2019年08月08日

レトロゲーム万里を往く その146 天外魔境真伝

まず、特に何も言わないでこの動画を見てみて欲しいんです。最初の30秒だけでいいです。


何が起きているかお分かりいただけたでしょうか?これ、綱手っていうキャラクターが、最初に「力王」っていう攻撃力強化技を使って、その後通常技を二発入れたら相手が死にました、っていう動画なんですけど。

この動画自体はTAS(Tool-Assisted Superplay)なんで、実機でやった訳ではないでしょうが、特にこの展開に神業が必要っていう訳でもなく、これと同じことは実機で誰でも普通にできます。というか、普通の対戦台の普通のプレイで、同じようなことは割と頻繁に起きます。

で、これ、「このキャラだけが特殊なチート最強キャラであって、他のキャラではもうちょっと優しい削り合いが展開されるのか?」というとそういう訳でもなくって、大体のキャラは似たような大ダメージを一発ないし数発でたたき出すことが出来ますし、そうでないキャラでもワンチャンでほぼ勝負を決める技を、一つや二つは持っています。体力ゲージは吹き飛ぶもの、っていうゲームです。

「なんつー大味なゲームだ」って思いましたか?

ところがですね、このゲームでの対戦、めっっっちゃ面白かったんですよ。以前書いた格闘ゲーム遍歴全編を通しても、五本の指には確実に入るくらい、私このゲーム大好きなんです。

このゲームの名前は、「天外魔境真伝」といいます。

天外魔境真伝。対戦型格闘ゲーム。1995年、ハドソンよりNEO-GEOにて発売。

皆さんご存知ですか?ハドソンから出ていた、PCエンジンの「天外魔境」シリーズ。「西洋からみた誤った日本観」をテーマにした和風RPGで、特に「天外魔境II」はPCエンジンゲー全てを通しても最強の名作だと私は思っているんですが、それはそうと「天外魔境真伝」はこの天外魔境のスピンオフシリーズで、天外のキャラクターが登場する格闘ゲームなんです。

そのシステムは、基本的には「サムスピ」を踏襲する武器格闘になっておりまして、

・小斬り・中斬り・強斬りと蹴りを組み合わせての戦い
・一部のボタンを組み合わせることで「特大攻撃」が出せる
・必殺技とは別に各キャラ数個の「術」を持っており、ゲージが貯まっていると使用することが出来る
・ちょくちょく「アイテム」が出現して様々な効果を発揮する

これくらいがゲームとしての特徴になると思います。

まずこのゲーム、冒頭で観て頂いた通り、「ゲージの吹っ飛び具合」が相当なものです。ワンチャンで6割体力ゲージが飛ぶのは割と普通です。中には「画面端でガードしただけで7割減る」とか「下Bからの通常コンボで4〜5割」なんてキャラもいます。ふつうです。

ただ、このゲームの凄いところは、「それでちゃんとバランスが取れていたし、ちゃんと面白かった」ってことなんですよ。一件大味なように見せて、実はちゃんと遊べるし、めいっぱい楽しめる。そういうゲームだったんです。

しんざきも、最初綱手のB+Cなんて見た時は、「なんだこのムチャなゲームは」って思ったんです。「超必でもないのに9割減っとるやん」と。

ただ、なんとなくこのゲームを始めてみると、段々このゲームの面白さ、「ちゃんと考えられている部分」が分かってきたんです。

・大ダメージを与える技を複数のキャラクターが持っており、どのキャラでもワンチャンスで勝利を狙うことが出来る
・お手軽に大ダメージを出せる訳ではなく、大ダメージを狙える技にはそれなりに下準備が必要だったり、リスクが発生する場合が多い
・空中ガードで大部分の地上技をガードすることが出来る為、案外すぐには対戦が終わらず、地上 - 空中の駆け引きが発生する
・アイテムのランダム性が絶妙で、追いつめられた状態からでもアイテムを端緒に逆転を狙える場合がある

これ、「大味に見せておいて、実は高度にバランスがとれているゲームだ」と思ったんですね。いや、そりゃ性能横並びではなくって、ある程度突き抜けた「強キャラ」ってのは勿論あるんですが、そのキャラを使わないと勝てないってわけではなく、下位キャラでも全然逆転勝利が狙えたりする。

格闘ゲームにおける立ち回りっていうのは、要は「リスク・リターンの交換の連続」です。どの程度のリスクをとって、どの程度のリターンを得るか、それを常に選択し続ける。多少のリスクをとって大きく攻めるか、小さなリスクで小さく攻めるか。天外魔境真伝っていうゲームは、まずこの「リスク・リターンの交換」のバランスが絶妙だったんですよ。

更に更に、

・技を当てた瞬間の絶妙な気持ち良さ
・各技のリスク・リターンの絶妙なバランス
・派手な術、派手な技を上手く当てた時の爽快感
・くるくる軽快に動くキャラクターと背景グラフィックの美しさ
・案外やりごたえのあるCPU戦(マント―A以降はギミック戦みたいな感じになる)
・ゲーセンの中でもさり気なく耳に残る名BGMの数々
・絹がかわいい

といった要素にすっかり魅せられて、しんざきは暫く真伝にドはまりしていた、という話なんです。特に絹のグラフィックは出色だと思うんで皆さんこの動画でも見てみてください。個人的には、このゲームの絹のグラフィックが、KOF95のアテナのグラフィックと並んでNEOGEO格ゲーの白眉だと思っています。


天外魔境真伝に出てくる各キャラクターの話をします。

【自来也】

隙が少なく判定が強い通常技、追撃可能な通常投げ、空中ガードに対抗できる空中投げ、ダッシュB+Cの強さ、手軽に使えて超強力な術「爆炎」の存在などから、基本的には本作ダイヤグラム不動の一位と見なされるキャラ。原作主人公の面目躍如といったところでしょうか。とはいえ、そんな自来也でも油断すれば絹にまくられるのがこのゲームの恐ろしいところでもあります。

【カブキ団十郎】

しんざきの愛用キャラ。見た目や性格の派手さに反して、実は本作でもトップクラスに地味な挙動を必要とされます。基本的には中間距離での中斬り刺しあいでダメージを重ねつつ、隙を見て強力な対空技「羅砕刃」を絡めたコンボを狙う。ただし羅砕刃は外すと文字通り死ぬので、勝つためには慎重の上にも慎重な立ち回りが要求されます。カブキさん原作ではあんな感じなのに。。。けど下B+Cがうまく入るとめっちゃ気持ちいいのと、コマンド投げであるカブキ烈空破には試合を決めるポテンシャルがあります。あと花嵐が派手。

【綱手】

冒頭動画の主人公で、強キャラ枠の一角。とにかく、いわゆるバイキルトの「力王」とスクルトの「金剛」二つの術が超強力。パワー型なのにスピードも速く中段攻撃も豊富。ただし通常技の判定・隙が全体的に弱いので普段の立ち回りにしんどさを抱えており、そこでバランスがとられていたりします。相手にすると怖いんだけど自分で使うと意外と強さを引き出せない、案外テクニカルなキャラ。あとドット絵は非常にかわいい。

【八雲】

とにかく術が強力。端でガードさせれば7割削る「不動」に目を奪われがちですが、実際に狙える場面は実はそうそうなく、どちらかというと出が早い「白虎」や空中ヒットを狙っていける「鳴神」を中心に戦っていくキャラです。あと、武器投げが使い放題なのと、地上技の出が早くコンボを繋ぎやすいのも強みですね。あと餓狼の不知火舞なみに露出度が高い。個人的には服を着ろ派です。

【大蛇丸】

密かな強キャラ。武器が槍でリーチがやたらと長く、一方実は素手状態での立ち回りが妙に強かったりするので、相手次第でスタンスを変えていけます。一発強打の術「凍竜」は当たったらほぼ勝ち確定。とはいえ普段は「氷竜」をメインに立ち回ることになるのではないかと。ところで綱手っていつから大蛇丸ベタ惚れキャラになったんでしたっけ?なんか原作当初はそんな設定なかったような…。

【卍丸】

2の主人公。とにかく下Bからお気軽につながる卍斬りコンボで4割減らせるのが最大の強み。ただ、使っていると案外相手を崩すのに苦労する印象があります。相手を投げただけで剣を手放すのは勘弁しろください。実はカブキの次くらいに地味なキャラなんじゃないか疑惑。

【極楽太郎】

典型的なパワーキャラ、ただし攻撃力は綱手に続いて次点だったりします。意外と即死コンボがないこのゲームで、数少ない「なんとか普段から狙っていける即死コンボ」を持っているキャラで、画面端で極楽ホームランを決められればそこから十割もっていけます。ただ、やはり通常技の出の遅さはネックであって、ダッシュ技からなんとかチャンスを見出していく、普段の立ち回りには我慢を強いられるキャラ。

【絹】

本人とシロがかわいい。ナコルル系伝統の「バディと協力して戦う」キャラ。とはいえ立ち回りは相当に厳しく、接近戦の刺しあいでは勝てる要素がありません。近寄られたらなんとか投げで距離をとって、あとは武器投げで牽制しつつシロや式神に戦ってもらうキャラ、と考えるべきでしょう。けどドット絵の完成度は物凄く高い。

ということで、長々書き連ねて参りました。

結局のところしんざきが言いたいことは、

・天外魔境真伝はめっちゃ面白いし大味に見せて実はすげえバランス熱いし後は絹がかわいいからみんな引き続きやっていこうな!!!!!
・アケアカNEOGEOに天外魔境真伝出してくださいお願いですこの通りです

という二点だけであって、他に言いたいことは特にありません。よろしくお願いします。

マジで家庭用に一刻も早く移植されないだろうか…この際SwitchでもPS VITAでもいいから!!(版権の問題で難しいのはよくわかるが)

今日書きたいことはそれくらいです。
posted by しんざき at 07:00 | Comment(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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