2019年09月23日

「麻衣の虫ぐらし」がゆるふわ日常百合漫画かと見せておいて本気百合漫画だった

すいません、これも周回遅れの話かも知れないんですが、周回遅れはいつものことなので気にせず書かせて頂きます。

「麻衣の虫ぐらし」の2巻が出ていたので読みました。で、軽く衝撃を受けました。



その衝撃は、一言でいうと、「ゆるふわ農業日常 + 虫についてのうんちくメインのソフト百合漫画」かと思っていたら、あるタイミングから「虫の知識をアクセントにした本気百合漫画」へと怒涛の方向転換を見せたことへの衝撃です。なんというか、フライングバルセロナアタックを警戒してガードを固めていたらローリングイズナドロップを喰らったかのような、そんな衝撃を受けました。

まあ勿論雨がっぱ少女群先生の描く女の子は大変かわいいのですが、話はそれだけではありません。

「麻衣の虫ぐらし」は、少なくとも当初の漫画ジャンルとしては、「農業日常漫画」と言って良いと思います。主人公の桜乃麻衣(さくらのまい)は、入社一年目でリストラされて、ただいま求職中の女の子。友人の奈々子(通称奈々ちゃん)が祖父の跡を継いで営んでいるトマト畑をちょくちょく手伝いに来ています。

ここでは、「農作業の手伝いをする麻衣が色んな虫に出会って、それについて職業柄虫に詳しい奈々子が解説する」という展開が話のメインになります。三話まではニコニコで無料で読めるので読んでみてください。


お読み頂ければ分かる通り、奈々は「ちょっとヤンデレ入ってる、麻衣大好きな農業少女」であって、その奈々の虫知識とそれに対する麻衣の反応、及び奈々の好意に若干振り回されがちになる麻衣、というのが物語前半の定型パターンになります。地元の名士の娘である来夏も登場して、農業とそれにまつわるゆるふわ日常。ここまでなら、割とよくある、百合な雰囲気だけど実際にくっつくわけではない、あと非常に頻繁に入浴シーンが描写される、ほんわかした日常虫知識漫画と言っても大きく問題ないのではないかと思います。

で、ここからはちょっと作品のネタバレが入るので、軽く折りたたみさせて頂ければと思うんですが。





七話くらいからがっつりお話に絡んでくるんですが、奈々子の祖父は余命1~2カ月で、自宅で死を迎える為に退院してきています。奈々子はその世話をしながら、「もうすぐ一人になってしまう」「一人で農場を支えないといけない」ということに強い不安感をもっています。麻衣に対する思いには、その「一人になってしまう不安感」というのもかなり強く反映されているんですね。

ちなみにこのお祖父ちゃん、作中で若い頃の姿も何回か描写されるんですが、どこの王子様だよって感じの超イケメンです。奥さんも超美人。1巻130ページの「ミルキィウェイを歩いてるみたい」のシーンとか、それだけで漫画のヒロインが務まりそう。

で、1巻の最後に、奈々子のトマト畑は、とある原因から「トマト黄化葉巻病」に見舞われます。前述のプレッシャーにさらされていた奈々子は、当初それについて現実を受け入れられず、観てみぬ振りをしてしまうのですが、そこに病床から抜け出してきたお祖父ちゃんの言葉に後押しされ、麻衣と一緒にトマトを全て処分することになります。

「失敗でもいいから、思うようにやってみろ」という一言が、奈々の聞くお祖父ちゃんの最後の言葉になるわけです。祖父と、大事に育ててきたトマトの、二つを同時に奈々子は失うことになります。

ということで、読者は「あれ、あれ?俺は日常系ゆるふわ百合農業漫画を読んでいた筈…」というところから、突如としてガチ農業の世界に叩き落されるわけです。この段差が第一の転換点。

1巻の時点で、麻衣は奈々子のお祖父ちゃんとお話しているのですが、「何かを失った時、他の何かがすぐその後を埋めてはいけない」「何かを失ったら、人にはゆっくり悲しむ時間が必要」というのが麻衣の持論です。私、これについてはすごーーく共感するんですよ。この一点だけでも雨がっぱ少女群さんすげえなと思ったんですが。

で、2巻の要所、その考えに基づいて麻衣が一旦奈々子と距離をとるんですね。その間、遺族の話や何やら、結構重い話題も継続。

ところが、その間孤立感を深めてしまった奈々子は、麻衣が様子を見に来る直前のタイミングで失踪。麻衣は奈々子をあちこち探し回ることになります。麻衣がついに奈々子を見つけた時の「見つけたぁ…」ってコマ、麻衣がめっちゃ可愛い。あと妙にエロい。

で、この後来夏に「奈々子と同居した方がいいか」と相談をした時に、来夏は「奈々子の思いを受け入れる気がないならやめておいた方がいい」と忠告をします。あれこれ思い悩む麻衣。

で最終的に、麻衣は「奈々子の思いを受け入れる」という決断をするわけです。

これ。ここ凄い。ここ超重要

「なんとなく百合っぽいけどつかず離れずの関係のまま日常を続ける」という漫画は数多い中、農業という背景をきっちり描いた上で、「その続きの関係」までアクセルを緩めずに描き切る雨がっぱ少女群先生。本気だ。あまりにも本気過ぎる。

これ以外にも、麻衣の親子関係、奈々子の家族との関係など、二巻は一巻とうって変わって「重い」話題が詰め込まれつつ、それでも最終的に全てに決着をつけ、物語は見事な収束を向かえます。奈々子の幸せっぷりが素晴らしい。本当に「色々あったけど、奈々ちゃん良かったね…」という気分に浸れること請け合いです。

関係ないけど、麻衣のバイト先に通い詰める奈々ちゃんのヤンデレぷりマジ心配。良かった…思いを向けたのがゆるふわ常識人の麻衣で本当に良かった…

勿論、全編にわたって「雨がっぱ少女群先生が描く女の子がめったやたらに可愛い」というのは作品の重要極まるエッセンスではあります。ただ、麻衣が可愛いだけではなくとにかく人格のバランスが取れていて、多少ダメなところもありつつも基本的には超常識人であって、やることなすことちゃんと考えた結果であるあたり、ヤンデレ暴走気味な奈々子と極めてハイクオリティに釣り合っているところは指摘しておかないといけないでしょう。

あと、誰にも知られないうちに麻衣に失恋していたシェフの先輩は幸せになってくれるといいと思います。

ちなみに、麻衣の虫ぐらしは、1巻・2巻以外にも外伝的なエピソードも出ていて、未収録作品に加えて来夏の追加エピソードなんてものも出ているので、1・2巻を読んで気に入られた方は是非。正直来夏の特別編は「えーそっちからくるの!!??」とびっくりしてしまいましたが、考えてみると雨がっぱ少女群先生、もともとホラーとか色々ファンタジー系のも描く人だったな。



今日書きたいことはそれくらいです。
posted by しんざき at 16:47 | Comment(0) | 書籍・漫画関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: