例えばここに、「○○という薬品が認可されないのは、既存の薬品が売れなくなって困る製薬業界の陰謀」「製薬業界が圧力を掛けているから、○○が認可されない」といった陰謀論が転がっていたとします。webでも割とよくみるタイプの陰謀論ですよね。
これを聞いた時、一般的な、あるいは実務的な想像力がある人は、大体これくらいの疑問は感じると思います。
・薬品の認可はどこの省庁のどの部署がやってるの?
・その省庁の、どのレベルの人たちに、どれくらい圧力をかければ認可に影響を及ぼすことが出来るの?
・その圧力は、どの会社の、どんな部署の人たちが、どれくらい組織的にやってるの?その予算は?予算の監査は?
・そもそも圧力って具体的に何?
・コンプライアンスチェックはどうやってかいくぐってるの?
・○○が認可されると、具体的に既存の薬品はどれくらい売れなくなるの?
・それを避けることによるベネフィットは、圧力をかける為のリスクやコストと見合うものなの?そういう見積もりって誰がやってるの?
・なんで陰謀論以外の、明示的な証拠を伴ったスキャンダルにならないの?報道も抱き込んでるの?その予算は?予算の監査は?
・ちなみに、今までも色んな新薬が認可されてるけど、それによって売れなくなった薬品はなかったの?そっちはどういう基準でスルーしたの?
いや、例えば、の話なんですけどね。
陰謀論の種類にもよりますが、多くの陰謀論は「実務的なディテール」が非常に曖昧です。「××の陰謀」という、その××の中身をちゃんと明示していないものがひじょーーに多いんですね。
いやまあ当たり前といっちゃ当たり前の話で、実務的なディテールまで明確になっていればそれは陰謀論ではなく明示的な告発ですから、そもそも陰謀論としてカテゴライズされないわけですが。それでも、「どう見ても最低限必要な情報」がそこに全く存在しない、という感覚にはかなりびっくりすることがあります。
例えばの話、上記の新薬の認可陰謀論の話であれば、実際に統括しているのが厚労省であり、その中に薬事・食品衛生審議会というものがあり、新薬の認可なんかはここで最終的に承認されているみたいだな、ということは、調べれば殆ど一瞬でわかります。
もうちょっと具体的に言うと、医薬品医療機器総合機構という厚労省所管の独立行政法人で信頼性の調査やGMP適合性調査を行って、そこで作られた報告を元に薬事・食品衛生審議会の部会で承認されてるみたいですね。
で、この審議会は議事録やら委員名簿やら添付資料やらも一通り公開されておりまして、誰でも観ることが出来ます。
一例として、下記のような議事録があります。
当然、議事録にはバイネームで具体的な出席者まで記録されています。この中のどれくらいの人数を抱き込めば審査に影響を及ぼせるのかはよくわかりませんが、地位も相当な収入もある人たちを、具体的に相当数買収する、ないし表に出ないような形で圧力をかけるのはそこそこ大変そうな気がします。誰にいくら払えばいいんだよ、って話ですね。
ちなみに、医薬品医療機器総合機構の審査業務についても、こちらであらかた概要を確認することが出来ます。審査・安全業務委員会については、同じく議事録が公開されています。流石に審査中の情報が公開されることはない筈ですが、運営自体はクリアに行われているように見受けられます。
陰謀論の特徴の一つとして、「陰謀論の主体となっている組織や構成員が非常に曖昧」というものがあります。たとえば「政府」とか「官僚」とか「○○業界」とか「マスコミ」とか、ぼやっとした組織や団体が主語になることが実に多いんですね。
しかし、組織にしても団体にしても、実際には人の集まりであって、実在する人間が動かしています。何故か、陰謀論が「人」を責める方向に行くことってなかなかないんですよ。(例外もありますが。首相の名前があがる陰謀論とか)
上の例で言えば、医薬品医療機器総合機構にせよ薬事・食品衛生審議会にせよ、中身もやっていることも構成人員もクリアになっているんだから、怪しいところがあれば直接構成人員に当たって調査することすらできそうなのに、陰謀論をとなえる人たちはなぜかそれをしない、という話です。最初から姿が見えているものを、わざわざ曖昧な形にして陰謀論に仕立てている訳です。
圧力云々の話だけではありません。行政法人には勿論業務監査が入りますし、企業の側にも当たり前ですが監査があります。コンプライアンスチェックもあります。実際に何かおかしなお金の流れを作ろうとすれば、かいくぐらないといけないチェックは相当数に登りますが、それをくぐり抜けるだけのベネフィットが本当に企業側(これも、具体的にどの会社のどの部署?という話もありますが)にあるの?という話も当然あります。で、それについての「怪しい」という話が、何で内部の証拠つきのリークという形でなく、外部のよくわからない人たちの陰謀論という形でしか出ないのか、という話もあります。
