2007年12月07日

書くということは、読む人の時間を削り取ること。

昔、出版業界の端っこの端っこくらいでバイトをしていた時、色んな人の言葉をつぎはぎして思ったこと。


本を買ってもらうということは、お金をもらうということだ。

本を読んでもらうということは、時間をもらうということだ。

お金は返すことも出来るかも知れないが、時間は決して返金出来ない。だから、文章を書くということには、ある人の人生をその時間分削りとるという覚悟が要る。


今、私は何かを書く仕事はしていない。その代わりブログを書いている。

お金をもらうこともないし、お金を払うこともないし、それでも読んでくれる人はいる。それは本当にありがたいことだと思うんだけど、「人生を削りとる覚悟」というものは、依然として、あるいは前以上に重要であり続けている。「読みたくない人は読まないだろう」というのは全くその通りなんだけど、書き手がそれを拠り所にするのは単なる逃避だ。


長文を書くのは、本当に怖い。長文を読むのに必要な時間に見合うものを、果たして私は提供出来るだろうか。出来たかも、と思うことも、出来なかったんじゃねえかなあ、と思うこともある。それでも、ゼロよりは符号つきの数字の方がましだろうと信じて、私は送信ボタンを押す。


私は今後も書きたいことを書き続ける。誰かの為ではなく自分の為に書く文章も、正直結構ある。ただ、書きたいことをブログという「読んでもらえる」場所に書く以上、覚悟はいつも忘れないでいようと思う。


私の文章を読んだことで削られた人生の、その十分の一にでも見合うものを、私の文章を読んでくれる人に差し出せます様に。


posted by しんざき at 17:30 | Comment(3) | TrackBack(1) | ネットの話やブログ論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
私はしんざきさんの文章を読むのが好きです。
Posted by ティ at 2007年12月10日 07:13
>ティさん
お褒めの言葉、どうもです。今後もご期待に沿える様に、適度な範囲で頑張ります。
Posted by しんざき at 2007年12月10日 18:33
本を読んでもらうということがどうして「時間をもらうということ」なのでしょうか。

本を読むということでその間の時間は削られますが、それがどうして「時間をもらう」ということになるのか理解できません。

そもそも「もらう」とは、誰のことを指すのですか。文脈からすればその本を書いた人となるかと思いますが、本を書いた人が時間を貰うということが意味がわかりません。
Posted by 兄弟関係2010 at 2011年03月29日 21:18
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