そういえばつい先日、富士宏先生の「ワルキューレの降誕」「ワルキューレの栄光」がkindle化されたんですよ。みなさんもう買いました?
今更いちいち言うまでもなく、富士宏先生はナムコの超名作「ワルキューレの冒険」「ワルキューレの伝説」でキャラデザを担当された方であって、あの素晴らしすぎるワルキューレのデザインを生み出したご本人であるわけで、その富士宏先生自身の絵でワルキューレが活躍しまくるのはとてつもなく素晴らしいことである訳です。
「ワルキューレの栄光」は、FC版ワルキューレの冒険をベースに、富士宏先生の解釈で再構築された「時の鍵伝説」です。こちらはこちらで別途紹介したいのですが、今日は皆さんに、「ワルキューレの降誕」のアイリーアさんが可愛いという話を中心に、ついうっかりポチってしまう人が3人くらい出ることを目標にした記事をお届けしたいと思います。よろしくお願いします。
まず第一に、「ワルキューレの降誕」は、ファミコン版「ワルキューレの冒険」の、いわば前日譚に当たる物語です。
「冒険」において、ワルキューレは神の子として、悪の化身ゾウナを倒す為に旅立つわけなのですが、この「降誕」におけるワルキューレはまだ「見習い女神」とでもいうべき立場であって、何か特定の仕事をしているわけではありません。「若く元気な女神」「周囲はこの女神のいたずらを持て余していた」と語られるのみであって、快活でおてんばな彼女の姿が描写されます。
そんな時、天上界にある事件が起こります。槍の矛先のような形をした、謎の幻像が天上界の様々な浮島に突きつけるような形で出現したのです。
大女神は、その現象を調査するという任務を、いわば新米女神であったワルキューレに任じます。ワルキューレの初仕事というわけです。
まずは、このワルキューレの描写それ自体が、富士宏先生節全開で非常に素晴らしいことが、この「ワルキューレの降誕」の根幹であることは論を俟たないでしょう。
富士宏先生が描き出すワルキューレは、「女神」という言葉ひとつで括れるような存在ではなく、快活で活発、やや猪突猛進気味でところどころ天然、しかし正義感と使命感にあふれた少女です。
彼女はちょくちょく失敗をすることもありますし、早とちりをすることもあれば大ボケをかますこともありますが、常に前向きでどんな苦境にも決して背中を見せません。
まだ女神として未熟であったこともあり、この物語におけるワルキューレは決して「完成された」キャラクターではありません。むしろ成長過程にある女神様です。
そんなワルキューレが、様々な試行錯誤や失敗を繰り返しながら、少しずつ謎の現象の根幹に迫っていくところが、まず一つこの「ワルキューレの降誕」の中核です。
ちなみに上の場面は、ワルキューレがちょうど大女神様から任務を授けられるところ。なんか猫口になっている大女神さまが可愛い。ちなみに、もう一人の黒髪の女神さまは即天宮の女神ヴィオレット。この人もとてもいい味出しています。
ワルキューレって元々、ファミコン版「冒険」では特定のセリフが用意されていなかったこともあり、プレイヤーが独自にそのキャラクターを想像したり妄想したりしていたんですよね。ファミコン版のパッケージでは凛とした姿を見せるのみだったワルキューレが、実は天然気味なお転婆猪突猛進女神さまだったというこの意外性は、富士宏先生がワルキューレの設定を公開された当初から、ワルキューレというキャラクターの大きな魅力の源泉で有り続けていたと思います。というか大女神様もですが、マーベルランドの神族の皆さんは割とみんな人間くさくて面白い。
ところで。
この「ワルキューレの降誕」は、単にワルキューレの成長と活躍を楽しむだけの漫画ではありません。地上界には地上界で、独自に謎の現象を調査しようという動きがあり、ワルキューレの物語は地上人たちの物語とも交錯することになります。
そこで登場するのが、後に「伝説」でプレイヤーキャラクターとして登場するクリノ、の二世代前にあたる「サンドラ」のマルマノ。そして、何の因果かマルマノとコンビを組んで謎を追うことになる、アファ大陸ドルツァ大学の新米教授、アイリーア・バルクさんです。
このアイリーアさんがめっちゃかわいい。
画像右下が正統派眼鏡っこ教授、アイリーアさんです。なにこの照れ気味の笑顔可愛い。露出の欠片もない服装も素晴らしい。このアイリーアさん、富士宏先生一流の描写で、特に狙っている様子もないのに挙動がいちいちかわいらしく、初めてみる天上人であるワルキューレにミーハー感を丸出しにしたり、調査に夢中になって完全に他のことが見えなくなったりと、暴走気味の行動も非常にいい味出しています。「ワルキューレの降誕」自体をアイリーアさんの行動を観察する漫画と考えても良いと私は思います。
アイリーアさんは「天文学」と「古代学」を研究しており、その知識とやや空回り気味の努力をもって、マルマノと二人で謎の現象の核心に迫っていくことになります。
ちなみに、隣にいるサンドラが、村の都合で調査に派遣された、サンドランドの農夫マルマノです。マーベルランドではサンドラは特に珍しい存在でもないようで、大きな街でもごく自然に受け入れられている描写がほのぼのとしていて読んでいて気持ちいいです。
マルマノとアイリーアは、本当に成行上一緒に行動することになるだけなんですが、クールナに追っかけまわされたり崖から落っこちたりワープゾーンでぶっ飛ばされたり、コンビで色々と大変な目に遭います。友情という程ではなく、かといってただの協力関係という程薄くもない、この二人の微妙な距離感についても本作の見どころの一つだと言っていいでしょう。
このアイリーアとワルキューレ、お互い「新米」「目的にひたむき」「努力が空回りすることもある」「ちょくちょく失敗する」などなど、様々な共通点があるんですね。言ってみればアイリーアはワルキューレに続く二人目の主人公でして、その奔走と成長は、「降誕」のお話のもう一つのコア要素になります。
「ワルキューレの降誕」は、善かれ悪しかれ決してお話自体のスケールは大きくなく、「ひとつの事件」にまつわる話として展開し、収束します。
「迷楼館のチャナ」や「午後の国」でもそうですが、富士宏先生の描写ってとてもスマートで、見ようによってはあっさりしているので、物語のボリューム的にも決して重くはないんですね。人によっては物足りなさも感じるかも知れませんが、気軽に読める射程距離でもあるということですので、ご興味おありの方は是非。ゲーム版「ワルキューレの冒険」や「伝説」とご存知なくても特に支障ない作りですので、「ワルキューレやアイリーアが可愛い」というくらいの軽い動機でも一向に問題ないと思います。
取り急ぎ、今日書きたいことはそれくらいです。