ところでキン肉マン超面白いですよね。
勿論昔のキン肉マンも少年漫画の金字塔であることに疑いはないのですが、2011年から24年ぶりに再開された、「王位争奪編」以降のシリーズの素晴らしさと言えば、現在連載されている少年漫画全てを見渡しても屈指といってしまっていいように思います。ザ・マンと悪魔将軍の決戦熱すぎましたよね?
「完璧超人始祖編」が終わった後こんな記事も書いたんですが、
この後も連載は絶好調で続いており、現在続いているオメガ・ケンタウリの六鎗客との戦いも超絶熱い展開なので、未読の方はお願いだから読んでみてください。損はさせません。
ところで、ある日私が自宅でキン肉マンを読んでいたところ、横から覗き込んでいた次女がふといいました。
「パパ、この「グロロロ」って何?」
勿論この「グロロロ」というのは「完璧:零式」ことザ・マン、またの名を超人閻魔の笑い声(まあ笑い声っぽくないところでも使っていますが)であるわけでして、私は当然のことながら
「笑い声だよ?」
と返したのですが、その時ふと気づいたのです。
もしかすると普通の人は、台詞の途中でいきなり「パゴパゴパゴ」とか「ギラギラギラ」とか書かれても、それが笑い声だと判別出来ないんじゃねえか?と。
そもそも、この「グロロロ」という文字列を、我々が当然のように「笑い声」として認識出来るのは何故でしょう?
勿論それは、かつてのパルテノンやプリズマンのように、「変わった笑い方をする超人」が一般的に登場し始め、超人の特徴づけのひとつとして「個性的な笑い方」が定着したことを、読者が前提条件として了解しているから、です。
慣れているからこそ、わかる。要するに、キン肉マンの「笑い声」という表現は、一種の「暗黙の文脈」なのです。
ただ、ふと一巻からキン肉マンを読み直してみると、「意外と最初の頃は変な笑い方ってねえな?」と思ったのです。
キン肉マンやテリーマン、ロビンマスクのようなアイドル超人が変化球的なキャラづけをしていないのはまあ不思議なことではないとして、たとえば初期のキン肉マンを見ていくと、悪役よりのゴーリキであれ、カニベースであれ、スフィンクスマンであれ、アマゾンマンであれ、特に特徴的な笑い方はしていないのです。みんな「ふっふっふ」とか「ヒヒヒ」とか「グへへへへ」とか、まあ多少悪役っぽいのも見られるとはいえ、一般的に見られるような笑い方ばっかりです。まあ、ザ・フィッシャーズは二世でなんか変わった笑い方してましたが。
キン肉マンファンの間でも著名な変な笑い方としては、やはり11巻のミスターカーメン戦、ブロッケンJrに向かって発した「マキマキ!」でしょう。ただ、実際の展開中では、カーメンは「マキマキ―」と笑っている訳ではなく、「ククク」とか「ケケケ」といった笑い方を普通にしています。劇中での「マキマキ!」は笑い声というよりは掛け声のような使い方でして、カーメンの「マキマキー」が笑い声っぽく描写されるようになるのは、遠く24年後、完璧無量大数軍編でのことです。
ちなみに、後に肉ファンの間ではアシュラマンの笑い声として著名になる「カカカカー」ですが、順番としてはブラックホールの方が早く、10巻のキン肉マンとの戦いの時点で既に使っています。ただ、これも「笑い声」としてそこまで違和感があるかというとそれ程でもなく、知らなくても「まあ笑い声かな…」と普通に理解出来そうなラインです。
サンシャインの「グォッフォフォフォフォ」がぼちぼち微妙で、後の「夢の超人タッグ編」で初期のヘルミッショネルズもこれと同じ笑い方をしています。その後「クォックォックォ」とかも笑ってますが。
実際に「違和感がある特徴的な笑い声」が頻出し始めるのは実のところ王位争奪編でして、
プリズマン「キョーキョキョキョ」
キング・ザ・100t「グオホホ」
パルテノン「ギョギョギョギョ」
モーターマン「キキキー」
辺りは、ぼちぼち「笑い方による明確な超人の特徴づけ」と言っていいでしょう。
っていうかパルテノンは本当に何でこんな笑い方なんだ?パルテノン、荘厳かつ重厚そうな見た目に反して、笑い方も変だし戦う理由も報酬金目当てだしバイクマンにガソリン入れてるし、見た目と行動が釣り合ってない超人トップ3には間違いなく入ると思うんですけど。
ちなみに、この後「変な笑い方をする超人」の数はキン肉マン二世で激増しまして、クリオネマン「キョカー」とかデッド・シグナル「グギガー」とかウォッシュ・アス「ヒャイヒャイ」とかプリクランの「リリルラー」とか、「通常の笑い声のラインを踏み越えた笑い声」の枚挙に暇がなくなっていきます。後のザ・マンの笑い方である「グロロ」自体も、デストラクションの笑い声として登場しています。この二世の「特徴的な笑い声」という表現が、ほぼそのまま38巻以降のキン肉マンに「移植」されているのです。
ここから考えると、
・キン肉マンにおける「特徴的な笑い方は、初代の悪魔超人編くらいまでは実はそれ程多くなく、王位争奪編あたりから顕著になり始め、二世で完全に「特徴づけ」のひとつとなった
ということが言えるのではないか、と考えるわけなのです。
「キャラクターの特徴づけをどうやって行うか」というのは勿論軽視出来る話ではなく、当時のゆで先生が様々に試行錯誤した結果なのかなーと思うわけなのですが、超人のバリエーションを広げるうちに、「笑い方」という要素に着目される点があったのかなと想像するとなかなか面白くありませんか?
ちなみに、キン肉マン二世の連載が始まったのは1997年な訳ですが、これとほぼ同時期に、同じく弩級少年漫画である「ワンピース」も始まっています。ワンピースも、登場キャラクターの特徴づけのひとつとして「笑い方」を採用することが多い漫画ですが、もしかすると相互に影響しあったようなところもあるのかも知れません。
まあ、なにはともあれ私が言いたいことは「キン肉マン面白いよね!!」「というか、今連載中のキン肉マンもめっちゃ面白いので皆読むべきだよ!!38巻以降が連載再開後のキン肉マンだよ!!!」というダイレクトマーケティングだけですのでよろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。