この記事を読んで、ふとなんの関係も、本当に一切関係ないことを思い出した。
FF3にはエーテルがなかった。
何の話かというに、まず背景から説明しなくてはいけない。
「エーテル」というのはFF2から登場したアイテムで、キャラクター一人のMPを回復させる効果を持っていた。最初の街から既に店売りされていて、その価格は2500ギルだ。かなりの大金だったと言っていい。
付け加えると、FFシリーズでの定番アイテムとなるエリクサーは、やはりFF2では「エリクシャー」というアイテムであって、しかも後のシリーズからは考えられないことに、店で売っていた。これも同じく、最初の街の店で既に売っていた。価格は5万ギルだ。
これも、終盤になって金余りを始めるまでは「ちょっと考えられない大金」というレベルのものであって、それでも殆どの道具屋で売っている共通アイテムなので、プレイヤーはずっと、本当にプレイ中ずっと、「高嶺の花」を眺めながら買い物をすることになる。当時のスクウェアスタッフが、何を考えてこういう値段設定、商品設定をしたのかというのは、考えてみると興味深い。これも本題に関係はないのだけど。
FF2における戦闘システムは3以降とは全然違っていて、戦闘時に事前に装備しておいたアイテムしか使えない。たった二つだ。だから、装備するアイテムは相当厳選しないといけないし、そもそもアイテムを持てる数自体にもかなりの制限があったので、エーテルを持つ枠にも当然厳しいものがあった。
多くのプレイヤーにとって、エーテルは「なんかミンウが最初から1個持ってるだけのアイテム」だった筈であって、ミンウが持っているエーテルを売り払って序盤の装備に充てるのも定番の行動だった。2500ギルもするアイテムを、助けに入ってあげたパーティで速攻勝手に売り払われるミンウの気持ちはいかばかりだったろう。
ごめん、ミンウ。この場を借りて彼に深く謝罪したい。
で、FF3にはエーテルがなかった。エリクサーも店売りではなくなっていた。
実際のところ理由は単純で、「FF2の時はMPの概念があったけど、FF3ではシステムが変わって、MPから魔法使用回数制になったから」だ。魔法にはランクがあって、「このランクの魔法は何回まで使える」みたいなものが使用回数だ。Wizardryなんかと同じシステムで、FF1でも同じだった。
MP制であれば、エーテルは「MPが〇〇回復する」というシンプルなアイテムだったが、魔法使用回数制だと、回復するにしてもどう回復させるか色々複雑になる。全体の何割回復する、といったシステムにすることも出来るけれど、効果として分かりやすいアイテムだとはとても言えない。いくつ回復するのか、計算してみないと分からないというアイテムは、とてもユーザーフレンドリーとは言えないだろう。
要するに、FF2では「その気になれば店で買える」アイテムだったMP回復アイテムが、FF3では丸ごと削除された。厄介なことに、FF3ではキャンプやコテージ(フィールド上で宿泊してHP、MPを回復させるアイテム)すらなくなっていた。当然アスピルもなかった。FF3で、宿屋や回復ポイント以外でMPを回復する手段は、本当にただ一つ、これも宝箱からしか手に入らなくなったエリクサーだけなのだ。
魔法の使用回数というものは命綱だった。どのランクの魔法があとどれくらい使えるか、というのは、そのまま、あとどれくらい行動出来るか、というインジケーターになると言っていい。勿論これは、「ダンジョンを攻略して、セーブ出来るポイントまで戻ることが出来るかどうか」という話も含んでいる。我々は、ゲームを遊べる制限時間内で、なんとかダンジョンを攻略して、セーブできる箇所まで戻らなくてはいけなかったのだ。それは絶対的な制限と、その制限との戦いだった。
つまりFF3におけるエリクサーは、ただの「HPとMPを全快させるアイテム」ではなかった。
「切れかけた命綱をつないでくれるかも知れないアイテム」だった。「攻略の可能性を0%から15%に戻してくれるかも知れないアイテム」だった。唯一MPを回復出来るアイテムという立ち位置が、そうしたのだ。
「戦闘でエリクサーを使えない」というのは、少なくともFF3では何も不思議なことではない。俺たちは、一度の戦闘だけでエリクサーを消費する訳にはいかなかったのだ。FF3のシステムがそうした。
多分なのだが、かつてFF3を遊んだプレイヤーたちには、この時の記憶がある意味刷り込みのように残っているのではないか。
じりじり減り続けるMP使用回数をにらみながらエウレカを進んだ記憶。「今ここにエーテルがあれば」と、血を吐くように考えた記憶。「ミンウさんごめんなさいもうチェンジ稼ぎしません」という謝罪の記憶。
それは、俺たちの中でエリクサーというアイテムを特別なものにしている記憶だ。
今は変わった。それ以降の多くのFFタイトルにおいて、エリクサーは「そこそこ貴重だが数ある回復アイテムの中の一つ」というだけの立ち位置だ。そこでは、単純に戦術的な理由で「エリクサーを使うか使わないか」ということを検討することが許される。
ただし、一つだけ覚えておいて欲しい。
FF3には、エーテルが、なかったんだ。
あの時の記憶が、今でも俺に、「エリクサーをとっておけ」と囁き続けているのかも知れない。そんな風に思ったんだ。
お前に死なれたらこの戦闘は困る、とエリクサーで全快させたキャラクターが戦闘後のイベントで死亡してパーティから抜けたりする。
コイツは絶対強いはずだと事前にエリクサーで全快させてからボスに挑むと、なんか侠気のあるやつで「さあ かいふくしてやろう!もてるちからの すべてをもって かかってこい!」とかサービスされたりする。
このように自分の選択がFFのシナリオと噛み合わずに何度も裏目に出てしまうと、もう怖くてエリクサーが使えなくなる。
シナリオ全体の流れ・確定で拾えるエリクサーの総数を把握した上でないと、エリクサーを安心して使えなくなる。
このただひとつのエリクサーがここで活きるのか!という場面に出会えることをいつまでも夢みているのだ。
実際はそんなカツカツのバランスでシナリオを組むはずがないし、エリクサーは健太郎くんのようなプレイヤーこそが最大限に活かすことのできるバッファなのだと思う。
元記事に関しては、「FF3はスーパーファミコンじゃないよね」と「このエリクサー野郎!はどこかで使ってみたい罵倒台詞だね」と思った。
DSのVCでも配信されたので最近プレイしましたが、エーテルの件もそうですが、敵の先制多すぎ、逃げられないなど当時のトラウマがたくさん甦りました。しかしよく当時の自分はクリアできたなあと思いました。
結局今回もクリアできましたが、今はたまねぎ剣士を極めようと頑張ってます。先日生まれて初めてクリスタルタワーでドラゴンに遭遇しました。しかも一発でオニオンアーマーをゲット。いやーさすがのファミコンゲームバランス。
たぶん関係ないです
っ「くろのローブ」