2007年08月17日

手品業界がこの先生きのこるには。

今日はきのこる先生にご登場願うことにした。先に言い訳しておくと大した話ではない。

ちょっと前に、手品師が種明かしに対して損害賠償を請求、って記事を見たなーと思い出した。

元はasahi.comだったみたいだが、元記事が消えている。雅楽多ブログさんを引っ張らせて頂く。

テレビの手品の種明かしに損害賠償請求

まあ、「手品」というもの自体が既に斜陽の代名詞がわりに使われているという現況には、ちょっと悲しいものを感じないでもないのだが。

「種明かしが直接損害になり得る」というのは、ゲーム業界で言うところのパズルゲームの構造に近い。ネットの存在によって消費ペースに拍車がかかる、という点も同じだろう。

多くのパズルゲームと同じく、手品というものは消費物件である。その面白さは、「解法が示されていない」ことによって担保されている。

「解き方を探し出す」ことがゲーム性の中核であるパズルゲームは、解き方を見つけ出されてしまうことによって面白さが減少する。手品もそれと同様、「タネが割れてしまうと面白さが減ずる」という側面があるのだろう。


となると、パズルゲーム業界が見出した解決法が、手品業界にもほぼそのままの形で当てはまるんではなかろうか。


パズルゲーム業界を俯瞰すると、ユーザーの「消費」に対してとられてきた解決法というものは、割とシンプルに分類出来る。ちょっと前に書いたエントリーから引用してみよう。
・パズル局面の難易度を大幅に上げ、そう簡単に解かれない様にする(チャンピオンシップロードランナーなど)

・アクション性を押し出し、パズル以外の部分でのゲーム性を補強する(ソロモンの鍵など)

・ステージのランダム生成(あるいはエディット)などで面数を純増し、消費ペースを遅くする(上海、四川省など)

・なんらかの方法でステージを追加リリースし、ユーザーに継続的に遊んでもらう(倉庫番など)
大雑把に二分すると、解法を見つけても問題なく楽しめる様にするか、解法を見つけだされるペースを遅くする、というのがパズルゲーム業界の基本方針だったことが分かる。

手品側からこの基本方針対照すると、

・タネがある程度割れていても問題なく楽しめる手法を確立する(口芸など、ステージとしての面白みを出す)

・非常に見つけにくいタネの手品を作成する、あるいはタネの種類を純増させる(新たな手品の開発、タネの秘匿)

ということになり、これらの手法は既にかなり前からとられているであろうことが分かる。


だが、パズルゲーム業界と手品業界の間には決定的な差がある。

手品業界は、まだテトリスに出会っていない。

手前味噌だが、繰り返し書くのもアレなんで、先ほどのエントリーからもうちょっと引用する。
テトリスのどこが突然変異かというと、それまで基本的には「消費物」だったコンピューター業界におけるパズルゲームを、「完全リサイクル商品」に変えたモデルを提示したこと、だと私は思う。

たった数種類のブロックと、「落として、並べて、消す」という単純極まりないルール。後は全部ユーザー任せ。ゲームを形成するにおいて、細かい面構成に頭をひねらせる必要などどこにもない。「パズルを作る」部分まで全部まとめてゲーム性の一貫として、ユーザー側に渡してしまった、という言い方も出来るだろう。

レトロゲーム万里を往く その47 テトリス
パズルゲーム業界において、テトリスが物凄い規模でのパラダイムシフトを引き起こしたことは議論を俟たないであろう。「落ちものパズル」という業界は、テトリスというたった一本のソフトが作り出したのだ。それは、「解法が分かると面白さを減ずる消費物」という、パズルゲームの構造そのものを叩き壊したからに他ならない。

言い方を逆転させると、「解法が分かると面白さを減ずる」という構造に対して、「解法が明示されていること自体が面白さの条件の一つ」という進化を加えることが出来れば、当然のことながら問題は一挙に解決する、ということになる。


ということは、手品業界においてテトリス的なパラダイムシフトが発生したとすれば。つまり、観客参加型などというレベルとは全く別の次元で、タネ自体は秘密でもなんでもなく、かつ観ている人間が直接タネの構成に関わる様な手品が確立されれば、そのインパクトは「落ちものパズル大氾濫」と同様エラいことになるのではないだろうか、と、書いてしまえば割とどうでも良さそうなことが私の意見な訳である。


勿論、上記の文章には幾つかの保留点がある。

・手品はそもそも、「解く」ことが中核にない。
・最近の手品業界に関して私があんまり知らない。
・そもそも「手品業界」というものがどんな構造をしているか私が知らない。
・「テトリス的なもの」が手品の枠に収まるのかどうか私が知らない。

ダメじゃん、とか思わないでもない。

とりあえず、Google先生に尋ねてみたら日本奇術協会というものを見つけた。気が向いたらどんな構造なのか調べてみようかしらん。

それにしてもアンビシャスカードってなんかスゴイですよね。話術も手品の内なんだろうけど。

posted by しんざき at 12:28 | Comment(2) | TrackBack(1) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
>「テトリス的なもの」が手品の枠に収まるのか
について

>タネ自体は秘密でもなんでもなく、かつ観ている人間が直接タネの構成に関わる様な手品が確立されれば、
となると、それは手品ではなく大道芸になってしまうのではないだろうか、と思いました。
秘密のタネがあって、客に「何で?」と思わせる、その構造自体が手品のアイデンティティであるような気がします。
Posted by niizato at 2007年12月02日 01:14
>niizatoさん
>となると、それは手品ではなく大道芸になってしまうのではないだろうか、と思いました。

なるほど、言われてみるとそれはそうかもなあ。
いずれにしても、手品業界は色々と厳しそうですな。
Posted by しんざき at 2007年12月02日 20:45
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