2018年03月09日

「アオアシ」の武蔵野戦があまりにも素晴らしいエピソード過ぎるので紹介させてください

どうもしんざきです。なんか最近ずーっとこれ言ってる感じですが、アオアシが超面白いんですよ。

「パパが読んでる本は面白い本」という認識を持っている長男も最近ハマりました。長男サッカーやめちゃったんで、「またサッカーやりたくなったりする?」って聞いてみたら「プロは別腹だから」というなんだかよく分からない回答が戻ってきました。良く分かりませんが特に問題はないそうです。

で、先日こんな記事を書いたんです。

アオアシの基本的な展開が、「才能はあるが洗練されていない主人公の成長と超克の物語」であることは間違いありません。「粗削りな才能を徐々に磨いていき、周囲に認められていく主人公」という筋書きは、スポーツものにおいて一つの王道です。何度か書いている「さすが」と「まさか」の面白さでいうと、バランス的に「まさか」に寄った筋書きですよね。
アオアシが、主人公の青井葦人を中心とした物語であることは間違いのない事実でして、アシトの能力、努力、成長、弱さ、強さ、全部ひっくるめてアオアシという作品の魅力の中核であることは議論を俟たないと思います。試合中の思わぬタイミングでのアシトの活躍気持ちいいですよね。

で、9巻から11巻まで、ほぼ丸々三冊をかけて描かれるのが、アシトが所属するエスペリオンユースと、武蔵野蹴球団ユースとの一戦です。9巻序盤の武蔵野偵察から、11巻の武蔵野戦決着までが、「武蔵野戦編」と言っていいでしょう。





この「対武蔵野戦」というのが、アオアシという作品の中でも出色の「群像劇」でして、現在のところ間違いなく作中ベストゲームであろうと思われたので、ちょっと紹介してみたくなりました。


以下は、ネタバレになりますので折りたたみます。画像は引用の要件を満たす形で引用します。





武蔵野戦というのはそもそもどんなエピソードかといいますと、「登場人物の殆どが、「改めて前を向き直す」ストーリー」だと思っています。

8巻までのアオアシって、勿論個々のキャラクターがクローズアップされるところもあるんですが、飽くまで話の中核を担うのは主人公であるアシトであって、技術不足で悩むのも、試行錯誤するのも、努力するのも、それを克服するのも、基本的にはアシトが主体なんですよ。周囲はアシトに合わせて成長もするし、気付きもするし、アシトに教えたり協力したりすることも勿論あるけれど、けれど焦点はアシト。

ところが、武蔵野戦の前哨となる9巻では、作中では珍しく「悩む」主体がアシトから外れて、アシトと共にセレクションを戦った橘になります。

とある事情でしばらく試合に出ていなかったアシトは、悩みもするし鬱屈もするし葛藤もするけれど、8巻の多摩体育大学付属高校戦では一つの解答にたどり着き、鬱屈を振り切って前を向き始めます。しかし、その間FWだった橘は絶不調。エスペリオンユースが4連敗している間一得点も出来ず、自信喪失状態になってしまいます。

また、勿論アシト自身、多摩体育大学付属高校戦で何かをつかみはしたものの、まだ色んなこだわりが取れていない状態。試合後の福田監督には、「オッチャンは俺が点を取らない方がいいんやろ」なんて言葉を返してしまいます。

また、9巻では、ユース昇格生を毛嫌いしている富樫の過去エピソードも登場。黒田、竹島といった同じDFのラインとわだかまりが残った状態で武蔵野戦を迎えることになります。

ちなみに、黒田と浅利はこの直前、折角昇格出来たAチームから何もできずに出戻ってきてしまい、自信を喪失している状態です。浅利なんか愚痴がはけるんでまだいいけど黒田はキツそう。あと部屋では凄い大友に邪険にされてそう。

つまり、作中メインキャラクターの多数が、何かしら鬱屈した状態、後ろ向きな要素を抱えたまま試合に望むことになる訳です。特に何もそういうの抱えてないのが大友くらいなんじゃないでしょうか。


で、武蔵野戦の中で、各々が各々の鬱屈に対して答えを見つけて、改めて前を向き直すことになるんですが、アシトの気づきと絡めてのそれぞれの描写が素晴らしい。

自分の弱さをさらけ出して、自分の中にあったアシトへの憧れも自覚して、アシトとの協力の中でついにトンネルを抜けて得点を取ることができた橘。

立花.png
(アオアシ9巻より)

Bチームの指揮者である伊達コーチの言葉を受けて、最終的には自分の中にあったわだかまりを捨てて、竹島、黒田とやっと言葉を交わして素晴らしい連携を見せる富樫。

富樫.png
(アオアシ10巻より)

同じようにこだわりを捨てて、富樫の実力を認める竹島や黒田。

竹島.png
(アオアシ10巻より)

ようやく有機的なコンビネーションを見せ始めたDF陣が武蔵野を圧倒する光景は、「DFの活躍」というテーマの中でも指折りの熱い描写だったと思います。いやもう素晴らしい。

この辺り、皆それぞれ、自分たちが何を抱えていて、何にこだわっていて、何故後ろ向きになっていたのかが丁寧に描写されているからこそ、「そこからもう一度前を向く」という展開に凄いカタルシスがあると思うんですよね。

ちなみに、上で触れた浅利何かも、「前を向き直す」というのとはちょっと違いますが、6巻で見せたアシトとの連携を思い出させるような、非常に熱い活躍をしています。

勿論主人公であるアシト自身も、ここで一つの「前を向く」姿勢を見せています。

アシト.png
(アオアシ10巻より)

この「わかる」ってこの巻でも1,2を争う名言だと個人的に思っているんですが。この瞬間まで、どこかで福田監督の言うことを理解出来ない、あるいは理解したくないと思っていたアシトが、7巻以降初めて見せた「理解出来る」という姿勢。ここまで散々悩んで、試行錯誤を続けてきたからこそ、この時このタイミングで「わかる」という言葉が言えたし、福田監督がそれに驚いているんだと思うんですよ。

ちなみに、「前を向く」という意味では、もう一人、非常に重要な人物が今までの「こだわり」から脱却しています。

伊達ヘッドコーチです。

望.png
(アオアシ10巻より)

ここまでは、「自分では具体的なことは言わずに、選手に任せ、選手が気付くことを待つ」というコーチングの姿勢に徹していた伊達コーチ。

しかし、福田監督の言った「俺たちも未熟だ」「言いたいことがあれば言っていい」という言葉に、自分自身もどこか「こだわり」に囚われていたことに気付いた伊達コーチは、自分の言葉で富樫たちDF陣の連携を取り戻させます。


更に、エスペリオン以外からも一人。今回、作品的には完全にヒールに徹していた、武蔵野ユースの金田です。

鐘だ.png
(アオアシ10巻より)

富樫やアシトに圧倒され、一度は完全に折られた心を、武藤の一言をきっかけに立て直して見せます。「ボールをくれ!!」もかなりの名言。

これ、2巻のセレクションからの対比なんですよね。1年前のあの時は、金田は折れた心を立て直すことが出来なかった。アシト、大友、橘の姿を後ろから眺めていることしか出来なかった。

けど今度は違う。こだわりから離れるのではなく、逆に「エスペリオンに負けない」という自分のこだわりを強力につかみ直し、精神的に復活して見せるのです。

指導者的立ち位置である伊達コーチや、「物語的には敵キャラ」である金田にすら、「前を向き直す」という展開を用意する。こういう展開、多分ここまでの、「基本的にはアシト中心」の物語からは明らかに段階が変わってると思うんですよね。


言ってみれば、「アシトが主役」の物語から、明確な「群像劇」に物語が進化した


そういう側面が、アオアシの9巻から11巻にはあるんじゃないかなあと。だからこそ、「武蔵野戦」という一エピソードが作中でも指折りのベストゲームであって、サッカー漫画が好きなのにアオアシ未読の方は是非読むべきなんじゃないかと私が考える所以なわけなのです。

あと、劇中一番メンタルが強いのって実はアシト以上に大友なんじゃないかと思う。彼の安定感は物凄いと思います。試合でももっと目立って欲しい。

あと全然関係ないんですが、

杏里.png
(アオアシ7巻より)

アシトにアドバイスを求められた杏里が大変可愛いことをご報告いたします。いや、花も超絶美少女なんですが杏里もかわいいですよね(かわいい)。この後のリフティングのシーンも必見だ思います。

この漫画、ヒロインも単なるヒロインではなく、それぞれ「ひたむきに努力し続けているヒロイン」であって、別に主人公との関係性だけの話ではなく、「自分の道を進む」ことに対して前向きであり続けているんですよね。そういう点でも、アオアシの味わいというのは素晴らしいと思います。


ということで。目下本誌では、1レベル高い環境に置かれたアシトがどうなるんだって感じになっていますが、引き続き続きを大期待すると共に、13巻の発売を正座して待ちたいと思います。


今日書きたいことはそれくらいです。





posted by しんざき at 07:30 | Comment(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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