2007年08月23日

ヤツらは異邦人・漫画編。

知人に借りた「よつばと!」を三巻まで読んで、ああ、なんだか懐かしい感じの異邦人ものだなーと思った。


「異邦人もの」というジャンルについては、昔何かの本で分類を読んだ様な覚えがあるのだが、タイトルも忘れれば理論展開もぜーんぶ忘れた。仕方ないんで、自分で適当に再構築してみた内容をメモっておく。


定義。いわゆる「異邦人もの」というのは、ある世界観から隔絶された「異邦人」が主人公、あるいは準主人公という位置づけで、彼または彼女のエピソードを主軸に話が進んでいくジャンルである。異邦人は、外国からの旅行者だったり、よその星からやってきた異星人だったり、過去や未来からやってきた別時代人だったりする。そういった人が、例えば地球とか、現代社会にやってくる。ジャンル分けによっては、現代人が別世界に迷い込むものも異邦人ものに含まれるかも知れない。


この「異邦人もの」というジャンルそのものは遥か昔から存在した。古くは竹取物語とか日本霊異記の一部のエピソード。一寸法師だってガリヴァー旅行記だって異邦人ものだし、ウェルズ以降の近代SFは異邦人もの花盛りだ。昔から、「よそものとそれにまつわる騒動」というお話は、ストーリーテラーの重要な飯の種だったのである。


それはそうと、取り敢えずは漫画のお話。
漫画における異邦人ものというのは、「異邦人である、ということがどれだけ周囲との軋轢を呼び込むか」ということをテーマに、割とかっちりとした形に分類出来ると思う。その1、「異邦人が周囲とギャップを生じるか生じないか」。その2、「生じたギャップに戸惑うのは異邦人か、周囲の人々か」。

順番にいこう。


1.「異邦人が周囲の世界観とギャップを生じていない漫画」

ドラえもん。

この一番目というのは、主人公あるいは準主人公が確かに異邦人であるのだが、彼が異邦人であること自体はそれ程周囲との軋轢を生まない、という舞台設定の漫画である。彼は「自分がいた世界」と今の世界の文化差に戸惑ったりしないし、周囲も彼をそれ程奇異の存在とは考えない。

これの良い例がドラえもんで、彼は22世紀の猫型ロボットという突拍子もない立場であるにも関わらず、驚く程周囲との違和感を生じていない。机の引き出しから這い出てきた登場シーンでこそ多少のトラブルは起こるが、以下は驚異的なスムーズさで彼は周囲に溶け込んでしまう。出オチを狙った駆け出し芸人ならそのまま人生に絶望しそうなスムーズさである。少なくとも、「異邦人としてのドラえもん」がお話の主軸であったことは殆どない、と言ってしまっていいだろう。

周囲は彼を「異邦人」と見なしてはいないし、彼も現代人の文化に悩んだりもしない(ごく稀にそれらしいことを口にすることはあるが)。彼が異常性を出力するのは、唯一ひみつ道具を出す時のみであって、それ以外はごくごくナチュラルな青ダヌキである。実は石ころ帽子でも標準装備されているんではないか、と疑ってしまいたくなる程の自然さだ。私がのびただったら、多分もうなんぼかは自分の正気を疑うんじゃないかと思う。

他、KUROZUKAとか一応思いつくけども、多分このジャンルの漫画ってのはそこまで多数ではなさそうだ。微妙な理由が二つ。一つ、「ギャップを表に出さないのでは、異邦人という設定が勿体無い」。二つ、「ギャップが生じていないので、そもそも異邦人ものとして認識されにくい」。こういう視点で見ると、ドラえもんって結構特殊な漫画だよなーと思う。あと、微妙だけどヘルシングってもしかしてこのカテゴリーなのかも知れない。



2-1.「異邦人が周囲の世界観とギャップを生じ、主に周囲が戸惑う漫画」

多分山ほどある。

このカテゴリーは、「異邦人自身はそれ程周囲との軋轢に影響されない・あるいは疑問をもたない、疑問を表に出さない」というのが特徴で、専ら異邦人に振り回される周囲の人々の描写が目立つことになる。古今東西、ここに分類される漫画はたくさんある筈だ。

