ご存知の方には今更かもしれませんが、ちょっとくにおくんの話をします。既出議論だったらすみません。
いわゆる「くにおくんシリーズ」には大きく分けて二つの系列があります。つまり、
・熱血硬派 〜 ドッジボール、サッカーなど各種スポーツ系くにおくんの系列
・ダウンタウンシリーズの系列
の二つです。
そして、この二つは、少なくともSFC時代までは、微妙な例外もありながら、二つの要素において明確に分けることができます。
つまり、
・サブキャラクターが名前呼びか苗字呼びか
・シリーズのヒロインが誰か(くにお、ないしりきの彼女は誰か)
くにおくんシリーズに詳しい方であれば周知のことだとは思いますが、この記事では、上記にまつわるくにおくんシリーズの世界観の特徴について、資料を当たりながら簡単にまとめたいと思います。尚、説明書関連の資料については、フィンさんの手による「げーむのせつめいしょ」様に多くを依存しております。お礼申し上げます。
〇くにおくんシリーズの大まかなすみわけ
便宜的に、上記のくにおくんの二大系列について、「熱血硬派・ドッジボール系列」と「ダウンタウン系列」と呼称することにします。FC・SFC時代までの、代表的なタイトルは以下のような感じです。
◆熱血硬派・ドッジボール系列の代表的タイトル
・熱血硬派くにおくん
・熱血高校ドッジボール部
・熱血高校ドッジボール部サッカー編
・いけいけ熱血ホッケー部
・くにおの熱血闘球伝説
・くにおくんの熱血サッカーリーグ
・初代熱血硬派くにおくん
・新・熱血硬派 くにおたちの挽歌
◆ダウンタウン系列の代表的タイトル
・ダウンタウン熱血物語
・ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会
・ダウンタウンスペシャル くにおくんの時代劇だよ全員集合!
・びっくり熱血新記録! はるかなる金メダル
・(熱血格闘伝説)←やや微妙
・ダウンタウン熱血べーすぼーる物語
こんな感じです。くにおくんシリーズを網羅しているわけではありませんので、その点はご了承ください。
この中で「熱血格闘伝説」だけやや微妙としているのは、このゲーム、これ以外のシリーズと共通するサブキャラが、ずっと後に再登場するとらいち・とらじくらいで、他はほぼいないんですよね…。ダウンタウンの開発者である吉田さんや関本さん、熱血硬派の開発者である岸本さんのお名前も、スペシャルサンクスに出てくるだけです。一応キャラクターは基本苗字呼びなので、ここでは便宜上ダウンタウン系列に入れてあります。
〇それぞれの系列の特徴
で、この二つの系列って、実は世界観というか、キャラクターの扱いがかなり明確に違うんですね。
大きな要素は、冒頭に書いた通り二つです。
・サブキャラクターが苗字呼びか名前呼びか
・ヒロインが誰か
まず、前者の「サブキャラクターが苗字呼びか名前呼びか」についてですが。基本的には「熱血硬派・ドッジボール系列」は名前呼びで、「ダウンタウン系列」は苗字呼びです。
そもそも最初の時点では、くにおくんに登場するキャラクターは基本的に名前呼びでした。熱血硬派くにおくんには、「りき」「しんじ」「みすず」「さぶ」などの敵ボスキャラクターが登場します。
その後、その流れを引き継いだと思われる、ファミコン版の「熱血高校ドッジボール部」では「ひろし」「こうじ」「みつひろ」などの名前呼びキャラクターが追加され、これらキャラクターは熱血高校ドッジボール部サッカー編でもそのまま引き継がれています。
一方、「熱血高校ドッジボール部」の二年後に発売された「ダウンタウン熱血物語」ではここが少し変わっています。くにおとりき、あとまみ以外のサブキャラクターが、基本全て苗字予呼びなのです。かみじょうも、やまもとも、にしむらも、きのしたも、ごうだもごだいも、全て苗字ですよね。
この流れは、直系の続編である「熱血行進曲」でも引き継がれており、すがた、いちじょう、おとなしなど、追加キャラクターはほぼ全て苗字呼びです。例外は「ダブルドラゴン兄弟」ことりゅういち・りゅうじのみ。
後々のシリーズで微妙に登場枠が混じることもあるのですが、この二系列のゲームでは、基本的にこれら「名前呼びのキャラクター」と「苗字呼びのキャラクター」の行き来がないんです。これが、まず第一の大きな違いです。
もう一つ、非常に大きな問題として「ヒロイン問題」というものがあります。
熱血硬派・ドッジボール系列のヒロインは誰かというと、基本的にサッカー部のマネージャー「みさこ」です。彼女は、シリーズタイトルによってだいぶビジュアルが変わるんですが、立ち位置はほぼ一定です。
みさこが登場したのが「熱血高校ドッジボール部サッカー編」。このタイトルでは、EDにて、プレイヤーの操作キャラクターにキスをする演出があります。
で、「くにおくんの熱血サッカーリーグ」の説明書(参照:http://www.geocities.jp/frnyanko/setsumei/famicom/nekketsusoccerleague/nekketsusoccerleague.html)には以下のような記載があります。
こんにちは。熱血高校サッカー部・マネージャーの「みさこ」です。おひさしぶり〜。(略)今回「みさこ」はみんなといっしょに試合に行けないけれど、たまには外国から「電話ぐらいかけてほしいな……」うふっ? がんば〜! 熱血FC!!
