2017年08月18日

わかやまけんさんの訃報を聞いて思ったこと

「こぐまちゃん」シリーズの作者、わかやまけんさんが2年前に亡くなっていた、という訃報を目にした。85歳だったそうだ。


こぐまちゃんシリーズには、しんざき家でも随分長いことお世話になった。特に「しろくまちゃんのほっとけーき」である。

この絵本、長男が1歳か2歳くらいから家にあるから、もう8年くらいの付き合いになる。しんざき家では、毎晩決まって寝る前に絵本読み聞かせの時間があるのだが、一時期の絵本ラインナップではかなり頻繁に登場していた。「ホットケーキを作る」「それをこぐまちゃんと食べる」という展開の情報量が、2〜3歳くらいの子どもにちょうどいいらしいのだ。


大人になった今見ると、「しろくまちゃんやこぐまちゃんの眼が怖い」といった部分も正直あったのだが、子どもにはむしろこれくらいのディフォルメ具合がちょうどいいらしいのだ。その辺はミッフィーのディフォルメに近い。

我が家ではこの絵本が、「第四の壁の突破口」となっていた。

何を言っているのかと思われるかも知れないが、子どもは、この絵本を読んでやると何故か「参加」するのだ。自分もその場所にいるものとして、その読み聞かせに注文をつけるのだ。

この「しろくまちゃんのほっとけーき」では、途中、しろくまちゃんがほっとけーきを作るシーンがある。ボールでホットケーキミックスをかき回している時に、「ぼーるがごとごと だれかぼーるをおさえてて」という台詞がある。そこで、長女と次女は、必ず申し合わせたように、同じタイミングで絵本に手を伸ばす。


しろくまちゃんが今まさにかき混ぜているボールに手を伸ばして、「おちゃえたよ!」としろくまちゃんに答えるのである。


考えてみると、ここでしろくまちゃんが言う「だれか」とは、まさに絵本を読んでいる読者しかあり得ない。しろくまちゃんのお母さん、ではない。しろくまちゃんは、相手がお母さんであれば「おかあさん」と呼びかける。そして、その場面に、しろくまちゃんとしろくまちゃんのお母さん以外には、我々読者しか存在しない。

つまり、「しろくまちゃんのほっとけーき」は、まさに読者と登場人物の壁、いわゆる「第四の壁」を突破している、いわばメタ絵本とでもいうべき絵本の嚆矢だったのである。なんだかよくわからないが。

少なくともしんざき家の長男長女次女は、全員例外なく、この「しろくまちゃんのほっとけーき」という絵本で、初めて絵本に「参加」した。おそらく、しんざき家以外でもそういう子どもは多いのではないだろうか。

ホットケーキを作る最中の「ぽたぁん」「ぴちぴちぴち」「まぁだまだ」といった擬音・発声が妙にリズミカルなところとか、最後にはきちんと皿洗いやお片づけの描写があるところとか、つくづく「子どもへの読み聞かせ」というものに最適化しきった、素晴らしい絵本コンテンツだと思う。

子どもが出来て良かったことは星の数程あるが、一つは「様々な絵本、様々な児童小説に改めて出会うことが出来たこと」だ。自分が子どもの頃にはなかった視点で、今の様々な絵本や児童小説を読むことが出来るのは、私にとってとても楽しい体験である。

一方、自分も子どもの頃読んでいた絵本作家さんの訃報を、次々聞く時に一抹の寂しさを感じることも事実である。

文豪や漫画家に比べればスポットライトが当たることが少ないかも知れないが、それでも子ども達を楽しませてきた数で言えば、絵本作家、児童小説作家というのは十分以上に偉大な人達だと思う。

そんなことに思いを馳せながら、今夜は久しぶりに、「こぐまちゃんのほっとけーき」を長女次女に読み聞かせながら眠ろうかと思う。「親指姫がいい!」「シンデレラがいい!」というのをなだめながら、たまには。



posted by しんざき at 06:50 | Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しろくまちゃんの全賭け…。もとい、しろくまちゃんのほっとけーきは名作ですよねえ…。
うちでも大変重宝していました。
Posted by at 2017年08月19日 21:33
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