「信じてもらうこと」と「信じさせること」は、似てる様でいて実は全然違うこと。
ゲームに勝つために重要なのは、「自分が何を語るか」ではなく、「自分の言葉をどの様に受け取ろうとする人が多数派なのか」だったりする、ということ。
発言が支持されるか支持されないかは、発言内容以上に、その発言を向けている層に依存するということ。そして、時としてたった一人に支持されるだけで十分ゲームをひっくり返せるということ。
不利な流れ、自分の発言が悪くとられる流れになったら、ちょっとやそっとの努力じゃ押し返せないこと。
と。まあ、ここ一年だか二年くらいBBSでの人狼から離れていて、久々にこんな触り方をしたらちょっと自分の中で再燃した。再開するかどうかは分からないけど、軽く思うところをまとめてみよう。
人狼BBSというのは、要は掲示板上の説得ゲームであり、ある村の中に紛れ込んだ「人狼」を、そのゲーム上から排除するという手段を使って狩り出して、対抗陣営を打倒しようというゲームである。詳しくはこちら。
このゲームは、情報のやり取りで説得したり説得されたりするという点、及び「説得したから、説得されたからといって有利・不利になるという訳でもない」点で、ある意味リアルというか、色んな一般化が出来る素材じゃないかと思う。
幾つか抽出して考えてみよう。既出でも泣かない。
・「信じてもらうこと」と「信じさせること」の違い。
つまり受動と能動なのだが。前者は、「周りから白い(村人・村側陣営)と思われるかどうか」。後者は、「他人のことを黒い(狼・狼側陣営)と思わせられるかどうか」であって、実はこの二つ、関連しているとはいえ割と別個の技術なのではないかと思う。
当然のことながら、前者は他人からどう見られるかという問題なので、実はその人が言っていることに説得力があるかどうか、というのは二次的な問題だったりする。逆に、説得力があり過ぎる人は黒い、つまり「全てを知っている人狼ではないか」などと疑われる向きすらある。
じゃあ前者は何が決め手になるかというと、実は受け取り手の主観なのだ。相手の主観をある程度左右することは勿論可能だが、最終的なキーは当然ながら相手が持っている。
そして、後者は基本的に前者に依存する。狼や占い師にとっては後者が重要なのだが、ただ発言に説得力があるだけでは、周りから白いと見てもらえず発言の実効力が目減りする。勿論、他者に白く見てもらえるかどうかに関して、説得力の有無は重要な要素でもあるので、この二者は複雑に絡みあってはいる訳だが。
「自分は結構きちんとした発言をしてると思うのに、何で周りから信じてもらえないんだろう」とか思う場合は、この二者のバランスが良くないことが多いんじゃないかと思われる。論理的・明晰である人が白いと思われることは多い、筈なのだが、結局それだって村次第だったりする。
これは役職にも左右される。「自分を白く思ってもらう」ことが全ての役職にとって重要なのは当然だが、例えば村人はなんら確定情報を持っていない為、時として「他人を説得する」の部分をガン捨てしても悪い結果が出ないことがある。
例えばの話、手前味噌な例で恐縮だが、この村の村人リーザは後者に関してはもうぜーんぜんダメであった。ただ、もろもろの事情が混じりあって、どういう訳か周囲から白いと見られた為、最後まで生き残って村側勝利になったという事情がある。これは無論、リーザが上手かったからという訳では断じてない。
言ってしまえば当たり前のことなんだが、「いい評判を得られるかどうかのキーを、実は自分は握ってない」という事実、この辺多分一般化可能。これを認識することは結構大事なんじゃなかろうか。
じゃあ、どうすれば「白く思ってもらえる」のだろうか、という話に当然、なるだろう。一言で言えば、「受け取り手によって異なる」。
これにあたって、次の項目が重要になってくる訳だ。
・自分が理解してもらう必要がある層の性質を見極めるのが大事、ということ。
