2007年07月09日

PS3版塊魂発売中止の話から、ハード間紛争の話を懐古してみる。


考察とかではなく、まあ、感傷。

発売中止になるPS3版「ビューティフル塊魂」

なんだか、ひどく懐かしいものを感じた。しっくりくる、というのかな。こうこなくっちゃ、って言うと語弊がありそうだけど。


最近の「ハード信者の宗教論」に関して、何故だか妙に空疎なものを感じていた。ソフトがなければゲーム機なんてただの箱、というのは当然の前提であるにしても、どうせユーザーから見たハードの格差なんて大したもんじゃないのに、一体何頑張ってんの、という感覚があったことは確かだ。


かつての「ファミコン→スーファミ」「PCエンジン」「メガドライブ」の三つ巴時代を思い出す。懐かしいといっても、それはどちらかというと中学時代のグループ間抗争ごっこを振り返る様な、余り好んで触れたいとは思わない、なまぐさくて生ぬるい懐かしさだ。

ゲーム雑誌の発売予定タイトル一覧は、修羅場だった。

「マルチ展開って何スか?」という時代だった当時の雰囲気。業務用のタイトルが移植されると聞くと、どのハードの所有者も一様に味わった息が詰まる様な思い。FCのスプラッターハウスとPCEのそれを比べた際の、なんともいえない絶望感と高揚。ドラクエ3の所有者が感じた視線と、「メガドライブって最近どんなゲームが出てるの?」と聞かれた時の、次に口を開いたヤツが死ぬ、と言わんばかりのロシアンルーレットな空気。X68000所有者の、ごく当然に醸造される選民意識。

ハード間の性能には絶対的な差があって、商売の上手い下手にも絶対的な差があって、発売されるタイトルにも絶対的な差があった。メガドラ所有者とSFC所有者は、それこそ異次元の住人同士だったのだ。

あの頃の話なら分かる。ゲーム好きにとって、異なるゲームハードはまさに「敵」だった。ハード間の有利不利、強み弱みが絶対的なものだった時代、ナムコの業務用アクションはPCエンジン、セガゲーはメガドライブでしか「遊べなかった」時代だ。当時の家庭用ゲーム業界の盛り上がりというのは、それこそハード間紛争抜きでは語れない。

冒頭のニュースを聞いて、なーんとなく、あの当時の頃のことを思い出した。あのタイトルがあっちで出るとかあっちでは出ないとか。「完全移植」などという言葉が死語になった今、サードパーティーの参加有無以外のレベルで、こんな話が出てくるのは割と新鮮だ。


ちょっと話は変わる。

懐古上等で敢えて言うなら、家庭用ハードの性能は低いままだった方が、もしかするとゲーム業界には良かったんじゃないか、とか思う。

家庭用ゲーム機の性能がアーケード業界に軽々と追いついた時、「移植タイトルの出来・不出来」というハード間の紛争要因も消失した。技術制限の元に試行錯誤で生まれた、突然変異的珍妙タイトル群も姿を消した。周の世に帰れなどと言うつもりはないが、例えばセガの様な「世間一般のセンスから微妙にズレた技術力とアイディアだけで勝負」的な集団は、ある程度混乱したレース場でしか生き残れなかったんじゃないだろうか。


現状、ハード間の性能差というものは、既にユーザーの手の届かない位置にしか存在していないと思う。性能的には移植出来ないタイトルなどというものは存在せず、それ以前に、ゲーセンのタイトルは既に起爆剤の地位から失墜している。

「満たされない状況でこそ発生するパワー」というものが、かつてはあったと思う。ゲーム業界における童貞力、みたいなもんか。ゲームの面白さに「制限要因」が必要不可欠であるのと同じ様に、ゲーム業界にも性能の低さという「制限要因」は重要なスパイスだったのではあるまいか。


ハード間紛争の話も一つだが、例えば源平とかアルゴスの戦士の様な、「制限された性能の中でアレコレ工夫してみました」的なゲームが最近見られなくなったのは、なんとなく寂しかったりもする訳である。

posted by しんざき at 17:24 | Comment(14) | TrackBack(2) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
>制限された性能の中でアレコレ工夫してみました」的なゲームが最近見られなくなった
ゲーム業界のメインのソフト群にそういう傾向があって、少し寂しい気がするのは理解できますが、
その逆として、ゲームの表現力が大幅に上がったという利点もありますから、悪いことだけではないかと思います。
表現力の向上がなければ見ることも叶わなかったようなゲームも山ほどあるわけですし。それがゲーム自体の面白さに直結しているものも。
FPSやoblivionなどや、またメタルギアシリーズなど。あとは戦場の絆など、アーケード系にその傾向が顕著ですね。

それにその手の「制約があるからこそ成り立つゲーム」の土壌はまだ消えたわけでもないでしょう。
DS・PSPなどの携帯機やまた携帯電話のゲーム、あるいは細々としたものであるとはいえ、フリーゲームや同人ゲームにおいて今後そういったゲームが育っていくのではないかと思います。

