特に対戦ゲームにおいて、「負けた言い訳のしやすさ」ってかなり重要な要素なんじゃないかなあ、と最近考えています。負けた時、「何のせい」と言えるか。「何のせい」に出来るか。
例えば、囲碁や将棋のような完全情報ゲームでは、基本的に「負けの理由」を「相手が強かった」ないし「自分が弱かった」にしか出来ません。負けの言い訳をしにくい。負けが即「自分の実力不足の認識」に直結するんですね。
これがポーカーやブラックジャック、あるいや麻雀のようなランダム性が絡むゲームになると、程度の差こそあれ「引き運のせい」「運が悪かった」といった言い訳が可能になってきます。
一方、これが例えば対戦格闘ゲームや対戦型パズルなんかだと、まあ「レバー/コンパネのせい」とか「キャラ差やキャラ相性のせい」といった言い訳の余地はあるんですが、基本的には「自分の実力」に敗因が寄りやすい。ゲームタイトルにもよるんですけどね。
「負けの言い訳がしやすい」ゲームと、「負けの言い訳がしにくい」ゲームがあるような気がしています。そして、「負けの言い訳がしにくい」ゲームというのは、実力の判断がしやすい代わりに、負けた時にかかるストレス、負けた時に必要な精神的コストが大きい。
一方、「負けの言い訳がしやすい」ゲームは、言ってしまえば「負けても自分を直接責めなくて済む」側面が大きいわけです。勿論これも良し悪しなんですが、ここではその話はしません。
負けの言い訳っていうとちょっと聞こえが悪いですが。今の時代、「ライトユーザー向きかどうか」ということを判断する尺度で、「負けの言い訳がしやすいかどうか」って結構大きいと思うんですよ。
自分の実力不足を何度も味わいつつ、少しずつ上手くなる、ということに慣れているガチゲーマーの人には、ちょっと感覚が分かりづらいかも知れないんですが。
世の中、皆が皆「お前が悪い」「お前は弱い」という言葉を受け続けて、それをバネにして成長出来る人ばかりではありません。「何かのせい」にしつつゆるく続けたい、「何かのせい」に出来た方が結局続けられる、という人って結構多いような気がするんですね。多分、いわゆるライトユーザーという層ほど、そういう人が多い。
ところで。
ここからが本題なんですが、スプラトゥーン2をプレイしていると、極めて「負けの言い訳」がしやすい構造になっているなあと感じます。前作から既にそうだったんですけれど、今作は更にそれが進行しているような気がする。
・そもそもチーム戦である
・勝利/敗北条件が「塗り面積」「ヤグラの進行」「エリア占拠のカウント」など、一人一人の責任範囲が不明確なものである
・ゲーム進行がスピーディで、(特に慣れていない人にとっては)一人一人の戦果や行動を正確に把握しにくい
・勝つ為のノウハウが定型ではなく、他人の行動がノウハウに沿ったものであるかどうか判断しにくい
・今作からは、デス数もゲーム上では確認出来なくなっており、自分の「敗因に繋がる行動」がより不明確になっている。また、キル数もサポート込の数字になっている
多分他にもあると思うんです。変な言い方ですが、「自分の責任」が極めて隠蔽されやすい構造に、多分意図的にされているんじゃないかという印象があります。
そもそも、スプラトゥーンはチーム戦なので、元々「一人で勝つ」「一人で負ける」というゲームではありません。協力しないと勝てないし、負けたからといって即「自分が弱かったから」ということにはならない。
更に、スプラトゥーンはいわゆる「キル/デス」が即勝敗に紐づく構造にはなっていません。勿論キルされればその分不利にはなるんですが、キル数やデス数がそのまま勝ち負けに繋がるルールではない。実際、きちんと仕事をした上で敵をひきつけてキルされる、なんて行動であればちゃんと勝利に紐づいた行動になっていたりします。
とはいっても勿論「キル/デス数」というのはある程度は客観的な指標になり得るわけですが、それが「2」ではリザルト画面で出てこない。キル数はサポ―ト込みの数字だし、デス数はイカリングがないと確認出来ないんです。「なんか何回か死んだなー」という印象はあっても、それが明確な結果として突きつけられない。
しかも、スプラトゥーンのゲーム構造は、慣れていない人程「味方の行動」を把握しにくい作りになっている。誰がどこで何やってんのか、というのは、ちょくちょくマップをチェックして、ある程度ゲームに通じていないと理解出来ないわけです。味方が勝利に貢献しているのか、それとも足を引っ張っているのか分かりにくい。
以上のような仕様の結果どうなるかというと。これもちょっと言い方がアレですが、スプラトゥーン2は、ものすっごく「味方が弱かったから負けた」という言い訳がしやすい構造になっている、と思うんです。
実際、「スプラトゥーン 味方運」とか「スプラトゥーン 味方が弱い」とかで検索してみると、わらわらそれっぽいページが引っかかります。負けた時、まず「味方のせいで負けた」と思いやすい、そう思えるようなシステムになっているのではないかと。
これ、ガチゲーマーの人にとってみれば「言い訳すんな!お前が弱いんだろ!」と言いたくなる状況かも知れません。「自分が弱い、ということを見つめないと強くなれない」とか言いたくなる人もいるかも知れません。それはそれでもっともです。
ただ、繰り返しになりますが、世の中「お前は下手だ」と言われ続けながらそのゲームをプレイし続けられる人ばかりじゃない、と思うんですよ。適度に「自分のせい」が隠蔽されるからこそ続けられるし、結果として続けている内に強くなれる。そういう人も結構な数いると思うんです。
間口を広げる為に、「いかに負けの言い訳をしやすくするか」というデザインがあってもいい。かつ、スプラトゥーン2は、(リザルト画面とか特に)それをかなり意識しているように見えるなあ、と。
「負けの言い訳のしやすさ」という視点でゲームを見てみるのも結構面白いですよ、と、そんな話でした。
余談ですが、私が大好きなSTGというジャンルも、どちらかというと「負けの言い訳」がしにくいジャンルだと思います。そんな中でも、「彩京弾は人間が反応出来るように作られていない!!つまり俺が今死んだのは開発者が悪い!!」と大っぴらに主張するシューターは存在しました。逆に清々しいと思います。
今日書きたいことはそれくらい。
イカ面白いですよね。スイッチが手に入らないから1しか知らないけど。
その点チーム戦だと負ければ味方のせいに出来るので気楽と言えば気楽ですね。
大抵C〜Bの低レート帯というのもこのゲームの面白いところ
「負けた言い訳がしやすくなった」はネガティブな表現だよ
敢えてそのネガティブな表現を選んでいるのでは?
この記事自体は負けた言い訳をしやすくすることでプレイ人口を増加させてるゲームデザインを高く評価しているし、仮にけなしていたとしても個人のブログじゃん。「ネガティブな表現だよ」って指摘の意図がよく分かんない。記事の筆者とコメ主が何らかの知人でふたりともネガティブな表現をしてはいけない組織の構成員かなんかなの?
ゲーム作りを生業にしておりますが、カジュアル向け対戦ゲームは、いかに言い訳しやすくするかが肝とされています。
チーム戦
ランダム性
勝ち負け条件の不明確化
あたりがよく使われる手ですね