要は、「製薬業界が圧力を掛けているから、○○が認可されない」という陰謀論は、ほんの10分くらいネットを漁るだけで、「これどうなってんの?」という疑問点が山ほど出てくる、という話なんです。
そういう疑問点の辻褄を全部合わせることを考えれば、「単に治験で効果が認められないから新薬として承認されてないだけなんじゃないの?」と考える方が、多分妥当ですよね?少なくとも私はそう思うんですが。
これらは全部「例えばの話」ではあるんですが。陰謀論の大体8割から9割くらいは、似たような過程で似たような疑問に突き当たります。「この陰謀論、具体的にはこういう人たちが対象になってるってすぐわかるけど、なんでわざわざ曖昧にしてんの?」であるとか。「予算とかコンプラチェックとか監査とかどうなってんの?」とか。
いや、勿論すべての陰謀論がそう、というわけではないので、中には実際にあたっている陰謀論もあるのかも知れないですが。少なくとも、webやらtwitterやらで流布されている陰謀論の大多数は、実際にちょっと「具体的な中身を想定」すれば、一瞬で「あれ?なんかおかしいぞ?」ということがわかるものばっかりであるように思います。
陰謀論を簡単に信じてしまう人たちが、何故そういう具体的な疑問を抱かないのか、私には単純に不思議です。上の新薬絡みの話でいえば、まっとうな審議を経て薬品を承認している審議会に疑問を抱くなら、何故その前に陰謀論の方に疑問を抱かないんですか?という話ですね。
一応断っておきたいんですが、「ちゃんとした組織の行為に疑問を挟むべきではない」という話ではないですよ。上の新薬承認の話だって、問題点は恐らく色々あるんでしょう(総務省からの審査速度改善についての勧告とか、話出てましたよね)。 ただ、「根拠がよくわからない陰謀論よりは既存のフローや組織の方がなんぼか信頼性はあるんじゃないの?」ということです。
世の中では、陰謀論を信じ込みやすい人を「想像力豊かな人」と言ったりすることがありますが、私はどちらかというと逆で、あまり想像力が豊かでない人の方が多いんでないかなーと感じます。時には、陰謀論の方について、「その陰謀論、なんかおかしくないか?」であるとか、「その陰謀論を唱えることで、唱えている人はなんか得してないか?」といった方向での疑問を感じてみるのもいいんじゃないかなあ、と思う次第なのです。
今日書きたいことはそれくらいです。
たくさんの人が関わってるから少数への有利な施策なんて無理だよって?たくさんのプロセスが関わってるから無理?
大企業に勤めたことないのかな。組織が大きくなるほどに全体を見通せる権限を持てる人も各人の個別プロジェクトへの関心も少なくなりがちだしそのほかの関わった人はルーティンで碌に監視機構も働かなくなるよ。
例えば調査の数字を変えたりいろんな会で説明したりいっぱい色んなことが罷り通った市場の移設工事関連やパチンコみたいに明らかに違法なギャンブルがパチンコのみ許されてるのは逆にどうしてだと思ってるの?パチンコなんて小規模の時なんて役人への賄賂なんてごく少数に限られてただろうと思うけど。
人を責めないとか言ってるけど、ほとんどの場合外部の者が実行者特定できるわけないじゃん。逆に明らかになった佐野みたいな陰謀は叩かれて消滅したじゃん。
馬鹿なのかな。でも役人がやった事って次から選考委員を匿名にしたよね。
叩かれそうな役人のステップなんて更にステップも実行者も不明にするに決まってる。
色んな多くのプロセスや関係者がある中での不当な圧力なんて歴史上でも今の日本でもいくらでもあるし、場合によっては公然となってるのに全部無視できるほど思い込みでしか世界見れてないんならその認知能力とかゴミクズ同然だね。逆にすげえ。
って記事が書けそうだなと思いました。
少しは勉強してから記事を書いてください
メリットの為に大変なことぐらいするでしょう。関係者さえ特定できれば、金や圧力だけでなくてもできることなんてたくさんある。
単純な大枠「だけ」しか無いように見えるのは(切実な関心がないから遠巻きにしか見てないという)観測位置の反映にすぎないのでは、とは考えないのか。
元々人間の脳みそはデフォルト仕様で陰謀論大好きであるのは論をまたない。
必要なのはケーススタディを積み重ねて「実務的な想像力」を涵養すること…それでは十分ではない。
世知辛い世の中、くろうとこそ落ちやすいタイプの陥穽だってそれぞれの分野でザラにあるだろう。
死角というのは自分ではわからないから死角なのだ。
たとえばの話、反トランプでスクラムを組んだ米メジャーメディアは陰謀論に負けたのか、あるいはおのれも陰謀論にとらわれていたのか?