この辺見ても、みさこが完全にドッジボール系列のヒロインとして位置づけられていることが分かると思います。
で、SFCの「くにおたちの挽歌」に至っては、みさこが「くにおの彼女」と明言されています。
くにおと同じ熱血高校の生徒。くにおの彼女。
ビジュアルがファミコン時代と全然違うんですが、まあそこは気にするべきところではないでしょう。
ここまでのシリーズ作品では、「くにおの彼女」と明言されるようなキャラクターは一切登場しておりませんでした。ついでに言うと、くにおたちの挽歌以降の作品でもそのように明言されることはありません。「くにおたちの挽歌」の特殊性は、一点、ここに集約されると言っていいでしょう。
しかもこの作品では、りきの彼女が「きょうこ」になっています。
あれ?真美はどこいった?と思ったあなた。その疑問は正しいです。
実は、「りきの彼女」とされる島田真美も、「ダウンタウン系列」にしか登場しないのです。彼女は、ドッジボール系列の作品には一切登場しません。最近発売された「りき伝説」にも登場しませんでした。
ちなみに勿論、ダウンタウン系列でのヒロインは「はせべ」こと長谷部和美であって、彼女も基本ドッジボール系列には登場しません。時代劇では着物まで着てヒロインやってたんですけどね。
この、「ヒロインの違い」というのは非常に大きな問題として、ダウンタウン系列・ドッジボール系列を分かつ大きな壁になっている、と言っていいでしょう。
これらの要素から、
・くにおくんシリーズでは、二つの系列がほぼパラレルワールドのようなことになっている
・一部例外はあるものの、基本的には、二つの系列ではくにおとりき以外のキャラクターの行き来がない(ただしSFCまでの話)
という二点についてはご理解頂けるものと思います。
〇何故こうなったのか
明確な理由まではちょっと分かりませんが、この辺の記事を読むと多少事情を類推することができます。
緒方氏:ダウンタウンシリーズの企画やっていた吉田という者がいて、ドッジボールの時にいたのかな?彼がそのタイミングで入ったか記憶が定かではないのですが。ゲーム性として彼が作りこんだところから、あのスタイルになったと言っても過言ではないですね。「くにおくん」を何作か作っていくうちに新潟の会社※でも開発が始まって、それぞれのラインにばらつきが出るっていうのでベースのキャラクターの設定を作ろうって話になりました。もう一人の関本がシナリオ関係ですから、設定とかを統一させる形で出したんです。ドッチボールもアーケードもファミコンも、まだその時はとくに誰が誰って決めてないんですよ。後付けで名前は決めてますが、ほぼほぼ社員の名前出してるんで(笑)※当時テクノスジャパンでは新潟にも開発の会社を設けていた。くにおくん25周年記念で発売された『熱血硬派くにおくん すぺしゃる』の開発元「株式会社エイビット新潟」はテクノスジャパンの新潟事業部のメンバーを主として立ち上げたゲーム開発会社。
ここでいう吉田さんというのは、ダウンタウンシリーズのディレクターである吉田晄浩氏のことですね。ダウンタウンシリーズは、この吉田氏と、もけけ関本氏が主要スタッフになっています。
「熱血硬派くにおくん」の主要スタッフだったのが岸本良久氏(企画)と緒方孝治氏(デザイナー)(参照:http://dengekionline.com/elem/000/000/419/419451/)。
