主語小さい記事です。
いや、twitterではネタとしてこういうこと書きましたけど、
shinzaki / しんざき
欧米の人たちはどうも「触手」とか「触腕」とかいう時点で割とキモ怖いらしいので、日ごろ触手エロを見慣れているオタクがクトゥルフに恐怖感を感じないのは当たり前のことと言える at 12/06 15:38
実際には触手がどうとか触腕がどうとかって、多分枝葉の問題だと思うんですよ。shinzaki / しんざき
ラヴクラフト全集は一応全部読んだけど、ラヴクラフトの創作の中で一番怖いのはクトゥルフでもヨグ=ソトースでもなく、強いて言うと「冷気」に出てくるムニョス博士とかだと思う at 12/06 15:37
だって、ラヴクラフト作品で「触手」「触腕」みたいな描写が出てくる、というか「宇宙的怪異」がある程度直接描写される話ってごくごく一部ですもんね。多分、全体の2割あるかないかってところなんじゃないでしょうか?クトゥルフ神話全体だったらもっと一杯あるんですけどね。
これはどちらかというと「ホラー」というジャンルの受け取り方とか、楽しみ方の話なんですが。
私、ホラーの肝って、「踏み外させ方」だと思うんですよ。
つまり、「さっきまで日常だったのに、いつの間にか日常を踏み外していた」という、いってみれば浮遊感。あれなんかおかしいぞおかしいぞ、と思いながら読み進めて、どこかで「既に日常を踏み外して落下していた」という感覚。後から読み返して、「ここだったのか」と気づく戦慄。
少なくとも私が、ホラーを読んで「怖さ」を感じるところってそこなんですよね。
怖いホラーって、凄く「日常」を描くのが上手いと思うんですよ。ついさっきまで和気あいあいと、ごく普通の日常を送っていたのに、ある瞬間から異様な情景に、異様な世界になる。日常描写がリアルであればある程、それが「実は壊れていた」と気付く時の恐怖感が大きくなる。
いわば、日常風景でゲージ溜めて、そのゲージで一気に超必を撃つ、みたいな話なんだと思うんです。少なくとも私は、「日常ゲージ」がある程度溜まってないとあんまり怖くない。それも、「怖くなるぞ怖くなるぞさあ怖くなるぞ」っていう前振りがある怖さじゃなくって、「あれ、なんか変だな…日常の筈なのに…あれ?あれ?」ってなる方が怖い。
要するに、物語序盤からすぐ怖い話が始まったり、「怖くなるぞ」っていうタメが明確な作品ってあんまり怖くないんです。
で、そういう意味では、ラヴクラフト作品って「日常ゲージ溜め」はあまり行われないんですよね。勿論タイトルにもよるんですが、割と早い段階で「日常」は終わるし、場合によっては最初の時点で既に日常が終わっていたりする。「怪異の存在明示」が結構早いんです。
ただ、これは決して「ラヴクラフト作品がつまらない」という訳ではないということは念押しさせてください。私にとって、「ホラーとしての」ラヴクラフト作品はあまり怖くない、というだけの話であって、「宇宙的怪異」を描いているラヴクラフト作品は十分面白いですし、楽しめます。「時間からの影」とか「宇宙からの色」とか超面白い。
ただ、飽くまで「ホラーとして」の話であれば、「冷気」とか「家のなかの絵」なんかはかなり怖いと思います。ムニョス先生こわい。あと「神殿」も結構こわいかも。
ちなみに、以下は初心者の方におススメ出来るラヴクラフト作品の記事なんで、よかったら読んでみてください。面白いですよ。ラヴクラフト。たまにSAN値は削られますけど。
ところで、全然話が飛ぶんですが、私レイ・ブラッドベリの作品って大好きで。特に大好物なのが「何かが道をやってくる」と「10月はたそがれの国」の二作なんですけど。
ブラッドベリって、そもそも別にホラー作家ではなくって、時にはSFを、時にはファンタジーを書くっていう感じの、言ってみれば「幻想作家」なんですけど。
ただ、ブラッドベリの「踏み外させ方」って物凄いと思うんですよ。正直そこらのホラー小説よりよっぽど怖い。「あれ?あれ?日常の筈なのに…」からの浮遊感がすごーーーい上手いんです。
そういう意味で、上でも挙げた「10月はたそがれの国」と「何かが道をやってくる」は超お勧めです。よかったら一度読んでみてください。
「10月はたそがれの国」については以前書きました。その時も「踏み外させ方」の話をしました。
「何かが道をやってくる」についてはまたその内ちゃんと書こうと思います。
ということで、今日書きたいことはそれくらい。
@本をたくさん読んでてA自分と感性があっててB論理的でわかりやすい文章を書けて、Cただのあらすじ紹介や他人の言葉の受け売りじゃない、自分自身の意見を書ける、人の書評記事って本当にレアなんですよね。
面白い本を読んだ時はブログでも書きたくなりますので、不定期ですが今後も色々書いてみようと思います。
私がラブクラフトで初めて怖いと思ったのは「異次元の色彩」ですね。何ともいえない嫌〜〜な感じが良かったです。
ブラッドベリは私も大好きです。子どもたちを、無邪気さゆえの残酷さも含めて描いているのが秀逸ですね。