立派な肩書きを持つ化石ウヨク/サヨク学者は勉強が足りないのか?ソニー天外伺朗は実務経験不足なのか?
いっちょう実務的想像力発揮して説明してみてもらえますかね?
常々こういうのとばかり自分を比べて完全に油断しちゃってる底の浅い人が言いそうなバズワード「実務的想像力」。
陰謀論者は相手にしてほしいならウィキリークスのようにまずは証拠を集めるべきですね
陰謀論が笑われるのは「大いなる圧力」のせいではなくそのほとんどがスカスカの根拠とガバガバな論理のせいなんですよ
そう、陰謀論とは結果から思いを馳せる男のロマンなのです。
たくさんのプロセスがあるから圧力は無理って話じゃなくて
陰謀論として成立する必要最低限の情報が含まれていないことが多いって話だよ?
陰謀・圧力が存在しないって話ではない。
本当に陰謀が存在する場合は、その陰謀論はある程度ディティールが伴う話になるはずってことだよ。
このブログは普段からこんな感じなのか?看板にゲームがどうとか書いてあるせいか。
陰謀は確実に実在します。
なぜなら「陰謀」とは陰謀論という社会系エンタメコンテンツのマーケティング用語だからです
実務的な難しさは、もっともらしい陰謀の理屈を創作できればいいだけです
この創作話に「陰謀」と銘打てば、「頭が弱い人向け社会系エンタメ」が好きな人々が簡単に食いつきます
著者がプロの専門家でなくても全く問題ないです
あなたでもなれます
部数は少ないですが、確実に一定の市場がある安定したビジネスです
陰謀とはこのような確実に実在する陰謀によるものなのです
細かいことは省きますが、今あるデータは患者ごとのばらつきが大きすぎて、効果のあるなしがはっきりしないものです。その上、どういうメカニズムで機能するのかのデータがありません。これが致命的な問題です。
ほとんど成分同じ薬がありますが、あれは抗がん剤として認可されたものではなく、まったくの別用途です。
さらに、あの薬はがんを撲滅するのではなく、再発防止や進行を抑止する薬であり、効能通りであれば、医者や製薬会社に取って最も都合がいい「患者は生かさず殺さず薬づけ」を行うことが可能となる薬です。
そんな都合がいい薬が陰謀論でつぶされるとかまず考えられないかと思います。
また、陰謀論とされている事の重要な部分は公務員の職種によってはほぼ全員が知ってますが世間には一切ない事にされているものもあります。
そういう事を知らなければあなたは無知だし知っているなら悪意のあるミスリーディングではありませんか?
社会の屑は一族郎党首を括れよ。
このお陰でどれだけの社会的リソースが無駄に
なったことか。
例に出た製薬業界の陰謀について説明してみますね
1 フラジャイル(漫画 フィクション 現在)
製薬会社の人間が、副作用のある薬を治験結果を医者に都合良く書かせて通そうとする話があります
都合良く書かせるという部分の描写は一定のリアリティーがありました
2 レスタミンコーワとドリエルの件 (実際の話 昔から今現在)
ドリエルは昔とても売れた飲んだら眠れる薬です
レスタミンコーワはドリエルよりも古いアレルギーの薬です
この2つの薬は中身が一緒で、レスタミンコーワ5錠とドリエル2錠で同じ成分なので同じ効果になります
レスタミンコーワ5錠とドリエル2錠の値段を比べると、ドリエルの方が10倍近く高いです
でもレスタミンコーワは「アレルギーの薬」なので、5錠飲むと寝やすくなりますよ、という売り方は出来ません
レスタミンコーワの説明書に新しい飲み方を追加する事もできませんので、知らない人は10倍のお金を払ってドリエルを買ってます、不思議ですね?
3 薬害エイズの件(実際の話 かなり昔)
使ったら人が死ぬ、と薬業界の責任者も理解していた薬がなぜかすぐに回収されませんでした
すぐに対応しなかったせいでもちろん死人が出てるんですが、人を殺してまで回収を遅らせた理由は何なんでしょうね?
4 人民は弱し 官吏は強し(小説 ノンフィクション ずーっと昔)
星新一 が、お父さんについて書いた小説
製薬会社の社長であるお父さん(星一)が官僚たちに助走をつけてフルボッコにされながらも頑張るお話です
官僚たちが一企業をロックオンしてゴールポストをガンガン動かす様子が描かれています
製薬業界について考えてざっと上記1〜4の知識しかない私でさえその恐ろしさを理解し、製薬業界は「何があってもおかしくない」という認識ですので「どう見ても最低限必要な情報」なんてまったく全然ありません
製薬業界で道理を引っ込めて無理を通せる存在が確実にある(あった)事を知ってますので
「陰謀論の主体となっている組織や構成員」の裏づけなんて今更必要ないですし「実務的な想像力」とやらの以前の問題です
社会人を数年経験すれば世の中はかなりギリギリなところで成り立っているという事を知ります
大きな事象でも、必ずあるボトルネック部分は案外小くて、数人や数時間に左右されるという恐ろしい事実を体験するわけです
(或いは学生であっても「実務的な想像力」ってのが豊富にある人なら「世の中案外少人数に動かされてる」という事が理解できるかもしれませんが)
つまり、あらゆる分野に対して「何があってもおかしくない」とあきらめの境地に達しますから、陰謀論を裏付ける説得力は必要なくなるんです
最近の例で言えば、築地の移転先に汚染水が溜まってたなんてありえない事があったから、何があっておかしくないんじゃない?とか
結論:
世の中の過半数の人間は「世の中何があってもおかしくない」と知識と実体験から理解している(或いは理解したつもりになっている)ので
陰謀論を信じるために必要とされる「どう見ても最低限必要な情報」というものは無い
しんざきさんは「○○という薬品が認可されないのは、既存の薬品が売れなくなって困る製薬業界の陰謀」を聞いた時に「一般的な、あるいは実務的な想像力がある人」の想像する事を
数行にわたって書いてますが……その時「一般的な、あるいは実務的な想像力がある人」が想像する事は
・そういう事もあるかもねぇ
という単純な想像なんです
なぜなら、近い経験が誰しも一度や二度あるんですからね
世界は非合理的に運用されいるという事と、それを理解してる人が過半数である事を理解して下さい
実務的なディティールが荒唐無稽だったしね
ただ……
「こうでこうでこうだからこの記事はおかしい」
こういう文章はわかる。ここまでならいい。
それなのに「お前バカ?」とか「ゴミクズのような」という煽りのような攻撃的な言葉をなぜ付け加えるのか。
どれだけ正しかったとしても読むに耐えない。
まあここのコメント欄だけに限った話でもないけど
・同じ成分の薬
医薬品のコストの大部分は開発コスト(効果を証明するコスト)なので、成分が同じでも効能が違えば当然コストも違います。
また、医薬品は再審査期間が経過するまでは申請者が効果を証明しなければなりません。
これは医薬品の安全性と開発コスト回収のための制度です。
だから、同じ成分で価格が違う薬があっても何ら不思議ではありません。
・薬害エイズ
「人を殺してまで回収を遅らせた」は事実と違います。
判決文を読むと、被告人は加熱製剤の早期承認に尽力したことが書かれています。
加熱製剤の早期承認に尽力した人が意図的に非加熱製剤の回収を遅らせるわけがありません。
「まさか危険性が分かっているものを使い続けることはないだろう」という甘い認識のもとで、回収指示を出す必要性に思い至らなかっただけでしょう。