2017年06月07日

対戦ゲームにおいて、「井戸の中の蛙」になれる井戸がなくなってしまった、という話

こんなツイートを拝見しました。


以下は単なる思い出話です。

かつてのゲーセンでは、色んな形で「店内での格付け」というものがあり、それがそのゲーセンに通う大きな動機づけになっていた、というところまでは言ってしまっていい気がしています。


例えば、格ゲーにおける対戦での格付け。対戦台を中心に発生していた、小さな小さな競争社会。「あいつ超つええ!」とか、「あいつは俺と同じくらいの腕だ!だから負けると超悔しい!」とか。「いつの間にあんなに強くなりやがって!」とか。

例えば、STGの筐体に記録されるスコアランキング。顔も知らない、アルファベット三文字だけの競争相手。一位を取れて初めて自分のスコアネームを考えたり、自分のスコアネームが次から次へ蹴落とされて、畜生次は目に物見せてやる、と誓った経験。

例えば、ホワイトボードに掲示されたゲーセン内ランキング。メストやベーマガの全国ランキングには遠く及ばないとしても、そのゲーセン内での小さなコミュニティの中では、きちんと誇ることが出来た小さな勲章。


勿論それは、小さな井戸の中、小さな蛙たち同士の話でした。ただ、井戸があるということは、その井戸の中で最強になるという目的も、その井戸から勇気を出して出ていく自由も、その井戸に帰ることが出来る安心感もある、ということです。


地元のゲーセンで負け知らずを誇ったプレイヤーが、試みに有名強豪ゲーセンに繰り出して、ぼっこぼこにされて地元に逃げ帰る、というようなことも勿論ありました。そして、それがさらなるモチベ―ションになり、色んなテクニックを持ち帰り、結果としてそのテクニックがゲーセンのレベルを更に底上げする、みたいなこともあったのです。そして時には、小さな井戸の中の小さな蛙が、本当に全国で最強の蛙になる、なんてことも起こったんです。


私も、その小さな蛙でした。名古屋の片隅の小さなゲーセンで、一部の格ゲーのタイトルではそこそこの強さで、けれど栄や名駅や、あるいは新宿や渋谷のでかいゲーセンでは全然相手にならなかった程度の蛙。ゲーセン内でダライアス外伝のスコアランキングに血道を上げて、ある月一度だけ、とあるゾーンで全国一位をとることが出来た蛙。


現在、格ゲーにせよSTGにせよその他のゲームにせよ、対戦要素やスコアランキングというものはネット経由が基本です。最初の段階から、広いネットの世界のランキングを眺めながら腕を上げることになる、という時代です。勿論ゲーセンでの店内対戦が出来るゲームは多いですし、店の中でのコミュニティや大会もあるのですが、以前のような「どこのゲーセンにもそのゲーセン内での小さなコミュニティが」という時代ではなくなりました。

「ゲーセン内順位」と「全国順位」は全然別枠で、前者もある程度ちゃんと機能してた、というのは結構大きかったのではないか、と感じます。それがどの程度のものかは別として、「競争相手が半強制的にネット全域になってしまったことの弊害」というものも、恐らくあるのだろうと思います。お山の大将程度の実力はあった人が、お山の大将になれなくなってしまった。「お山の大将」というポスト自体が消滅してしまった、と言ってもいいでしょう。

勿論、そのずっとずっと以前の段階で、「そもそも対戦相手がいない」「ゲーセンまで行くのが大変」といった問題を始めとする、様々な問題を解決したメリットの方が遥かに大きいのも確かで、その点ネット対戦やネットランキングを否定する気は全くないのです。ネット対戦がなければ、対戦ゲーというのは今より遥か以前の時点で消滅してしまっていたのではないか、とすら思います。


ただ、「広い範囲では全然認知されていないけれど、頑張れば載れて、その小さなコミュニティの中ではちゃんとした勲章になる」という程度のランキングも、そのゲームの発展においては結構大きな意味をもつものだったのではないか、と思うんですよ。

これは多分、少年漫画の展開の話にも似ています。最初はそこそこの強さの中ボスしかいないからこそ、中ボス打倒の為に強くなれる。最初からフリーザ様が観測できる中で、1巻の時点からフリーザ打倒の為に強くなれるメンタルの持ち主ばかりじゃないだろうなー、という話です。


広い広いwebの世界に、かつてのような小さな井戸を作ることは出来るのかな?その井戸の中で最強になることを誇れるような仕組みは出来るのかな?というような。

そんなことを考えた次第なのです。



posted by しんざき at 07:20 | Comment(8) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ためになる話で同感です。

>広い広いwebの世界に、かつてのような小さな井戸を作ることは出来るのかな?