「異邦人もの」としては、「ブレない異邦人」「それに戸惑う周囲の人々」というのが舞台設定として一番オイシイ・あるいは描き易いってことなんだろう。藤子作品では例えばオバQやジャングル黒べえやハットリくん、怪物くんやウメ星殿下なんかもこのカテゴリーだろう。

寄生獣も分類するとしたらここだろうし、究極超人あ〜る、道士郎、タルるートくん、レベルE、ネウロ辺りのタイトルはすぐに思い浮かぶ。三つ目がとおるや「燃える!お兄さん」もここだろうか。ワッハマンもそうだな。

よく「押しかけ異邦人ものラブコメ」として語られるうる星やつらもこれだろうし、以下、その系列のものは大部分がこのカテゴリに収まるだろう。女神さまとかサザンアイズもここか。

このカテゴリーはとにかく数が多いんで、カテゴリー内で中分類を作ってみても面白いかも知れない。気が向いたらまた考えてみる。

構造的にはエンジェル伝説なんかもこのカテゴリーに近いと思う。うしおととらやヒカルの碁でちょっと迷ったけど、バディモンスターものってそもそも異邦人ものとして分類しないのかな。保留。

余談だが、ドラゴンボールは当初このカテゴリーを意識して描かれ始めた筈である。途中から明後日の方向に凄い勢いで突っ込んでいったけど。


2-2.「異邦人が周囲の世界観とギャップを生じ、主に自分が戸惑う漫画」

少ない気がする。

このカテゴリーは、異邦人が自分の世界観と周囲の世界観の隔絶を自覚し、それに混乱する・疑問をもつ・あるいは軋轢に苦労する、という筋立てになる筈だ。この辺のストーリーは、2-1に比べると格段に少ないんじゃないだろうか。いや、2-1で挙げた漫画でも、部分的にはそういう描写あるけれど。

一応鉄腕バーディーとかトライガンとか思いつくことは思いつくが、微妙っちゃ微妙。バーディーは戸惑う描写が少ないし、トライガンは当初ヴァッシュが異邦人としては描写されてない。あ、名探偵コナンとかラブやんがもしかしてこのカテゴリーなのか?ラブやん最近の展開全然知らないけど。

このカテゴリーが少ないのは、主役・あるいは準主役である筈の異邦人に関する描写が難しいからだろうと思う。異邦人の「戸惑い」を読者が理解するには、まず異邦人自身がもっている世界観を理解しなくてはいけないが、その描写が色々とメンドーくさい。例えばの話、笑うせぇるすまんがどんな人生観をもっているか、あの筋書きで描写するのは結構困難だろう。異邦人は、理解され難いからこそ異邦人なのである。

全くの無根拠だけど、上の段落から帰納すると、少女漫画には結構このカテゴリーの漫画が多い様な予感がする。少女漫画の主人公は、女性的視点をもっている限り、読者に世界観の理解を要求しない。男子校に一人放り込まれた男装の女子高生、みたいな漫画がいかにもありそうな気がする(超絶適当な憶測)。 どースか?>奥様


と、ここまで書いて思ったんだが、このカテゴリーには本来「現代人(読者と同じ立場)が他の世界に放り込まれる」というジャンルが収まるべきなのかも知れない。SFではたくさんありそうだけど(ミノタウロスの皿とか)、取り敢えず保留しとこう。行きて帰りし物語との関係は要検討。



と、エラい長くなった。取り敢えず、よつばは上記で言うところの2-1の異邦人だなーと思ったこと、遠慮のしなさ具合という意味では藤子作品の異邦人に近いところがあるなーと思ったこと、みんななんだかんだでいい人だなーと思ったこと、以上を本エントリーの結論ということにしておきたい。お休みなさい。

posted by しんざき at 00:52 | Comment(0) | TrackBack(1) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: うしおととら『うしおととら』は週刊少年サンデーに1990年6号から1996年45号にかけて連載されていた藤田和日郎の漫画作品。* 第37回(平成3年度)小学館漫画賞受賞。 1997年星雲賞コミック部門..
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