2007年06月30日

ある取材者さんにかかと落としをかましたくなった件

珍しく腹に据えかねた、というか、ちょっと勘弁してくれと思ったので粛然と独自エントリ。端的に言うと、愚痴。


うちの会社は業界内ではパイオニアだそうで、先日なにやら応接室に取材が来ていた。聞いてみると、結構よく聞く会社名。いわゆる大手さんというヤツだ。で、システム開発の人の話も聞きたいという。

普段ならバックダッシュ連打で逃げるところなのだが、現在私が逃げると代わりに標的になってくれる人がいない。話だけ、というので仕方なく取材を受けてみた。中年のおっちゃんだった。諸々の事情から、細部はボカす。

なんつーか、参った。一応名刺を交換して、椅子に座って、開口一番何を言われたかというと、


「コンピューターの技術的な話には私全然興味ないんで、そういうの抜きでお願いします」


は?


流石に唖然とした。技術的なこと抜きって、開発屋の私に一体何を話せというのか。私の方が遥か年下であることを勘案して、ついでにもう百歩くらい譲って言葉の無礼さを見逃したとしても、システム開発の話が聞きたいんじゃなかったのか?大丈夫かこのおっさんは。っていうか帰れ。

「いや、コンピューターの技術者さんの話って難しいんですよね。技術用語とか横文字ばっかで、訳わかんないことが多くって」

はっはっは、じゃねえよ。

流石に一瞬口を開く気にならず、( ゚д゚)ポカーンとした顔をしていたら、

「何かあるでしょ、ほら、なかなか前例がない分野じゃないですか。システム作る時の工夫とか、厳しかった部分とか、革新的なアイディアとか」

ちょっと分かってきた。

つまりこのおっさんは、我々に「プロジェクトX」を期待しているのだ。ナンピトも達成したことがない分野にただ一人敢然と挑むパイオニア。彼らがシステム構築に行き詰った時、最後に用意した秘策とは、みたいなあーゆーそれ。


アホか。


我々は未踏プロジェクトの開発をやっている訳でもなんでもない。当たり前のWebシステムに業務ロジックを載せて、当たり前の納期に合わせてスケジュールを組み、当たり前にドキュメントを用意して、当たり前にシステムを安定稼動させるのが我々の仕事だ。そして、その「当たり前」こそが難しい。強いていうなら、秘策なんてものを必要とする様な状況をそもそも招かないことが、我々の唯一無二の課題なのである。

百歩譲って技術上の秘策があったとして、何でそんなものを懇切丁寧に、しかも技術用語を使わないで説明せにゃならんのだ。っつーか、「技術的な秘策を技術用語抜きで説明しろ」って言葉の致命的な矛盾点に気付かんのか。寝言はお休み中に言え。っていうか帰れ。

「えーっと。そもそもわれわれの仕事は、そういう性質のものじゃなくてですね」

開発プロセスの標準化の話なんかしても1ナノグラムの意味もなかろうなー、とは思った。仕方ないんで開発手順や納期の話をした。席を立たなかったのは、単に広報担当の人の顔を潰すのが気の毒だったからである。

多分このおっちゃんは、業務が新しい分野だからといって技術も新しいものだとは限らない、ということが理解出来ていなかったのだと思う。というか、業務部分と基幹部分の区別が出来ている様子自体なかったが、私は一体どんな発言をすれば良かったのだろう。

このおっちゃんにWebシステム開発の工程を説明するだけでもバカバカしいが、しかもそれを技術的な話抜きでやれという。やっぱバックダッシュで逃げれば良かった。っていうか今から実行しちゃダメですか?

「ビジネスモデルは凄く革新的だと思うんですが。システム的には、そういうのはないんですか?」

知るかボケ。私はITコンサルではなくアプリ・DB屋だ。革新的なオハナシを聞きたいんだったらその辺のコンサルに金を払え。っていうか帰れ。

「えーと。それじゃあ、あれだ。セキュリティの話。セキュリティの話、いいですか?」

またなんとゆーか、いかにもとってつけた様な感じの振り方だった。いいですか、って言われても困る。一言「セキュリティ」といえば、そこから魔法の様にシステム談義が飛び出してくるとでも思ってるのか。帰れ。

5秒程考えてから、社内の認証サーバの話とIP制御の話をした。話題は選んだつもりである。DBの暗号化とかSQLインジェクション対策とか、テーブルへのアクセス監査の話をするよりはまだなんぼかマシだろう。

それでも話終わると、おっちゃんはブツブツと文句を言った。

「システム関係の理系って、何でそう何でも横文字にするんですかねー。日本語の良さというものをもうちょっと・・・△△大学では・・・」云々。何故か知らんが妙に出身大学の話を持ち出す。どうでもいいが、40絡みの中年男が今更出身大学を誇るな。

どうもおっさんの耳には、「一意に特定する」とか「経路制御」とか「外部認証」という言葉は横文字に聞こえたらしい。「IPアドレス」と「サーバー」に関しては、どう日本語に訳すべきなのか、寡聞にして私は知らない。

もうなんつーか、よっぽど「取材するなら最低限勉強くらいしとけ、っつーか何様だこのハゲ」と言おうかと思ったが、紳士な私は「私は○○大学の文学部出身なのでガチガチの文系ですけど、技術用語だけならすっっごく簡単でしたよ」とだけ言っておいた。普段は持ち出すのも持ち出されるのも嫌いな話題なのだが、おっちゃんは何故か執拗に自分の出身大学の話をしていたし、どんな場合でも緊急避難というものがある。以後幸いなことに会話が途絶えたので、後は広報の人に任せてさっさと引き上げてきた。


以上、愚痴でした。多分ここまでアレな取材は希少な例、なんですよね?
少なくとも昔の私の職場には、ここまでアレな人はいなかったぞ。作家はよく逃げてたけど。どうなんだ一体。
posted by しんざき at 02:06 | Comment(7) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
新聞屋さんとか雑誌屋さんとか,そんなもんですよ.
前の職場でも今の職場でも何度か取材対応しましたが
記者っていうのは創作活動なんだと理解しました.
新聞屋さんも奉仕活動じゃないので,読者が読みたがる
「売れる」記事を書くことが大切なのかね(笑)

つ ttp://61.193.204.197/html/20505A06004.htm
つ ttp://park.itc.u-tokyo.ac.jp/STITP/
Posted by すずき at 2007年06月30日 06:25
「我々は(以下略)
ら、秘策なんてものを必要とする様な状況をそもそも招かないことが、我々の唯一無二の課題なのである。」
とストレートに言ってみたら、あきらめなくても理解はした?w

相手方、「あなたの手柄をしらしめてあげるから、恩に着てよね」くらいな感じだったのかしら?
他人からの称賛やら手柄やら何やらあまり興味がわかないしんざき氏にとっては、
時間の浪費以外の何者でもないときでしたなあ。おつかれさま〜!
Posted by nao at 2007年06月30日 09:59
>すずきさん
創作活動っていうか、とにかく何か絵を描いて、それに沿った話しか受け付けようとしないんですね。勘弁してくれと思いました。

>naoさん
そこまで親切に説明してやる義理はねーい。

>相手方、「あなたの手柄をしらしめてあげるから、恩に着てよね」くらいな感じだったのかしら?

ああ、そういうのはあったと思います。大手さんってのは多かれ少なかれそうだ、って話も聞きますが。
Posted by しんざき at 2007年06月30日 11:18
これはひどい……いや面白い。おしごとお疲れさまです。
今度DBの暗号化の話とかSQLインジェクション対策の話とか聞かせて下さい(笑)。取材者さんよりかは興味がありますので。
Posted by niizato at 2007年07月01日 00:51
48時間ぶっ通しで起きていたとか
一週間家に帰らなかったとか
久しぶりに帰宅したら子供に「おじちゃん、だれ?」って言われたとか

そういう話じゃだめだったんでしょうか。
Posted by Zhao at 2007年07月01日 08:57
取材受けたことはないですが、なんというか、「器用意したからこれに合う料理盛ってくれ」みたいな迫り方する人ってたまにいますね。いやだいやだ。そうやってできただろう記事もたまに見かけるなあ。
適当な法螺でやり過ごす以外に思いつかないですね。
Posted by や at 2007年07月02日 21:54
すいません一言だけ。

>やさん
>なんというか、「器用意したからこれに合う料理盛ってくれ」みたいな迫り方する人ってたまにいますね。

まさにそんな感じでした。
Posted by しんざき at 2007年07月05日 16:29
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