自分としては、現状は制約がある上でのゲーム、制約がない上でのゲーム、どちらも作れるような幅広い状況になっていると思いますよ。
売り上げの話になっちゃうと、ちょっと閉口しちゃいますけどね。
Posted by Dan at 2007年07月10日 00:54
>Danさん
>その逆として、ゲームの表現力が大幅に上がったという利点もありますから、

それは勿論前提なんですが、まあ、私のは極論です。
私は元々、「ゲーセン発の移植モデル」をすげー完成度だなーと評価していたので、それが失われたことに対する慨嘆ってものはあると思います。

>それにその手の「制約があるからこそ成り立つゲーム」の土壌はまだ消えたわけでもないでしょう。

どうなんでしょうね。携帯アプリについてはおっしゃる通りで、携帯機への移植における制限ってものは失念してましたが。
Posted by しんざき at 2007年07月10日 10:41
CG等の進歩によってやろうと思えば極限まで絵面的な制約を取っ払えるようになった映画業界でも、未だ単館上映みたいな低制作費アイデア勝負作品が出ているのになあ、コンシューマゲームでもそういうのあったらエエのになあ…。

と思いましたが、ゲームはその誕生から今に至るまで異様にインフラ進化と世代代わりのテンポが速く、制作側の状況が多様化するほど成熟する前に新ステージに行っちゃうのがネックなのでしょうかねえ。ネックってっちゃイカンか。

単館上映ゲーム。携帯アプリとかフラッシュゲームはそれに近いかな。アーケードなら…がんばれギンくんとか?
Posted by おやじノ介 at 2007年07月11日 00:47
あの頃、過激なほど機種間戦争が激しかったのは、メイン客層である子供が金もって無かったからじゃ無いかな。
今のメイン客層は「欲しいソフトが出たらハードごと買う」って選択肢が容易に出るけど、当時でそんな行動が取れた奴はほとんど居なかったと思うし。
当然ゲームマスコミもそういうのを承知してたから、選民思想にも近い思想教育を施したんじゃないかな。SEGA系は特にそれが顕著だったよーな。
Posted by 通りすがり at 2007年07月11日 04:15
>おやじノ介さん
がんばれギンくん、着想が面白かったですよねえ。あのノリは大好きでした。ゲーム自体はタントアールを思い出しましたけど。

>ゲームはその誕生から今に至るまで異様にインフラ進化と世代代わりのテンポが速く、制作側の状況が多様化するほど成熟する前に新ステージに行っちゃうのがネックなのでしょうかねえ。

これは同感です。
PCの成長程急いで成長する必要あったのかな、とか思います。それこそ言っても何の意味もないことですけど。

>通りすがりさん
>メイン客層である子供が金もって無かったからじゃ無いかな。

お金の問題は確かにありましたね。ただ、今とそんなに状況違うのかなあ、とかも思いますけど。
違うハードの持ち主だと、そもそも会話成立しなかったんですよね、昔は。最近はマルチ展開とかである程度吸収されてる気がしますが。

>SEGA系は特にそれが顕著だったよーな。

選民思想という言葉はある程度おっしゃる通りかも、とか思いますが・・・ゲームマスコミって当時セガの味方してましたっけ?
Posted by しんざき at 2007年07月11日 10:56
どちらかというと、日本人の国民性ですかね。

日本人は制限の多い中でリソースを絞り出して良い物を作る倹約的な手法はとても得意です。しかし、満ち足りた状況の中に置かれるとリソースの使い方が判らなくなって無駄にしてしまうのです。貧乏性というか一種のマゾですね。

経済で言えばバブル期に全世界の株式総額の3/4相当という莫大な金融資産を築き上げながら、それらを運用するビジョンが描けず漫然と浪費に耽るうちバブル崩壊に至り転落しました。対して欧米は投資ファンドを武器に現在では富裕層の過剰ともいえる金融資産を有効活用しています。

ゲーム業界でも同じことなのではないでしょうか?
DirectXを手に入れたWindowsPCとPSの登場が性能の向上を加速させたことは事実ですが、性能が上がったらその分だけ新しいゲーム性が生まれてきます。表題の塊魂だって、3Dグラフィックが無ければ生まれなかったタイトルですし。

日本が世界のゲーム市場の中心だった頃は「制限の中であれこれ工夫してみました」的なゲームが良し悪しの基準でしたが、今は潤沢なリソースをどれだけ有効活用して豪奢なゲーム性を楽しめるかがポイントです。

