私は、自分の発想力にそれ程信をおいていない。
故に、「ねずみ年だから取り敢えずマッピー」などという発想は安易極まると断定してしまってよかろう、と思った。こんな安易な発想は、Webでは既にJOIN THE CREWばりに氾濫しまくっており、年賀状用のフリー素材は見渡す限りマッピーの図案に埋め尽くされ、エントリーをあげてしまったが最後「スパム書くなハゲ」などという論難が滝の様に私のブログに押し寄せるのではあるまいか、と私は怯えていた訳である。戦々恐々としていた訳である。
しかし、まずはぐぐる先生にお伺いを立てた所、思った程ページが引っかからない。どうも、「ネズミ→マッピー」という即決論理回路を構築している人材は、世にそれ程多くはない様なのである。
何故だ。ネズミと言えばマッピーだろ、どう考えても。ゲゲゲの鬼太郎だの浦安の魔法の国の話なんかしている場合じゃないだろ。こら、そこの君、勘違いするな。ソニックはハリネズミであってネズミではない。レミーのおいしいレストラン?なんスかそれ。宮沢賢治スか。
我々には余りにもマッピー分が不足している。我々は手に入るだけのマッピーを必要としているのである。
ともあれ、どうやら私のブログが「スパム書くなハゲ」という書き込みで大炎上する恐れはそれ程ない様なので、安心して安易なネタを書くことにする。
今年はネズミ年であり、ネズミと言えばマッピーである。
「マッピー」。アクションゲーム。1983年、ナムコより業務用発売。翌1984年には「ギャラクシアン」「パックマン」「ゼビウス」などのタイトルに続く移植作としてファミコンで発売され、遊びやすく、かつ奥深いアクションと、印象的でコミカルなキャラクターによって幅広いユーザーに好評を博した。
キラータイトルの連射だったと言っていいだろう。1984年というのは、ファミコンというハードのまさにスタートダッシュの年だった訳だが、ナムコは9月発売の「ギャラクシアン」を端緒として、11月までのたった2ヶ月で上記四タイトルを発売している。言うまでもなく、全部が全部名作揃い。今のゲーム事情からは到底想像も出来ない様な超絶ハイペースである。今、無理矢理こんなペースでゲームを作ろうとしたら死人が何人出るやら。
ファミコン黎明期の成功はナムコ(とハドソン)あってこそ、と私は思っているが、上記の様なハイペースを見ると納得して頂けるのではないだろうか。この点、コナミもジャレコもタイトーも、ナムコに比肩し得るものではない。
取り敢えず関連URLなど。
ゲームのルール・その他摘要については、Wikipediaに詳しい。
Wikipedia:マッピー (コンピュータゲーム)
業務用のグラフィックについては、こちらのページでご参照頂くのがいいかと思う。
マッピー
また、「OKINIIRI」のバブシカさんも、マッピーについて詳述して下さっている。
マッピー
さて、ゲームの話をしよう。
・パックマンの「進化形」。
ゲームとしてのマッピーは、パックマンを始めとするドットイートゲームの「次」の世代として位置づけることが出来る。
ドットイートゲームというのは、いわずと知れたパックマンやラリーXなどを代表とする、固定画面アクションゲームの一番原始的な形である。迷路状の画面に、「エサ」であるところのドットが敷き詰めてある。プレイヤーは、基本的に倒せない敵から逃げ回りながら、エサを全て取ればステージクリアとなる。
マッピーのゲーム性はこれに近い。マッピーは「基本的には倒せない」敵から逃げ回りながら、「エサ」にあたるアイテムを全て集めることによってステージをクリアしていく。「エサ」が通路上全てに敷き詰められている訳ではないということを除けば、ゲームの構造自体にはパックマンと大きな違いはない。
差異は二つ。「ドア」と「トランポリン」である。
マッピー独特の操作性の妙というのは、その8割方がトランポリンに集約されている。上記リンクからの画面写真など見て頂けば分かるが、マッピーというゲームにおいて、上下動は全て縦ぶち抜きの通路を用いる。その中ではマッピーは無敵状態になり、ニャームコだろうがご先祖様だろうがすり抜けることが可能となる。
といっても、トランポリンは割と粗雑な作りをされており、4回連続で跳ねると破れてマッピーが転落死する為、適宜通路に下りて耐久度を回復させなくてはいけない。