このインタビューだけでは時間軸がよく分からないのですが、少なくとも当初は統一設定のようなものを作らずにそれぞれの解釈で開発をしていた、と。後から統一の設定を作ったものの、おそらく細かいところまでは統一し切れなかった、あるいは統一しなくていいんじゃないかと判断された、というのが主要なところなのではないかなーと推察します。この辺については後ほどもうちょっと細かいところを調べてみます。いい資料をご存知の方は教えてください。
〇「くにおのおでん」の特殊性
ところで、SFCには「くにおのおでん」という落ち物パズルゲームがあります。
発売が1994年5月27日。テクノスジャパンが事務所を閉鎖し、事実上の業務停止状態になったのが翌1995年の12月なので、ほぼテクノスジャパンの最晩年に発売されたタイトルです。(参照:Wikipedia)
このくにおのおでん、ゲーム自体はお世辞にもそれ程オリジナリティが高いとは言えないタイトルなのですが、くにおくんシリーズ好きにとっては一つ決して無視できない要素を持っておりまして。つまり、「明確にみさことはせべが共演する、恐らく唯一のタイトル」なんですよ。
(引用:Wikipedia)
対戦に使用可能なキャラクターは、「くにお」、「りき」、「ごだい」、「にしむら」、「はせべ」、「ももぞの」、そして「????」と名前が伏せられているキャラクターの7人。その他「みさこ」、「ごうだ」、「まみ」、「とうどう」、熱血格闘伝説に登場した「ダブルタイガー兄弟」などがモブキャラクターとして登場している(「みさこ」は物語の発端と言う事もあり、パッケージイラスト、OPにも出ている)。上記のように登場人物は『ダウンタウンシリーズ』から出演しているが、唯一「みさこ」だけは『熱血高校ドッジボール部 サッカー編』(後年には『熱血硬派シリーズ』にも登場)からの出演であり、ある意味ではシリーズの枠を越えた共演作となっている。
時代を越えて、世界観を越えて、ダウンタウンとドッジボールが交わった場所。
この一点だけを見ても、「くにおのおでん」というゲームは決して軽視して良いタイトルではありません。くにおくんシリーズにおける一つの歴史作と言っていいと思います。いやまあ、ゲーム自体はちょっとあのその、ではあるんですが。
〇まとめ
話が長くなりましたので、簡単にまとめます。
・くにおくんシリーズはどれも面白いよね
・けどダウンタウン系列とドッジボール系列では結構キャラクターの立ち位置が違うよ
・あとヒロインが長谷部かみさこか問題は結構大きな問題だよ
・個人的には長谷部の方が好きです
というところが主なところであり、他に言いたいことは特にありません。皆さんダウンタウン熱血物語SP遊んでください。
今日書きたいことはそれくらいです。
最も好きなシリーズです。思い出もいっぱい…。
最初のラインナップで「くにおのおでんは?」と思っていたのが、
最後に世界観共有の話に繋がり正直感嘆しました。
しんざきさんの考察すごいです…。
重箱の隅をつつくようで申し訳ありませんが、
熱血!すとりーとバスケットもお忘れなく…。
噂では今は値段が高騰しているそうですが、
自分は結構好きでした(*^^*)
舎弟枠でひろしも参戦してましたけど、考えてみればダウンタウン系だとあそこはすがたのポジションですよね。
熱血物語EXで真っ先に仲間入りしたり、べーすぼーる物語でくにおくんの留守を守って主人公やったりしてますし。
FC版のくにおくんが一本で遊べる熱血コンプリートも良いですよ。
貴重な資料がギャラリーに色々収録されてるのにズームできなくて文字が読めなかったりしますけど。
手抜きっぽいロックマンクラシックスでもギャラリーはズームできたんだし、アークさんにはもう少しだけ頑張ってほしかった……。