日本のメーカーは欧米に負けないで欲しいですね。
Posted by もる at 2007年07月13日 05:35
15年前のゲーム雑誌を見る機会があったのですが、ちょっと笑ってしまったのが「ゲームのグラフィックの進化は限界まで達している。これからはグラフィックの進化ではなくゲーム性の・・・」と語るよくありがちなゲーム評論家の意見。しかし、その当時ってSFCなんですよね。今、SFCのグラフィックでコンシューマゲーム機に出したらどんな評価をされるか。
 進化というのはつまりこういうことだと。今現在の到達点がわずか15年後には「古臭いもの」になる、まだまだ完成していない若い文化だと思います。もっとも、そろそろ次の進化へのステップ期にないっていると思いますが。インベーダからわずか30年程度の歴史ですからねえ。
Posted by tt at 2007年07月13日 10:07
>もるさん
>日本人は制限の多い中でリソースを絞り出して良い物を作る倹約的な手法はとても得意です。

そうですねー。日本人独自のものかって言われるとちょっと分かりませんが、かつての貧弱音源でのBGMのやりくりなんか、結構色んな意味で感動的でした。

>日本が世界のゲーム市場の中心だった頃は「制限の中であれこれ工夫してみました」的なゲームが良し悪しの基準でしたが、今は潤沢なリソースをどれだけ有効活用して豪奢なゲーム性を楽しめるかがポイントです。

潤沢なリソースの使い方、に関しては上手いヘタがあるんだろうと思います。また、山ほどリソースが使える様になって大変になった部分もあるんだろうなあ。とか。

>ttさん
>今現在の到達点がわずか15年後には「古臭いもの」になる、まだまだ完成していない若い文化だと思います

おっしゃる通りだと思うんですが、うちのブログのスタンスは基本的に15年前の方向を向いているので、自信満々で15年前のものを顕示するかも知れません。懐古厨です。
Posted by しんざき at 2007年07月13日 19:15
ゲームもゲーム機も変わりましたが、それ以上に遊ぶ側の環境が変わってしまいました。
ケータイ電話にインターネットを始め、いろんな娯楽が世の中に溢れかえっています。TVを見る暇さえありません。ましてやゲームなんてやってる暇なんてありません。
そして、娯楽にはお金がかかります。お金はたくさん持っていますが、ゲームに割けるお金はありません。
唯一、大作の続編だけはちょっと遊んでみたい。
あ、電車でも遊べるDSっていいかも。なにより話題のモノはやっておかないとね。

そんな人が今の日本人の大半なんじゃないでしょうか。

私は今でもゲームが娯楽の頂点ですが。(笑)
Posted by どんちゃん at 2007年07月16日 22:30
>どんちゃんさん
携帯がゲームに代わる娯楽層として台頭してきた、という話はよく聞きますよね。私自身は、娯楽ツールとしての携帯電話、というものにはちょっとピンとこないものがあるのですが。

ゲームが「子供の一番の娯楽」という地位から失墜した、というのは確かだろうと思います。これ、私はSCEが悪いんじゃねえかとか思ってるんですが。

>私は今でもゲームが娯楽の頂点ですが。(笑)
私は主に15年〜20年くらい前のゲームが娯楽の頂点だったりします。
Posted by しんざき at 2007年07月18日 00:26
ちょっと言い方がまずかったですね。
私も携帯電話が娯楽ツールとは思っていません。
限られた時間を携帯電話で会話したりメールしたりする時間に取られ、金銭的にも通話料や利用料に取られてしまったという意味です。
特に中高生で自分の電話代を負担してる子達はゲームなんか買う余裕無いですから。

SCEはターゲット年齢を一気に押し上げましたからねぇ。けど、業界全体がそれに追従したのもまた事実なので、SCEだけに罪があるかというとまた微妙かな、と。

私も懐古厨ですが今のゲームも大好きですよ。
何だかんだで今のゲームは(全部ではないですが)昔夢見た未来のゲームを辿ってると思うんですよね。
Posted by どんちゃん at 2007年07月18日 01:09
>どんちゃんさん
あ、いえ、一般的に見て携帯電話がゲームのライバルとして強力なツール、ってことは認識してますよ。娯楽ツールとしての側面もあると思います。
ただ、私が個人的にはそういう使い方をしてないので、自分としてはピンとこないなあ、と。

SCEに関しては、以前PS2で、「子ども向けのタイトルどれよ」という検証をしてみて嘆息したことがあったので。
Posted by しんざき at 2007年07月21日 00:47
アタリショックを覚悟でコンシューマに同人ゲームを参入させるのはどうでしょうか。
・・・無茶な話ですよね・・・w
Posted by M at 2007年10月23日 19:17
>Mさん
いや、ファミコンやSFCの時代だったら結構アリだったんじゃないでしょうか?実際、ディスクシステムの規格って公開されてた様な覚えがありますし。

最近だとどうなのかな、マイクロソフト辺りが凄くトチ狂って、X箱用の開発ツールを公開したりしたら面白いかも知れないですね。
Posted by しんざき at 2007年10月23日 19:52
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