一方、通路におけるマッピーはスペランカー以上に非力である。ドアの開閉によって敵キャラを跳ね飛ばす(そして一時的に気絶)という抵抗手段こそあるが、足はニャームコ達よりも遅いし、ドアがない通路で敵に挟まれれば、もう何をどうひっくり返しても逃げる手段はない。トランポリンから通路に移った瞬間、ついてきていたニャームコにとっつかまってゲームオーバー、などという事態も日常茶飯事。
それでもマッピーは、トランポリンの耐久値回復とアイテム獲得の為、通路に突入しない訳にはいかない。嗚呼、マッピーは行く。
「横」の通路移動と、「縦」のトランポリン移動。トランポリンでの上下移動は、安全だが時間制限がある。通路での横移動は、危険だが見返りがある。リスクとリターンのコントロール。このメリハリこそがマッピーというゲームの中核であり、面白さの源泉でもあるのだ。
かくて、マッピーのプレイヤーは「いつ、どの様なタイミングで」通路に飛び移り、素早くアイテムを入手するか、というスパイ大作戦に腐心することになる訳である。
その他、パワードア(ドアを開けるとマイクロウェーブが飛び、ニャームコ達を排除することが出来る)による得点稼ぎであるとか、ペアになるアイテムを順にとると高得点になったりであるとか、パックマンからの「進化」が見てとれるポイントは山の様にある。アイテムをとる順番など、ドットを通路の要所要所に再配置したことによって、初めて可能になった戦略要素である。
この辺り、ナムコのゲームデザインの妙は神業といって良く、その仕上がりには舌を巻く他ない。
・トランポリンで跳ねる音が耳に残り杉ます。
効果音とか、BGMについてちらっと。
マッピーは、ゲーム内のBGMに関しても草分けに近い存在だったと思う。
例えばポパイやロードランナー、ナッツ&ミルク辺りを遊べば分かる通り、この当時、まだまだゲーム内のBGMの存在感は大きくなかった。その多くは短い効果音的なフレーズの繰り返しであり、随所に「ファンファーレ」とでも言うべきメロディーが流れるのが、当時のゲームの標準的なBGMだった。「ゴルフ」の様に、BGM自体が存在しないゲームもまだまだ珍しくはなかった。この状況は、ファミコンに限らずアーケードでもそれ程異ならなかった筈だ。
そんな中、唐突に「主題歌」というにふさわしい質量のBGMがぶち込まれたのが、このマッピーだった。
上記Wikipediaには、すぎやまこういち氏の印象として「初めて「ちゃんとした音楽がついている」と思った」という表記がある。この発言のソースはどこなんだか分からないが、当時のゲーセン事情を考えると、確かにマッピーの音楽は異質だったとは言えると思う。
これ以降、ゲーム業界には徐々に質量そろったBGMが増えていき、1985年の「グラディウス」によって一つの節目が形作られることになる。
ところで、確かマッピーのBGMには、「ぼくはマッピー、元気なポリス とられた財宝取り返し」というフレーズが確かに乗っていたと記憶しているのだが、Webを幾ら漁ってもソースが見つからない。なんでしたっけこれ?どなたか覚えてませんか?
・任天堂を凌ぐ(かも知れない)操作感。
「ナムコアクションの真髄は操作感にあり」と、私はナムコゲーに触れる度にそういっているが、多分その元祖はマッピーじゃないかと思う。
このゲームを遊ぶ際の、「動かしていて面白い」感は尋常じゃない。トランポリンで跳ねる時の、「ぴょん」という感触。トランポリンから通路に移る時の浮遊感。ドアの開閉によってニャームコを弾き飛ばしたり、あるいは自分が加速するタイミング。通路とトランポリン間の移動の一瞬で、ニャームコをすり抜けるギリギリのスリル。どれをとっても、噛めば噛む程味が出る、まさにスルメの様な面白さを内包している。
この操作感が、ボーナスステージを含め、ゲーム全体を通して生かされきっているのがこのゲームの凄いところだろう。
猫とネズミ、というキャラクター造形もその点、一枚噛んでいる様には思う。トムとジェリー的世界観というか、ちょこまか逃げまわる舞台設定というか。トランポリンが満載されている盗賊団のアジト、という妙な面設定も、無理なく世界観の一部に組み込まれていると思う。
余談だが、「マッピー」という言葉は「マッポ(警察を指す俗語)」からきている、という話も有名だと思うのだが、これもソースを思い出せない。むかーーーしNG(ナムコの機関紙)かなにかで読んだ様な記憶もうっすらとあるんだけど、余りにも昔なのでもうからっきし自信がない。どなたか、ソース知ってる方いらっしゃいませんか。
と、例によって長文になり過ぎたのでこの辺で。次回はもうちょっと後のタイトルかな。
2008年01月09日
この記事へのトラックバック
どちらも逃げるだけじゃなくて反撃要素がいい味を出していると思うのです。
ベルと落とし穴のトラップを初めて見た時は感動した記憶があります。
音楽も当時としては凄く良かったと思います。
特にボーナスステージの音楽は、全部風船を割る頃に音楽が終了するという粋な計らいがたまらなかったですね。計算されていたんでしょうね、これって。
ちなみにご先祖様はトランポリンですり抜けられないっす。
>ところで、確かマッピーのBGMには、「ぼくはマッピー、元気なポリス とられた財宝取り返し」
確かに子供の頃に近所にあったスーパーのおもちゃ売り場で歌を聞いた覚えがあります。
自分の記憶では「ぼくはマッピー マイクロポリス 取られた品物 取り返す」だったような。
#"namco BEST HIT PARADE!"に「ちょっとマッピー男の子」ってありましたね。
#歌詞は全然違いますが
>sammyさま
確か、当時迷路を走破するロボットの開発が盛り上がっていて「マイクロマウス」って総称だったと思います。
その時でnamcoも開発してたかと。そのネーミングがマッピーでしたよ。おっしゃる通りロボットが先行です。
うろ覚えですがALL ABOUT namcoで読んだ記憶が。
#「歌詞にあるマイクロポリスはマイクロマウスからの派生だろうな」と当時思いました
マイクロマウスの写真がある記事を見つけました。
インプレスの記事で『「第27回全日本マイクロマウス大会」レポート(2)』です。
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/11/30/276.html
一番下の段落に「ニャームコとマッピー」とあり、サムネイルがあります。クリックすると拡大します。
しかし、記事中の
「重量は、ニャームコが27kg、マッピーは4.3kg。マッピーは当時2,000万円以上した精密ロボットである。」
には魂消ました…当時二千万って。namco凄い。
「18歳のマーッピーちゃんちゃんちゃらんちゃーん」
「30歳のマーッピーちゃんちゃんちゃらんちゃーん」
っていうのを聞いた記憶があるんですが、あれは違うのかー。
>ナムコの昔のゲームって追い詰められ系ゲームの作り方が巧いなと。
おっしゃる通りだと思います。多分、色んなメーカーに影響与えてますよね。
任天堂のアクションとはびみょーに配分が違う気が。
>K-HEXさん
>ファミコン版の移植度もゲーム的には非常に高く、やり応えがありました。
さり気にニャームコのアルゴリズムが神業だったと思うのです。
>ちなみにご先祖様はトランポリンですり抜けられないっす。
あうち。失礼しました。その内修正しておきます。
>sammyさん
>マッピーの元祖はゲームではなく、どこかの研究所で作られた、迷路を探索できるネズミ型ロボットではありませんでしたか?マップ上を走るのでマッピー。
wikipediaでも触れられてますね。名前の由来もそっちなんでしょうか?
>自分の記憶では「ぼくはマッピー マイクロポリス 取られた品物 取り返す」だったような。
あれ、結構違いますね。CMの歌だったのかな?
>#"namco BEST HIT PARADE!"に「ちょっとマッピー男の子」ってありましたね。
持ってたりします。歌詞の意味不明度がステキな歌ですね。
「門限を 守らないとおこられる ご先祖(さまに)」
いやな家庭だ。
>島国大和さん
>「18歳のマーッピーちゃんちゃんちゃらんちゃーん」
うお、新説!?
と思ったら、「MAPPY音頭」でぐぐったら結構色々出てきました。
http://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%BC%E9%9F%B3%E9%A0%AD&ie=UTF-8
ナニゴトか。
ファミコンへの落とし込みもかなりのレベルで
ああ、当時のナムコは凄かったなぁ と(遠目
BGMの響きも堪らなかった……
続編はどちらも……でしたが(笑
>ご先祖様
トランポリンから通路へ乗り移る(及びその逆)間にだけは接触判定が無いですよ。
>続編はどちらも……でしたが(笑
マッピーキッズはそれなりにやりこんだ覚えがあります。何か別のゲームでした。
>トランポリンから通路へ乗り移る(及びその逆)間にだけは接触判定が無いですよ。
情報ありがとうございますー。勘違いしてたかな。