2016年10月17日

ブログ読書感想文:「ルドルフとスノーホワイト」

猫になったこと、ありますか?


絵本。小説。児童書。なんでもいいんですが、真剣になって読ませてくれる本の共通点は「入り込むことで別の世界を見せてくれる、体験させてくれる」ことです。私たちは、真剣に本を読むことで、「ほかの誰かになる」ことが出来ます。


例えば、「十五少年漂流記」を読むことで、私たちは無人島に漂流した少年になって、生き残る為に全力を尽くすことが出来ます。

例えば、「指輪物語」を読むことで、私たちはビルボやサムになって、中つ国で生死を賭けた冒険をすることが出来ます。

例えば、「ウは宇宙船のウ」を読むことで、私たちは宇宙船に憧れる少年になって、ロケットの打ち上げを見上げることが出来ます。


「他のだれかになれる」。本には色んな素晴らしいところがありますが、その中でも私は「他のだれかになれる」ことが特にお気に入りです。その為に本を読んでいる、というところだってあるかも知れません。


ところで、本を読むことでなれる「他のだれか」は、何も人間に限りません。時には宇宙人や、ロボットや、お魚や、お化けや、動物になることだって出来ます。

もちろん、猫になることだって。例えば「猫のダヤン」。例えば「百万回生きた猫」。例えば「11ぴきの猫」。例えば「長ぐつをはいたねこ」。例えば「のらねこぐんだんパン工場」。私たちを「猫にしてくれる」本というのは、案外たくさんあります。

ただ、そんな中でも、一番はっきりと、リアルに、そして何より楽しく「猫になれる」本が、私にとっては何かというと「ルドルフとイッパイアッテナ」であり、そのシリーズの4作品なのです。


今回は、その「ルドルフとイッパイアッテナ」のシリーズの中でも、4冊目の「ルドルフとスノーホワイト」の話をしようかと思います。




○「ルドルフとスノーホワイト」の背景

まず最初に、ちょっとシリーズのおさらいをさせてください。

ルドルフとイッパイアッテナのシリーズは、主人公の黒猫・ルドルフの視点で進みます。とある地方の町で普通の飼い猫をしていた黒猫・ルドルフは、ある時魚屋のトラックに飛び込んで気絶してしまい、知らない間に長い旅をして、東京の下町にたどり着きます。右も左もわからなかったルドルフは、そこでボス猫であったイッパイアッテナと出会い、「野良猫としての生き方」と「教養」を教わり始めます。


「ルドルフとイッパイアッテナ」「ルドルフともだちひとりだち」の二作が、「ルドルフの成長物語」だったことは間違いないでしょう。

ルドルフは、この二作品を通じて様々な経験を積み、純粋さも保ちつつ、強くしたたかに成長します。幾つか武勇伝を積んだルドルフは、いつのまにやら猫達の間でも、一目おかれる大物になりつつあります。テリーに「ルドルフ親分」と呼ばれそうになって、言いくるめて「ルドブン」にさせているルドルフには、妙な居心地の悪さが見えます。

「いくねこくるねこ」と「スノーホワイト」の魅力の4割くらいは、根っこは変わらず、けれど大きく成長したルドルフを含め、「イッパイアッテナ」「ともだちひとりだち」で登場した猫たちの「その後」がみられることだと言っていいでしょう。


あ!この子、今こんなことしてるんだ!とか。

あ!あいつ、元気にやってたんだ!とか。


読者にとっての「ルドルフとスノーホワイト」のキーワードは、「再会」。黒猫ルドルフの、ボス猫イッパイアッテナの、ブルドッグのデビルの、ブチ猫ブッチーとミーシャの「その後」が見られることが、かつて「猫になった」私たちにとっては何よりのご褒美なのです。



○「ルドルフとスノーホワイト」の「生活感」。

これはシリーズ共通の話なのですが、「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズの何よりも大きな特徴は、「猫たちの生活」の描写が素晴らしいことです。そこには本当に、「ああ、猫たちってこういう生活をしてるのかもなあ」「猫たちって普段、こういうことを考えているのかもなあ」という納得感のある風景が描かれています。


例えば、スズメを捕まえる腕を競ったり。

例えば、餌をもらいやすい人間の家について談義をしたり。

例えば、喧嘩相手を脅かす口上を考えたり。


時には一緒に遊び、時には喧嘩し、時には協力し、時には別れる。猫たちが生活していれば、確かにこういうことを話すことになるかもなあという描写が、辺り一面に散りばめられているのです。


それぞれの猫、犬間の「人間関係」ならぬ「猫犬関係」とでも言うべきものがその見どころの一つで、例えばルドルフ、イッパイアッテナ、デビルたちとの掛け合い、情報交換の様子が実にリアルというか、猫・犬ならではの生活感にあふれています。「ルドルフとイッパイアッテナ」当時は仲たがいしていたデビルも、すっかりルドルフ達の仲間になり、犬ならではの特技を使ってルドルフたちを助けてくれるのも「スノーホワイト」の魅力の一つです。

そして、タイトルにもなっている白猫の「スノーホワイト」。今回から新たに登場する彼女が、ルドルフたちとどんな猫犬関係を築くのかも、この作品の重要なポイントの一つです。


「ルドルフとイッパイアッテナ」の頃からルドルフの友達になっていたブッチーは、いつの間にやら子持ちのお父さんになっています。ブッチーとミーシャの間に生まれた、クッキーやラッキー、チェリーといった子猫たちも、今回のお話の中では重要な立ち位置を占めています。私たち読者から見ると、ルドルフは「成長した子猫」なのですが、彼ら子猫たちにとってのルドルフは「ルドルフおじさん」であり、いろんな経験を積んできた立派な先輩です。

「ルドルフに対する子猫の視線」というのは、「ルドルフとスノーホワイト」のまさに中心になってくるポイントでして、今回発生する事件では、とある猫が「ルドルフがかつて経験したこと」をまさにそのままなぞることになります。繰り返される猫たちの歴史。そんなところでも、私たちは作中の時の流れと、そこに実在している「生活」を感じることが出来ます。



〇まとめ:ルドルフからの手紙

かつて、「ルドルフの成長物語」だったルドルフシリーズは、「いくねこくるねこ」と「スノーホワイト」で「再会と、その後」の物語になりました。では、この次はなんの物語になるのでしょうか。

こんなにも楽しく「猫になれる」シリーズが、この後どんなキーワードの物語になるのか、私は楽しみで仕方がないのです。

齋藤洋先生は、「ルドルフとイッパイアッテナ」のシリーズを「ルドルフから来た手紙を小説にした」ものだ、と語っています。
その言葉を借りれば、斎藤先生に新しい「ルドルフからの手紙」が届くことを楽しみに、この感想文を締めたいと思います。


新しい「手紙」でも、楽しく猫になれますように。みなさんも、機会あれば是非「猫になってみる」体験をされることをお勧めいたします。



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この記事は、長男(9歳)との読書感想文勝負の為に書かれたものです。


今日読み比べします。

posted by しんざき at 17:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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