児期から触れることが多そうなカテゴリー。「ファンタジーの原体験」となると、これと絵本がおそらく一番多いんじゃないでしょうか。
今まさにうちの双子(4歳)は、ディズニーアニメである「ちいさなプリンセスソフィア」や「アナと雪の女王」などでファンタジーな世界観や魔術とか魔法といった概念を学習しているのですが、やはり「ディズニーアニメがファンタジーの入り口だった」という人はそれなりの数いるのではないかと。「白雪姫」「シンデレラ」みたいな古典も未だに見られてますしね。
他には、年代にもよりますが「オズの魔法使い」や「ニルスのふしぎな旅」のような子ども向けオリジナルアニメが入り口になった人もいそうです。いわゆる魔法少女ものは、世界観を考えるとちょっとカテゴリーが異なるでしょうか。
ジブリはもうちょっと対象年齢が高いような気はしますが、うちの双子は「となりのトトロ」は喜んで見ています。「ハウルの動く城」であるとか、女の子だったら「魔女の宅急便」が来てもおかしくはないですね。他、ムーミンなんかもそれに近いものがありそう。
〇絵本
読み聞かせをしてもらっている乳幼児の中には、絵本がファンタジーの入り口になった、という子も結構いるのではないかと。動物が喋るのはデフォルトですし、王道ファンタジー的な世界観の絵本も少なくありません。
たとえば「エルマーのぼうけん」。「もりのこびとたち」。「三匹やぎのがらがらどん」にはトロールが出てきますし、「まほうつかいとねこ」には魔女が出てきます。ガチガチなファンタジー世界観の絵本というのはむしろ少ないかもしれませんが、「ファンタジー的要素」が豊富に含まれる絵本というのは枚挙に暇がありません。
知人のお子さんは、「かいじゅうたちのいるところ」を読んで以来ファンタジーものの作品にハマったそうです。そういう例もあるのかと。
〇児童小説
ここも多種多彩です。絵本や児童向けアニメにあまり触れていなかった家庭であれば、ここが「ファンタジーの原体験」になってもおかしくはありません。
言うまでもない「ホビットの冒険」もうちょっと対象年齢層は上がりますが「指輪物語」を皮切りにして、「ナルニア国物語」「ゲド戦記」「はてしない物語」「獣の奏者」「リンの谷のローワン」「エラゴン」「不思議の国のアリス」などなどなど、古今東西ファンタジー児童小説は山ほどあります。
私自身は、初めて本格的なファンタジー作品に触れたというのは、エンデの「はてしない物語」を読んだ時だったかもしれません。ナルニアは若干宗教色強いですが、ファンタジー的王道世界観という意味では文句のつけようがありません。勿論ゲド戦記は、「魔術」「魔法」という概念については出色のファンタジー小説。
最近だと、世界観自体は現代(+異世界)ですが、「ハリー・ポッター」でファンタジーに初めて触れたという子どももいるかも知れないですね。
〇ゲーム
80年台以降は、「ゲームがファンタジーの原体験だった」という人も結構増えてそうな気がします。
PCゲーが初体験という人は流石に少ないでしょうが、ファミコンで言えば、言うまでもない「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」の他、「ハイドライドスペシャル」「ワルキューレの冒険」「ゼルダの伝説」「ドルアーガの塔」あたりがファンタジーの原体験だった、という人はそんなに珍しくないでしょう。もうちょっと時代を下れば、テイルズやブレスオブファイア、ポポロクロイスやアーク・ザ・ラッド辺りが入り口だった人もいるのかも知れません。
「ウィザードリィ」や「ウルティマ」で初めてファンタジーに触れた、という人がいてもおかしくはありません。流石に88版ではないと思いますが。。。
「テーブルトークRPGで初めてファンタジーに触れた」という人は流石に希少な気はしますが、一応「D&D」や「T&T」「ソードワールド」などの海外・国産TRPGの存在も挙げておきます。変わり種でいうと、「ソーサリー!」や「火吹山の魔法使い」みたいなゲームブックから入った人もなかにはいるかも知れません。
〇小説、ライトノベル、漫画
これらは、多分もうちょっと年上向けのカテゴリーになります。上記の「子ども向けアニメ、絵本、ゲーム、児童小説」に接触してこなかった上で、という前提になりますので、「原体験」という意味では既にだいぶふるい落とされているかも知れませんが、勿論これらカテゴリーには山ほどファンタジー作品があります。
漫画で言えば、恐らく「ダイの大冒険」や「魔法陣グルグル」なんかはファンタジー世界観系の代表的なところなのだろうと思います。時代を下って、手塚作品で「リボンの騎士」辺りが原体験になっていた子もいたかも知れません。
一方小説やライトノベルの分野には、「ガチガチのファンタジー作品」というのはむしろ山ほどあります。すげー多いです。
例えば「ロードス島戦記」や「ルナルサーガ」。「スレイヤーズ」「風の大陸」といったライトノベル黎明期の作品から、「十二国記」「カイルロッド」「魔術師オーフェン」のようなちょっとだけあとの作品、「ゼロの使い魔」のような比較的最近の作品まで、ファンタジーものはライトノベルの代表的なジャンルの一つとして位置づけられています。海外で言うと、エルリック・サーガなんかもありますよね。
一通りファンタジー世界観を抑えたうえでのパロディとして、という側面もありますが、「フォーチュンクエスト」も広い年代に人気がある作品です。「コクーン・ワールド」なんかも同じカテゴリかも知れないですね。
多分小学校高学年から中学校くらいになってからだとは思いますが、幼児期〜少年期にファンタジー作品に触れてこなかった、という人の中には、これらライトノベルが「ファンタジーの原体験」になった人もいるのも知れません。
ということで、ダラダラ書いて参りました。
特に結論ということもないんですが、仮に冒頭のツイートの知人の方が「今から」ファンタジー作品を初めて読むのであれば、私であれば「はてしない物語」をお勧めいたします。子どもが読んでも大人が読んでもすげー面白い、ファンタジー児童小説名作中の名作です。
今日書きたいことはこれくらい。
トロールとかウィッチとかドワーフとかのイメージをつかみたければ、やっぱり基本はグリムまで戻るべきなんでしょう。グリムは、大人よりも、案外と小さな子どものほうが引き込まれるようです。大人から見たらナンセンスでも、5〜6歳ぐらいの子どもならけっこうのめり込むように思います(もちろん読み聞かせですが)。そのあたりでファンタジーの世界に馴染んでおけば、指輪物語ぐらい軽いみたいですね。
ちなみに、エンデは最高の作家だと思いますが、はてしない物語ははてしなさすぎて、私は途中で何度も挫折し、数年前にようやく読み終えました。そういう意味では、ハイ・ファンタジーではありませんが、モモのほうが引き込んでいく力はあるように思いますね。
好きな話題なので、思わず乱入しました。失礼。
ガチガチのファンタジー世界観かはともかくとして、「森の中の三人のこびと」「ヘンゼルとグレーテル」「地もぐり一寸法師」なんかはファンタジー色強いですね。
まあ、これら童話に実際に接触するのは、結局絵本やアニメでってことが多いのかも知れないですが…