どうなんだろう。
奇をてらわなくていいから、一般大衆にとってわかりやすい企画を立てろ。かっこつけなくていいから、一般大衆にとってわかりやすい書名をつけろ。方法論の違いなのか、あるいはジャンルの違いなのかも知れないが。
私が昔お世話になっていた編集者さんの言葉を引用すると、こうなる。
「スコープは狭ければ狭い程いい」
「平均に受けてもしょうがないんですよ。平均値って存在しない値のことなんですから」
「10人中5人になんとなく受ける題名より、10人中1人が必ず手にとる題名の方がいい。手にとってもらいさえすれば、本はそこから広がるものなんです」
どっちが正しいのか、あるいはどっちが適しているのかは良くわかんない。ただ、そんな言葉を発する編集者さんにお世話になっていた身の私としては、「大衆感覚」という言葉にはあまり価値を感じない。存在しない客層を想定してどうすんだろ、とか思ったりする。いや、他所様で成功しているえらい人の台詞に文句をつけるのもアレだけど。
話は変わるが。先日から自宅にあって、私がすげー感心した本の題名。
「七月に生まれた赤ちゃんの本」
なんというピンポイント、なんという具体性。思わず唸った。
内容はどんな感じかというと。7月に生まれた赤ちゃんに関して、8月にはどんな様子、9月にはどんな様子、といった描写とアドバイスが一年分書いてあるだけの本なのだが、この題名のメリットを考えると計り知れない。
・非常にピンポイントでありながら、当てはまる境遇のお母さんは思わず手にとりたくなる具体性をもっている。しかも客層は狭くない。
・手にとった人にとっての適合性、実用性がある程度保証されている。範囲が具体的なので具体的に役立つ内容が書きやすい。
・「新生児が産まれた直後」という、実用本を探したくなるタイミングを的確に捉えている。
・内容を少し変更しただけで、同じスコープをもった本が12冊作れる。
一石四鳥どころか、もうちょっと考えてみればあと2、3羽落ちてくるんじゃないか、というくらいの勢いである。素晴らしい。やったもん勝ち、という気もしないではないけど。
昼休みに思ったこと、以上。
参照:「ピンポイント」のメカニズム。
何のジャンルにしろ、メインストリームあってのカウンターカルチャーなのでそれぞれ需要はあるんだろうと。正解はないんだろうと。
大衆感覚かあーどんなでしょうねえ。
レストランで言うと「まあパクチーは抜いとけ」的なアジア料理屋とかでしょうか。それの対極に本格派がある、みたいな。
>何のジャンルにしろ、メインストリームあってのカウンターカルチャーなのでそれぞれ需要はあるんだろうと。
それはそうなんでしょうね。ただ、「メインストリーム」というイメージがどうも曖昧模糊としているというか、むしろ私がよく分かってないだけというか。