同じ様な状況で同じ様な発言をしても、周りの人間はいつも同じ様には「白い」「黒い」と受け取ってくれない。当然だ、シチュエーションが同じでも面子は違う。例えばその村が、「白過ぎて逆に黒い」などという物凄い疑い方を自然なものと考える様な人が多数派な村であったりすれば、喋れば喋る程深みにはまることもある。
これは、前項で書いた通り、自分の発言だけではどうにも出来ないことであるとはいえ、運ばかりに依存する話ではない。重要なのは誰に白いと思われる必要があるのか、そしてその人が「白いと思う基準」はどの辺にあるのか、ということだ。
例えば「議論が首尾一貫していること」というのは一つの基準だし、その逆に「場面に応じてきちんと考え直していること」というのを白黒の基準にしている人も存在する。ネタやRPを多めに混ぜていることを「白要素」と見る人もいるし、逆もまた然りである。
この辺の見極めに成功した人というのは、たとえ自分が村のオピニオンリーダーではなかったとしても、そのオピニオンリーダーの支持を得ることに成功出来るから、結果として上手いこと立ち回ることが出来る場合がある。
先ほど例に出した村で言うと、実はキーパーソンはgotyさんのジムゾンであった。リーザは、議論の余地なくジムゾンには信用されるという立場になれた(つまり、別に見極めが出来ていた訳ではない)からこそ、村側の人間と信用してもらえたのであって、本人一人ならば即刻吊られていたこと疑いない。
一方で、周囲が論理をきちんと受け止めてくれる層であるならば、特に後半、説得力の力ワザで周囲を納得させることも可能だろう。この村で言うと、人狼の私が壮絶な大クラッシュ(共有騙り失敗)をかましたというのに、仲間のジムゾンが怒涛の論理展開を周囲に振りまける人であったこと、周りの村人(というか後半まとめ役のレジーナ)が怒涛の論理展開を受け止めるアンテナを有していたこと、この二つが合致して狼勝利になった。どちらが欠けても人狼負けは確定だったろう。っていうか、共有騙り失敗してすいません。生まれてきてすいません。
って、さっきから私何の役にも立ってねえな。一方で神父にはお世話になってます。なりまくってます。
ともあれ、「きちんと正論を語っている筈なのに伝わらないな、と思っている人は、自分が誰に語りかけているのかを一度見定めるべきなのではないか」という割と一般的なセオリーを、人狼BBSは実にシビアな形で我々に教えてくれているのではないかと、私はそう思っているのである。
・時折、キーパーソン一人を説得すれば十分であったりする件。
この村のまとめ役パメラは、当人の判断力・洞察力はゼロどころかマイナスに近かったが、村側陣営のディーター・ヨアヒムがパメラを説得することに成功したという、ただそれだけの点で村勝利になった。ひどい話である。
と、以上の様な次第で、掘り下げて一般化すれば色々な枝葉が突き詰められそうなネタな訳だが、長くなったので取り敢えずこれくらい。
最後に、私にとっての結論。「私は議論及び洞察の面で基本的に役立たずである」ということと、「ネタに走ってばかりだと共有騙りに走って大失敗して余裕で吊られるけどすげえ楽しかったから私は別にいいけどお仲間の二人ごめんなさいごめんなさい」の二点である。
黒確楽しいよ黒確。
2007年07月31日
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Tracked: 2007-08-26 17:41
ずっと前から匿名愛読者でしたが
初めてコメントさせて頂きました(〃▽〃)
おわ、ご無沙汰しております。その節はお世話になりましたというかなんというか。
また、人狼BBS再開したいなーとか思っています。どこかでお会いすることがあったらよろしくお願いします。
しかしあの村は楽しかった。しんざきさんとはまた戦ってみたいなぁ。
>しかしあの村は楽しかった。しんざきさんとはまた戦ってみたいなぁ。
同感しきりです。悪夢も楽しかったけど、あれはぺルタンとすぐ死別しちゃいましたしね。