ネット上のゲーセン作ってほしい。
Posted by qa at 2017年06月07日 16:40
>広い広いwebの世界に、かつてのような小さな井戸を作ることは出来るのかな?
マストドンが流行るわけですわ
Posted by at 2017年06月07日 22:10
長文失礼。

私も昔は地元のゲーセンで格ゲーを遊びまくった世代、30台のオッサンですが
小さな井戸となる世界のメリットに関しては概ね同意出来ました。
地元店における漠然とした格付けや、遠征の緊張感や洗礼は実感として良く分かります。
しかしその井戸には多数のデメリットや問題点もありました。
行ける時間帯に強い常連が居て、凹られるばかりでまともに遊べない。
初狩りや台パンや身内回し等マナーの悪いプレイヤーが多くて普通に楽しめない。
設置台数の問題で回避もできない…等々。
レアケースの部類ですが、不良に絡まれたりという経験も実際ありました。
(私は全盛期には地元店では『強い常連』に位置していましたが、それとて初心者初級者からすれば「あの人がいる時は対戦し辛い」という状況だったでしょう。
私自身は初心者には乱入せず見守る派でしたが、そうした所で彼らは露骨な初心者狩り勢に即入られて終わりという事も多々ありました)
初心者から上級者までが同じ場に放り込まれ、これは対戦だ、みんな金を払っているんだ、文句があるなら強くなれ…
そうした状況にもなにくそと喰らいつける人は続きますが、無理だった人はただ淘汰されていく。
そういった無慈悲な弱肉強食の弊害を、大量のライト層を含んだ人口の多さ・人気の高さで誤魔化されていただけの時代でした。
多くの友人知人他人が格ゲーをやってゲーセンに足を運んでいたあの活気や楽しさも覚えていますが、そういった部分も忘れていないし、あの時代を語る上で忘れてはいけないと思います。

勿論今のネット対戦にも色々問題点はあるわけですが
対戦機会を増加してジャンル自体を支えたという点以外にも多数のメリットもあるわけです。
『昔』は良かった部分に注視して、『今』は悪い部分に注視する。
率直に言ってこれは思い出補正であり悪い意味での懐古と思います。

これはある格闘ゲーム開発者の去年の言葉ですが、格ゲーを野球に例えた上で
「格闘ゲームで草野球をやってもいいじゃないか?」と言っています。
「草野球チームがジャイアンツに勝てないのは当然だが、草野球Lv同士で楽しんでもいいじゃないか」と。

つまり井戸となる世界の楽しさや重要性の話に通ずるわけですが、これは『昔は良かった』ではなく、昔から格ゲー・ゲーセンにあった問題点への提起です。
ゲームごとの仕様にも左右されますが、今のネット対戦のシステムや発達したSNSを駆使すれば
近い腕の人を探し、集まり、対戦するというのは決して難しくありません。
ゲーム内のフレンド機能やゲーム外のフォロワー等で自分の目標足りうる『井戸』を作ることは十分に可能なんです。
格ゲーが好きでハマっている人であれば、トッププレイヤーにはとても及ばずとも
近い腕前のフレンドと切磋琢磨し小さな目標を作り対戦を重ねて楽しむということは珍しくありません。

