皆さん、「キャッスルエクセレント」ってゲーム、ご存じですか?
元々は88の「ザ・キャッスル」っていう固定画面アクションゲームだったんですが、ファミコンに移植されるにあたってマップから何から大幅にアレンジされて、「伝説の一作」と言われるくらいの超絶完成度を手にした名作アクションパズルゲーム。
私、ファミコンにおける「アクションパズルゲームの到達点」って4作あると思ってるんです。
一つが、「換石の術」というギミックを最大限に使って、「削る」のではなく「作る」ブロック型パズルというアイディアを実現した、テクモの「ソロモンの鍵」。
一つが、L字ブロックという「向き」を考慮しないといけないギミックを主軸に、思考の必要性を三段階くらい深くしてのけた、ナムコの「バベルの塔」。
一つが、考えに考え抜かれた面配置と、「敵を使ってマップを作る」というアイディア一つでアクションとパズルを完全に両立して見せた、アイレムの「迷宮島」。
そして、アスキーの「キャッスルエクセレント」。
キャッスルエクセレントは、「おしゃれな見た目とポップなBGM、そして軽快なアクション」というガワに、「超絶難易度のパズル要素」というものをどかっと載せた、言ってみれば「全部載せ」のパズルアクションゲームでした。
100個にも及ぶ部屋から成る、巨大な城。
それらを結ぶ六色の扉と、それを開くための無数のカギ。
やたら軽快なジャンプとナイフによる攻撃アクション。
それらアクションを駆使しないとクリア出来ない数々の難関マップと、一見おしゃれなようで案外エグい動きをする敵キャラたち。
それら全てを、「ムチャな作り込み」と「物凄い完成度」という共通要素ですべて紐づけて、一つの作品にまとめ上げたゲームがキャッスルエクセレントです。恐らく、ファミコン全時代を見渡しても有数の攻略難度を誇るゲームではないでしょうか。
私は、この「キャッスルエクセレント」をきっかけに、「ゲームを攻略するとはどういうことなのか」を学びました。
以下、ちょっと昔話をします。長文になりますがご容赦ください。
当時私は低学年の小学生でした。小1だったか小2だったか、正確なところはよく覚えていません。30年ちょっと前の話です。
「キャッスル」というゲームが面白いらしい、それを移植したキャッスルエクセレントも面白いらしい、という話は、確か兄から聞いたのだったと思います。その情報を元に、私はキャッスルエクセレントにたどりつきました。親に買ってもらったのだったか、当時流行っていた「ゲーム交換店」で交換してもらったのだか、これまた明確なところは覚えていません。
ただ、キャッスルエクセレントは、低学年の小学生にはちょっと難し過ぎました。
いや、面白かったんです。無茶苦茶面白かったし、わくわくしたんです。
ぴょーんと長いジャンプをさせるのは面白かったし、敵をナイフでやっつけるのは楽しかった。マップをあちこち探索するのもわくわくした。このわくわく感は、間違いなく、当時ファミコンで感じることが出来た中でも最上質のものでした。
けれど、何せキャッスルエクセレントは、ファミコン全体でも有数の高難度ゲームです。マップとマップの繋がり、鍵を使う時の計画性、マップのギミックを冷静に観察する観察力と、それをクリアする為の学習力。そういったものなしにキャッスルエクセレントを攻略することは出来ません。
悪いことに、キャッスルエクセレントにはセーブ機能があり、そのセーブ機能を前提にバランス調整されているような節もあるのですが、当時セーブする為にはそれ専用の「データレコーダー」というインフラが別に必要だったのです。そんな高度なインフラが家に存在するわけもなく、ゲームオーバーになる度に最初から試行錯誤のやり直し、というのが当時の定番パターンでした。
当時の私は、せいぜい最初の十数マップをいったりきたりするのが精一杯で、クリア出来ないままに挫折してしまったのです。
「ナッツ&ミルク」や「デビルワールド」でキャッキャ遊んでいた頃の話です。当時は大変大変悔しかったのですが、今から考えるとまあ仕方ないのかな、と思いもします。
それから何年か経ちました。私は、小学校中学年を経て、高学年になっていました。
当時、小学生の遊びの王様は文句なくファミコンでした。ファミコン好きの友人は何人もいましたし、ぼちぼちスーパーファミコンの話題を持ち出す友人もいる頃だったと思います。
当時、キャッスルエクセレントは既に「ちょっと昔の」ゲームでしたが、私はあるとき、友人たちにキャッスルエクセレントの話をしてみました。ちょっと前なんだけど、こんなゲームあってさー。すげえ難しかったんだけど知ってる?
すると、その中の一人がこう言いました。うちにあるよ、そのゲーム。俺クリア出来ないけど、兄ちゃんがクリアしてたよ。
本当か!!と私は勢いこみました。なにせ、当時私にとってはゲームの先達であった私の兄ですら、キャッスルエクセレントには挫折していたのです。
ちょっと聞いてみると、その友人のお兄さんはもう大学生で、ファミコンの他にパソコンのゲームも色々やっている、という話でした。色々ありまして、私はキャッスルエクセレントのカセットをもって、その友人の家に遊びにいき、そのお兄さんにアドバイスをしてもらうことになりました。冷静に考えるとその友人の家にもキャッスルエクセレントはあるわけで、私がソフトをもっていく必要などまるでなかったのですが、まあ子どものやることです。やっぱり「自分のソフトでクリアしたい」という欲求があったのでしょう。
私は、そのお兄さんに「キャッスルエクセレント攻略ノート」というものを見せてもらいました。
衝撃を受けました。
その人は、キャッスルエクセレントのマップ全てを図に書き出しており、そのマップ同士の繋がり、ギミックの特徴まで、詳細にノートに書き出していたのです。当時の自分の感覚では、「びっしり」という密度に見えました。
ここまでやるのか。
ここまでやらないといけないのか。
ここまでやれるものなのか。
今から思えば、それくらいの「攻略ノート」を作る人、というのは、当時そこまで珍しくはなかったのかも知れません。webで調べれば攻略情報がわかる時代ではありません。どこの本屋でも攻略本が売っている時代でもありません。プレイヤーそれぞれが、それぞれの攻略情報を蓄積して、ゲームを攻略していた時代です。
ただ、当時ちゃらんぽらんに、ノリと勢いでゲームを攻略していた私にとっては、それは「ゲームを攻略するってのはこういうことだぜ」というビジョンを見せつけられた思いだったのです。
試行錯誤と、蓄積と、蓄積を元にした改善の積み重ね。それが「ゲームを攻略すること」でした。私は、その時それを初めて知りました。
そんなお兄さんの随所随所のアドバイスの元、私はなんとかかんとか、2時間くらいで「キャッスルエクセレント」のエンディングにたどりつきました。今から思えば、そのお兄さんもよく付き合ってくれたなーと思います。勿論感動したのですが、その時、クリアした感動以上に、「これが攻略か!!」という衝撃が大きかったように思うのです。
この時の衝撃は、更に数年を経て、「ダライアス外伝」というゲームの攻略に結び付くことになるのですが、まあそれは余談。
ところで。
つい最近、PS VITAの「LA-MULANA EX」というゲームを買いました。きっかけは、ねとらぼさんで、てっけんさんのこの記事を読んだことでした。
面白そうだなーと思いましたし、今現在遊び始めて「これおもしれえ!!」と思ったんですが、それについてはまた別に書きます。
それ以上に私は、「このわくわく感、なんか記憶にある…」「あ!!これ、キャッスルエクセレントの時のヤツだ!!」と感じたのです。手探りでマップを埋め、マップのギミックを解き明かしていく感触。少しずつノウハウと情報を蓄積していかないと歯が立たない難易度。それは確かに、私がかつて、一度は挫折した「キャッスル・エクセレント」で感じたものと同じものでした。
あの時と同じ、「蓄積して、攻略する」という楽しさを、もう一度味わえるのか。
私はそんな風に感じて、ここからの「ラ・ムラーナ」というゲームに付き合う時間を、これ以上ないくらい楽しみにしている、と。
そんな話だったのです。
今日書きたいことはそれくらいです。