長男がまた高校の図書室で借りてきて、「これは読んだ方がいい」と言われたので読んでみたら大変面白かったです。
テーマとしては「日本神話も絡んだ輪廻転生もの」と言ってしまってもいいのかも知れないのですが、展開されるストーリーは痛快な現代もので、「カレー屋でアルバイトをしている女性二人組の日常生活」からお話が始まり、その後あっちこっちに話が吹っ飛ぶ大騒動が始まります。
物語のキーになるのは「徒名草文通録」という一冊の古書であり、主人公である杏が同居人の祥子に「徒名草文通録を盗み出す」という依頼をするところから始まり、あれよあれよという間に平安過去から現在、人間から神様まで、色んなスケールで事件が波及していきます。
「階段島」と同様、河野裕先生の得意技なのかも知れないのですが、「一見すると大したことが起きていないように見えるのに、気が付くといつの間にか話がとんでもなく複雑に広がっており、最後は散らかった要素を隅々まで回収し切って終わる」という展開、要は「話の広げ方と畳み方」がとにかく物凄く上手いなーと。
読者が気付かないうちに物語の要点を大体提示されており、後から「ああ、これこういうことだったのか!!」をこれでもかこれでもかと叩きつけていくの、ストーリーテリングとして超ハイレベルな手法ではないでしょうか。
お話としては、基盤部分のシナリオの底堅い面白さを背景に、その上に乗っかっているキャラクターたちが誰も彼も大変魅力的で、「このキャラこんな風に動いてたのか……」というのを後から追っかけていくだけでも十分楽しい、ということも言えるかと思いました。
以下は若干のネタバレも混じる感想箇条書きです。未読の方はお気をつけください。一応大きなネタバレは避けますが、一応折りたたみます。
・ヒロイン二人は言うに及ばず、途中から出てくる神さまたちがそろいもそろっていい味を出している方たちばかりでした
・騒動の起点でありつつも、なんだかんだでツンデレを絵に描いたような挙動しかしていないイチさん
・一方、やってることも言動もどう見てもヤンデレでしかないけれど人はよさそうな魃さん
・さり気なく便利屋ポジションを一人で独占しているカコさん
・神の悪知恵をこれでもかと披露しまくっている、けれど立ち振る舞いは一番常識人に見れるオモイカネ様
;このあたり、日本神話特有の「人間臭い神々」を見事に作中で再現していて、一方キャラクター自体にもちゃんと感情移入出来るという、お見事なバランシングだと感じました
・特にオモイカネさんの知的な悪どさがとても好き
・魃に言い寄られて、ぞんざいなのに全然あしらえてないイチさんも大変良い
・文通録騒動に混じって登場する色んなキャラたちも、1話で出てきた要素が2話や3話で片っ端から回収されていって、読んでいて大変気持ちよかったです
・特に浮島さん、登場当初はどこをどう見ても胡散臭い賑やかしにしか見えなかったのに、途中からあそこまで活躍するキャラになると思わなかった
・湯山主神と相撲とるあたりがめちゃ好き
・杏と祥子の関係性ももちろん良かったのですが、途中からある程度の状況は推測出来てしまったのが、むしろ自分の読み方として無粋だなーと思いました
・何も考えずに読んだ方が楽しいかも知れない
こんな感じです。
取り敢えず大変面白かったことは確言出来るので、皆さん気が向いたら読んでみてください。
今日書きたいことはそれくらいです。