私は今も主に家庭版のネット対戦で格闘ゲームをそれなりにやっていますが
ゲーセンに比べれば圧倒的に相手の取捨選択はしやすくなっていると感じます。
前述したように、単純に近い腕前のフレンド達と対戦するというのもありますし
無差別に腕試ししたいならランクマッチをすればいいし
(そのランクマも基本的には近似段位の相手を探してくれます)
プレイヤーマッチで上下問わず腕の差がありすぎた時はその部屋から抜けて別の部屋へ行くなり、自分が部屋主ならその相手をキックするなりということも出来ます。
勿論、格下の相手が自分に挑む気概を見せていればそのまま付き合っても良いですし、自分が格上の相手に(相手が受けてくれるのなら)挑み続けても良いわけです。
さらにゲームによってはロビーマッチという疑似ゲーセン的な機能や
グッド/バッドプレイヤーリスト等の相手選別補佐機能もありますし、わざわざチャットを打ち込まずとも、定型文による簡易チャットや感情アイコン表示によるちょっとした交流も可能です。

昔のゲーセン文化には前述したような負の部分もあったわけですが
それだけではない正の部分にもしっかり触れ賞賛したことは素晴らしいと思います。
しかし現状のweb対戦の世界にも正の部分、井戸を作り得るポテンシャル、作る方法はありますし
昔から抱えていた問題を、今からでもどうにかしようと努力して実際に補佐するシステムを考案している開発者も居るわけです。
そういった部分を綺麗に無視している文頭の引用ツイート、及びこの記事のネット対戦デメリット考察についてはとても頷けません。

特に引用ツイートの「ピラミッドの頂点付近に行けないからやる気が出ない」という理屈は、ただただ傲慢かつワガママとしか思えませんでした。
草野球プレイヤーが「俺がジャイアンツに勝てないのは分かりきってる。だから最近の野球は面白くない」などと愚痴っているようなものです。

真摯な記事と感じたので、こちらも真摯なコメントを…と思いましたが、我ながら長すぎますね。
改めて、長文すみませんでした。
Posted by とぎ at 2017年06月08日 02:41
これは本当に同感です。
私は格ゲーマーでしたけど、やっぱり狭い範囲での盛り上がりや格付けはわかりやすくて大事ですよね。
人間段階を踏まないとなかなかやる気も出ないですし。
最近ネットの音ゲーでいきなり世界ランキングが表示されてカンストの人が100人以上並んでる、といった状況に出くわしてやり込もうとはとても思えませんでした・・・
Posted by テイル at 2017年06月08日 17:01
非常にためになるお話でした。

自分も以前同じようなことを考えて、オンライン対戦も地域ごとに分割してみてはどうかと夢想しておりました。

県ごとなどに分割された範囲で対戦&ランキングがつけられ、、年に1度各地域の代表が全国で戦うとか。

副次効果として、地元野球部を応援するような感じで自分の地域の代表を応援できるのはなかなか面白いんじゃないかなと。
Posted by HW at 2017年06月08日 17:56
たしかにそうかもしれませんね。
僕は格ゲー初心者なので全世界の下の下にいるので。
スト4のときの県別ランキングなんかはよかったです。
なんなら市町村別ランキングまでやってくれてもうれしいかも。プレイヤーこんだけいるんだって思えるし。
Posted by ととんがとん at 2017年06月09日 17:55
ゲームだけでなく、創作分野でも、そういうの非常にあると思います。
昔、学校の漫研で一番絵が上手い「井の中の蛙」は、地方コミケ、全国コミケと段階的により巧い絵描きに出会い、敗北感と成長を繰り返したものでしたが、今はいきなり最強の絵描きと一緒にpixivランキングで比較されます…
Posted by at 2017年06月09日 17:58
プラットフォーム問わず、フレンド内ランキング機能を備えたゲームも昨今は増えてきてます。

ツムツム辺りが顕著か

ネットでもお山の大将システムの構築は可能かと思います。

15-10年くらい前のPCのFPSも公式サーバーが用意されているものばかりでなく、有志のユーザーが常設のサーバーを建て様々な機能を追加して各サーバーで色が全然違いましたね。

ガチ勢が毎日集うサーバーとか、初心者ばっかりのサーバーとか、殺されると変な効果音が鳴るサーバーとか、回ってるマップも違ったりほんとに特色がありました。

現在はマッチングシステムがメインストリームになってしまいましたが、復権も可能かもなーと思います。
Posted by わをん at 2017年07月31日 03:48
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