2017年04月05日

「氷ざいくごて」が象徴する、「ドラえもん」というインフラの物凄さについて


先日、ドラえもん大好きな長男と一緒に南極カチコチ大冒険を観てきました。


ネタバレなしの感想だけ端的に書きますと、

「面白かった」
「ただ、いつもならもうちょっと弱音を上げそうなスネ夫のヘタレ分がちょっと足りなかった」
「やはりスネ夫はここ一番で弱音を吐いてこそのスネ夫では(一応吐いてたけど)」
「オーロラのシーンとか氷の表現とか、絵がめっちゃ綺麗だった」
「狂気山脈分もちょっとあるけど、全体としてはラヴクラフトっていうよりナウシカだった」

というくらいの感じになります。リメイクでない大長編としてはとてもよく出来ていたと思うので、気になる方は是非見に行ってみるといいのではないでしょうか。


で、まずちょっと、南極カチコチ大冒険というより、ドラえもん一般の話から入るんですけれど。一応、微妙にネタバレが混じりそうなので折りたたみます。

予告編見ていただけばわかるんですけれど、この話の舞台、南極です。作中の日本は真夏でして、暑さに耐えかねたのび太はいつものようにドラえもんに泣きついて、ニュースでたまたま出ていた巨大氷山に行って、かき氷をたらふく食べたり、氷を整形して遊園地を作ったりします。で、この時偶然見つけた「10万年間触れられていなかった金のリング」をきっかけとして、のび太一行は南極探検の旅に出ることになるんですが。

この展開で出てきたひみつ道具が、例えば「タケコプター」「どこでもドア」といった定番アイテムの他に、

・氷を整形することが出来る「氷ざいくごて」及び氷を柔らかく固める「ふかふかスプレー」
・ロープを呼び出して色んな仕事をさせられる「ピーヒョロロープ」
・地面に埋まったものを探索することが出来る「ここほれワイヤー」

だったりしたんですよ。

私ここで、改めて「ドラえもんものすげえな」と思いまして。


氷ざいくごてって、ドラえもんでの初出ってどこかご存知ですか?しんざき家にはコミックスあるんですけど、てんとう虫コミックス版の18巻、「大氷山の小さな家」に掲載されてるんです。この「大氷山の小さな家」自体、「流氷にカキ氷を食べに行く」という話なんで、多分今回の導入もここに着想されてると思うんですけど。

ドラえもんの18巻って、出版1979年ですよ?実をいうとこれ、私が生まれた年です。これ以外に、1978年の「小学6年生」にも載ってるらしいんですが、こっちは確認できませんでした。

ピーヒョロープなんてドラえもんの7巻、75年出版の巻が初出の筈ですし、ここほれワイヤーに至っては74年の5巻です。43年前のひみつ道具。

勿論、それ以降この辺のエピソードがアニメ化されていたことは何度かある筈ですから、このひみつ道具が40年ぶりに掘り起こされたって訳じゃないんですけれど、それにしたって「40年前にぽんと出されたひみつ道具が、物語の割と重要なアイテムとしてしれっと登場している」「しかも、それに誰も違和感を感じていない」って、今更みたいですけど、改めて考えるとドすげえことだと思うんですよ。


これ、全然「南極カチコチ大冒険」に限った話じゃないんですけど。長男がドラえもん観ると、大体「劇中で出てきたひみつ道具」の話になるんですよ。「で、こんなひみつ道具が出てきてー」「あ、それ知ってる知ってる、昔読んだ」「こういう使い方するよね」「ああいう風にも使える」というのがいつもの話の展開でして、要は今の最新アニメの話が完全にシームレスに理解出来てしまうんです。

タケコプターとかどこでもドアとかひらりマントといった「定番インフラ」はいうに及ばず、言ってしまえばマイナーなひみつ道具でも、ガンガン会話が成立してしまう。「30年近くのジェネレーションギャップが全く動作しない」んですよね。

過去に出てきた「ひみつ道具」というインフラがあまりにも質・量ともに充実し過ぎていて、新しいお話を作る時にもなんの問題もなく再利用出来てしまう。だから、「昔のドラえもん」しか知らない人でも、「最新のドラえもん」について全く違和感なく理解出来てしまう。けれど、話自体が古臭かったり丸丸使いまわされている訳ではなく、ちゃんとお話自体は現代の視点で作り直されている。


最新のコンテンツと、最古のコンテンツが、「ひみつ道具」「キャラクター」という共通要素を通して、フィルターゼロでそのまんまコミュニケーション出来てしまうんですよ。40年前にドラえもんを読んでいた人が、すぐにでも最新のドラえもんの話題に入っていけるんです。

これだけ分厚い「積み重ねのインフラ」を持っていて、しかも数十年にわたって子ども向けの一線級に留まり続けているコンテンツが、世界に一体何作あるでしょう。ディズニーですら、「最古の視聴者が最新のコンテンツについていけるかどうか」という話で言えば、ここまでの厚みではないんじゃないかと思います。

30年ジェネレーションギャップがある親子が、40年差のあるコンテンツの話で共時的に盛り上がることが出来るって、ホントすげえな、と。

最新の映画に、割と重要なポジションとして「氷ざいくごて」が出てきたという、ほんのちっちゃい話ではあるんですが。改めて藤子F先生のアイディア力、作品構成の強度に感動したので書いてみた次第です。


あとはちょっと南極カチコチ大冒険の話なんですが、上述した通り、私はカチコチ大冒険を観て「ナウシカっぽいモチーフがあちこちに出てる」と思いました。キャラ的にはカーラがナウシカ。


「カーラとナウシカの立ち位置の比較」としまして、

・ブリザーガはどう見ても氷属性の巨神兵
・カーラの世界はブリザーガによって氷漬けにされている。ナウシカの世界は巨神兵によって焼き尽くされている
・カーラは黄金のリングを、ナウシカは秘石に関わって、どちらもブリザーガ、ないし巨神兵を制御するキーアイテムになっている
・どちらも動物を乗り回している、動きやすい服装、活発で責任感のある性格づけ、髪色などのキャラクターデザインの共通点

あたりは指摘出来そうな気がします。あとどっちも触手もち巨大生物に追っかけまわされたりしますよね。

ラヴクラフト分で言うと、「南極の地下に眠る謎の巨大遺跡」というモチーフの時点で、ある程度狂気山脈になっちゃうのは仕方ないような気はします。オクトゴンがもうちょっとショゴスっぽかったら完璧だった。


あと、全然関係ないんですが、作中「ほんやくコンニャクを食べようとしたら南極なんで完全に凍り付いていて、わざわざドラえもんが(オクトゴンに追いかけまわされながら)鍋で煮たてて必死に解凍した」という描写がとても面白かったです。凍るんやアレ。


ということで。長々書いて参りましたが、結論として南極カチコチ大冒険は面白かったので、未見の方は是非観て頂くのがよろしいんじゃないでしょうか、という程度でこの項を閉じたいと思います。


今日書きたいことはそれくらいです。

posted by しんざき at 12:28 | Comment(4) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ウルトラマンやライダーが何故変身できるのか、のようなインフラ例のようなもので、シリーズが長く継続さえすれば話は通じるんでしょうね
海外で言うと、Tintinとかスタートレックとか、長く息が続いている(そして比較的低年齢層向け)のコンテンツのインフラ例は恐らく同様に話が通ずるものだと思います
例えばワープとか当たり前に通じてますけど、相当古くて、相当特殊なインフラですし
Posted by at 2017年04月05日 19:41
今のウルトラマンやライダーなら、昔のとは全然別物なんで、子どもと(昔観てただけの)大人で盛り上がるのはちょっと難しいと思いますよ。
Posted by at 2017年04月05日 19:46
(昔観てただけの)大人が今のドラえもんで盛り上がるのも、今のウルトラマン、ライダーで盛り上がるのも、障壁としては似たようなものだと思いますけどね……
Posted by at 2017年04月06日 10:19
うちの子は平成ライダー、ウルトラも見るし、昭和ライダー、ウルトラはもちろん、キカイダーやパーマンで盛り上がりますよ。
Posted by at 2017年04月07日 00:52
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