2016年12月11日

「さむがりやのサンタ」と、大人同士の会話が好きになったきっかけという話

「さむがりやのサンタ」という絵本、ご存知でしょうか。



著者は「スノーマン」の作者として知られるレイモンド・ブリッグズ。タイトルどおり、寒いのが苦手なサンタクロースが、天候やら煙突やらにぶつくさ言いながら子どもたちにプレゼントを配る、という筋書きでして、初版は1974年だそうなので、もう相当の古典絵本の部類になると思います。

私が子どもの頃読んでいた絵本というのは、流石にもうあまり残っていないのですが、これはその内の数少ない一冊になります。買ってもらったのは、本の印刷年数から判断すると1983年。私が4才の時のようです。他にもう一冊ある「オコジョのすむ谷」という写真絵本と並んで、これは当時から、私がもっとも好きだった本の内の一冊になります。

ブリッグズの絵本を読んだことがある方ならわかると思うんですが、彼の絵本って「いわゆる絵本」というよりは漫画のような表現形態なんですよね。コマ割があり、登場人物の台詞は吹き出しで表現され、けれど絵本ならではのユーモラスなリアリティがある。

このページなんてお気にいりのページの一枚なんですが、

サンタ2.png


ページ全体が一軒の家みたいになっていて、サンタが煙突の中を降りていくところでつながっているんですよ。こういう表現、非常に面白いと思います。煙突を降りきったところで一言文句を言うサンタがまたいい味出してまして、彼全編こんな感じで愚痴と文句ばっかりです。「なんだいこの天気は!」とか「じゃまっけなアンテナだ」とか。

この絵本でのサンタは完全に「文句が多いおじいちゃん」でして、子どもが読んでもサンタの存在を非常に身近に感じられるということで、お子様にもお勧めの一冊だと思います。


ところで、この「さむがりやのサンタ」の中でも一番のお気に入りのコマというのがありまして、


サンタ1.png

これなんです。

サンタクロースは勿論世を忍ぶ仮の姿といいますか、少なくとも子どもに姿を見られてはいけないお約束みたいのがありまして、このサンタも基本夜中に隠密でプレゼントを配っているのですが。劇中で彼が唯一、自分以外の大人と会話しているのがこのコマです。絵本の中で時間経過が明示されていまして、牛乳配達が歩きだす午前5時前くらいの出来事のようです。


私、このコマが子どもの頃からすっごい好きなんですよ。


なんというんでしょう。「サンタの存在が当たり前であることが、このコマ一つで表現されている」とか、「サンタの苦労が周囲に認識されていて、ねぎらいの言葉をかけられる対象になっている」とか、「サンタと牛乳配達の人がまるで顔見知りみたいにフレンドリーに話している」とか、このコマの持ち味ってのは色々ありまして、それはそれで十分いいコマなんですが。

子どもの頃の私がこのコマを気に入った最大の理由は、単純に「事情がわかっている大人同士が、一言で十分なコミュニケーションをとっている」ということがかっこいいコマだったから、なんじゃないかと思うんです。

サンタクロースが、まるで1人の職業人であるかのように描かれており、その苦労もその楽しさも十分に表現されているのが、この絵本の一番の魅力なのは間違いないと思うんですが。「サンタクロース」と「牛乳配達の人」が、お互い1人の職業人、プロとして、たった一言の短い会話を交わす。この一言だけで十分、過不足のないコミュニケーションが出来ている。

そういうところに、子どもの頃の私はなんともいえない「かっこよさ」を感じたんじゃないかなあ、と、今では他人事のように分析するわけです。これ以降、私は「プロ同士の事情が分かった短い会話」を好むようになるんですが、多分その原体験がこれだと思います。


という話をかなり昔に奥様にしてみたところ、「腐の才能があるってことだよ」と言われたような記憶があるんですが。やめて!私に変な才能を見出さないで!!


ということで、土曜は子どもたちを連れてじいじばあばと食事をしてきまして、その道すがら「サンタが町にやってくる」を聴いていて、上のような話を思い出したという、それだけの話でした。


今日書きたいことはそれくらい。





posted by しんざき at 08:30 | Comment(1) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
似たようなことか分かりませんが私は子供の頃あだち充のH2を読んで、
こんな感じの気の利いた会話をしたり相手への愛のあるバカたれを
言ったりできるようになりたいなぁと思ったものでした…
Posted by at 2016年12月11日 18:05
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック