正直別役太一さんのことを舐めてました。ここまで「出来る」キャラクターだとは思っていませんでした。マジでごめんなさい。
再開早々クオリティ高すぎて最の高であるワールドトリガーの話なんですが、完全に本誌で読んでいる人向きのネタバレアリ話でして、コミックを待っている方には以下記事を読むことを非推奨とさせて頂きます。早く出て欲しいですよね、19巻。マジ楽しみです。
ということで、以下は折り畳みます。
さて、B級ランク戦 ラウンド7の話です。
皆さんご存知の通り、今回のランク戦では鈴鳴第一の作戦がかなりの勢いで炸裂しておりまして、今週号で遂にその全貌が露わになりました。
今回明らかになった、鈴鳴第一の作戦は下記のようなものです。
・マップに市街地Dを選択して、ショッピングモールの中を主戦場とする
・事前に鋼の剣を黒塗りしておく
・来馬と鋼が接敵する前に、太一がショッピングモールの配電盤を確保しておく
・戦闘になった際、タイミングを測って太一がショッピングモール内の電源を落とし、照明を消して相手をかく乱する
・更に、相手が視界支援で対応したタイミングを見計らって照明をつけ、かく乱を続ける
いやー素晴らしいですね。本当に素晴らしい。この作戦を思いついたのが別役太一さんであるという点が更に輪をかけて素晴らしい。
この「素晴らしい」というのは二つの意味がありまして、メタ的な意味での素晴らしさと、物語世界内での素晴らしさの二点があります。
物語世界内でのすばらしさというのは、要は「単純にこの作戦が優れている」ということです。実に理に適っている。
・ショッピングモールを主戦場にすることで、敵チームにいる強力なスナイパーの脅威を低減することが出来る
・接敵した状態で視覚的な隙を作るという作戦が、アタッカーである鋼をポイントゲッターとしている鈴鳴第一のスタイルに合致している
・相手のオペレーターをかく乱することで隙を増幅することが出来る
・電源のオンオフを繰り返すことで何度でもチャンスを作ることが出来る
いや実際、これって単純に優れた作戦だと思うんですよ。こちらは事前のタイミング合わせでオペレーターに即座に視覚支援を入れてもらえる一方、相手に対しては「対応した頃に再度照明をつける」ことで隙を増幅することが可能。相手の一瞬の隙をつくのは近接戦の土俵ですが、鋼を擁する鈴鳴第一にとっては最高のチャンスメイクになります。
しかも、今回のランク戦は4部隊参加でオペレーターが手一杯になるところ、相手のオペレーターの負荷を増やすというのも実に素晴らしい着眼点です。実際、栞さんが珍しくミスをするとか、オペレーターの負荷に関する描写が先週ありましたよね。
とまあ、単純に作戦として考えても「うまいなー」と思わせる内容なんですが、メタ視点として物語上の上手さを考えてみると、もうそこに投げられる言葉は「素晴らしい」の一言です。
・今まであまりクローズアップされていなかった「オペレーターの処理能力」をクローズアップ出来る作戦であること
・作戦の中核自体は純然たる嫌がらせであること
・更に作戦の立案、内容、実行、展開まで含めて、別役太一というキャラクターに完全に合致していること
・最初に鈴鳴と当たったのが影浦隊であったこと
・鋼の剣が黒塗りされていたことに関する完璧な納得感
・修が自然と東隊から逃れることが出来たこと
・ごく自然にヒュースと空閑の見せ場につなげられること
まず一つ目として、今回「オペレーターにめっちゃ負荷がかかる」というのがごく自然に描写されているんですよね。ただでさえ四部隊入り混じって忙しいのに、ステージ条件、人数、メンバーの動き方からなにから、「こんなん全部見てられるわけないやん」というごちゃごちゃとした状況がごく自然に発生している。オペレーター娘の中でもかなり高い能力を持っている栞さんまでミスをする、という描写が、「オペレーターめっちゃ大変」ということを端的に描写しています。
今までの展開では主眼にはなりにくかった「オペレーターの処理能力とサポート」というものが、自然と中核要素となってくる舞台立て。更にその主役になるのが、鋼と遊真の水中戦でまさに「視覚支援!」をやった来馬隊の花さんであることも美しい。「オペレーターへの嫌がらせ」という作戦を思いついた太一の意外な鋭さが強調される訳です。
更に、この作戦自体が実に実に太一というキャラクターに合致している。合致しまくっている。本人的には良かれと思いつつ他人の足を引っ張りまくる太一が、他の部隊の足を全力で引っ張りにかかる訳ですよ。電気止める時とかもう超楽しそう。
作者をして「本物の悪」と言わしめた太一さんの嫌がらせ能力が光りまくります。しかも、コミカルスタッフ的な立ち位置もきっちりこなせる太一さん、配電盤を抑える時の描写とか、エスクードに捉えられてぷぎゅうってなってる描写とか、太一以外の誰にもできませんよ、こんな役回り。
更に、ここで「鈴鳴と最初に当たるのが影浦隊である」ということもマジで上手い。来馬も言ってましたが、影浦って多分、今回の参戦者の中で、この「照明切り替え作戦」に初見で対抗出来る唯一のアタッカーです。東隊のアタッカー二人だったら一発目で斬られていてもおかしくありません。ヒュースや遊真でも流石に無事では済まないでしょう。
「その影浦でさえ大ダメージを負った」という状況を作りつつ、勝負を終わらせる程の点は取れない。更に、影浦と鋼って以前から仲良しライバル的な描写もされてますんで、そこまで回収しつつ、解説の犬飼さんにゾエさんと影浦のフォローまでさせてます。咄嗟に部屋内の照明を壊す対応を見せたゾエさん、きちんと狙撃の腕を見せているユズルの存在感も完璧なところ。「誰一人評価を落とさないできちんと見せ場と有利不利を作る」って、物凄い高度な展開描写だと思いますよ、これ。
また、前回顔みせして、読者に様々な憶測をさせた「鋼の黒い剣」についても、新しいトリガーという程の機能は作らず、それでいて「黒塗りする理由」としてはこれ以上ないくらいシンプル、かつ完璧。正直滅茶苦茶な説得力と納得感だと思います。
更には玉狛についても、東隊に迫られて大ピンチ、「普通に考えればこれ修逃げられないよな…」と読者に思わせる状況だった主人公の三雲を、ダメージつきとはいえ完璧な形で逃がしています。そりゃ、照明が落ちちゃったら追い切れなくても仕方ない。東隊アタッカー二人組の評価も落ちません。
で、最終的には、このカオスな状況の中できっちりと太一を捕捉してみせた、空閑とヒュース二人組の戦術眼と今後の活躍気配を見せておいてお話を引くわけです。なんでしょうこれ。この展開の作り方、ちょっと少年漫画として完璧過ぎませんか?なんかズルしてませんか?
これら完璧な展開を作った、そのまさにトリガーであり中核が別役太一という漢であったわけでして、本ランク戦のMVPは既に太一さんに決定している、と言ってしまっても言い過ぎではないでしょう。多分次回では最初のコマで太一さん死んでるでしょうけど、それでも全く関係なく、私は太一さんにMVPを渡したい。激しく渡したい。
大筋、長い休載を挟んだ作者さんって、キャラクターを動かしにくくなることが常なんですが、全く違和感なく活き活きとキャラクターを動かしつつ、この納得感のある戦術と戦術のぶつかり合い。いやもう葦原先生本当に物凄いなと感動しつつ、19巻の発売が待ち遠しくて待ち遠しくて仕方ない訳です。
取り急ぎ、まだワールドトリガーを読んでいない方、今からでも18冊集めることを強く推奨してやまない訳です。間に合います。まだぜんっぜん間に合います。皆さん一緒に水中戦を一万回観たり、生駒さんのカレー談義を傾聴したりしましょう。
ワートリマジ面白いですよね、というそれだけの話でした。
あと全っ然関係ないんですが、市街地Dって単純にスナイパーガン不利な地形であるような気がするんですが、荒船隊が市街地D設定されちゃったらどうするんでしょうね…?荒船は孤月抜くとして、あとの二人はモール外に陣取ってガン待ちするしかなかったりしませんかね?
今日書きたいことはそれくらいです。
面白く読ませていただきました! 良いものをありがとうございます✨
とっても納得できる内容と、僕には思いつかなかった視点だったので楽しめました。
太字のいいところで、「今」ちゃんが「梢」ちゃんになってるのが気になってしまって、ありがとうございますを言うついでに、つい口を挟んでしまいました。
開始前に東隊がオペレーターに負荷をかけると言っており、実際バッグワームを着て、その際解説でもオペレーターへの嫌がらせですねと言わせておいてからのスイッチョフでしたねー。
スイッチョフ
これは新たなネットスラング誕生の予感