2005年10月20日

レトロゲーム万里を往く その43 〜Wizardry伝説・序文〜

ささやき・・・えいしょう・・・いのり・・・ねんじろ!

** しんざきはまいそうされます **


およそWizardryのステキっぷりというものは、あの独特な言葉使いにとどめを刺す。少なくとも私に関する限り、日本における「ウィザードリィ」の最大の功労者は訳文を書いた人であろう。宝箱の罠で「げんこつ」とか、

** いしのなかにいる! **

であるとか、そんじょそこらのセンスでは訳せねえ。最も身近にして、最も魅力的な「洋ゲー」、多分それがWizardry独特の味の源泉なのだろう。


さてさて、ということで今回は続き物。歴史的名作、かの「Wizardry」の話を、何回かに分けてやってみたいと思う。よって、今回のお話は基本的に前置きである。


なにせ熱狂的なファンの多いこの作品だ、先に私の立ち位置は明確にしておく必要があるだろう。下手に知ったかぶりを書いて夜道で刺されても困る。


○そもそも私はWizardryのコアファンを自称出来る程の経験値は有しておらず、FC版の1・2・3、SFCの5を一通り遊んだ程度の人である。及びPSのリルガミンサーガ、GBの外伝にも多少手を出しはした。

○SFC版の5、及びFC版の2と3、いわゆる#3と#2はそれなりにやった。具体的に言うと、目をつぶってコントローラー操作しても最下層までは素で辿りつける(注:これが自慢にならないのがWizardryの世界である)。

○他機種の話は、知識として知っている部分はあるがあんまりワカラン。無論のこと、Apple版や9801時代のバージョンもやったことはない。

○6以降の話は全然ワカラン。

○4だけは許してください。ガチで。

○モンティ・パイソンは見たことも聴いたことも食べたこともない。


こんな感じか。まあそれくらいの範囲の人なので、コアWizardりゃーな方、多少見当違いなこと書いてても勘弁してやってください。


さてさて、言い訳も済ませてしまったのでざっくばらんに行こう。



・Wizardryとはなんぞや、という話。


Wizardryとは何か。二言くらいで言うと、「コンピューターRPGの元祖」にして「ありとあらゆるRPGの中で、多分最も深刻な中毒者を生んだシリーズの一つ」ということになるだろうと思う。


まずは、無駄な抵抗だとは思うが、Wizardry自体について軽く触れておこう。ご存知の方はさくっと読み飛ばして頂きたい。

「ウィザードリィ」。1987年12月22日、アスキーによりファミコン版発売。

PC版は81年登場の筈だが、歴史の話はWikipediaが暴力的な程に詳しいのでそちらを紹介するに留める。
「Wizardry」 in Wikipedia

Wizardryは、テーブルトークRPGの草分けであるD&Dを下地に生まれた、3D視点の迷宮探索型のRPGの先駆け、かつ到達点である。ウルティマと並び、コンピューターRPGの元祖と呼ぶ人も多い。そのゲーム性はどこまでもシンプルだ。

プレイヤーは、まず最初にキャラクターを作成し、6人までのパーティーを編成する。で、その6人を操って迷宮を探索する。敵と戦ってレベルを上げて、敵が落とした宝箱を拾ってアイテムを集める。ついでに謎解きをしたりボスを倒したりもする。

多分Wizardryで実際に触れる行為の9割以上は上の段落の数行で表現出来ていると思うのだが、どんなもんだろう。

特にファミコン版1,2,3の時代などは、文字と線のみの地上画面に、壁と通路だけのゲームフィールドと、その外見は徹底的にシンプルだった。余計なものを全て削ぎとり、骨格だけをひたすら奥深くしていった世界、それがWizardryの機能美であったろう。


・Q:それ面白いんですか?

A:すんげーーーーー面白いんです。

おそらく、世の中のありとあらゆるコンピューターRPGの中で、「キャラクターを鍛える楽しみ(経験値とレベルアップ)」と「希少なアイテム(「むらまさ」や「しゅりけん」)を探す楽しみ」というものを一番最初に完成させたのがWizardryだった筈だ。


例えばキャラクター作成。

プレイヤーは、まず手始めに迷宮に入っていくキャラクターを登録する。

そして、当然のことながらここで既に戦いは始まっているのである。

作成するキャラクターは、それぞれ決められた値の「ちから」だの「ちえ」だの、様々なステータスを有している。レベル1の状態ではクリーピングコイン並のそれらステータスをドーピングする為に、各キャラクターにはランダムで「ボーナスポイント」というものが割り振られ、それぞれのステータスにポイントを分配していくのだが。

この「ランダム」という時点で既に、スタートダッシュを一発キメようとするユーザーは大量のボーナスポイントを得る為キャラクター作成→消去を繰り返す、という構図が存在したのである。

忍者だの侍だの君主だの、Wizardryならではの特殊な上級職に最初から就職するには、初期のステータス、及び5〜9の普通に得られるボーナスポイントでは全然足りない。15〜19、というたまーに出るボーナスポイントでもまだ不足だ。

20以上、30以上などというレアなボーナスポイントを狙って、コアな人はキャラクター作成だけで一夜を費やし、訓練場には「あ」とか「ア」といった簡単に作成出来るキャラの消去跡が累々と並ぶ、という訳なのである(狙いのキャラが出来たら名前変更)まあ、勿論初期のボーナスポイントだけでキャラを作成し、頑張って育てる人も多かった訳だが。

他の多くのRPGと異なり、Wizardryにおける主人公キャラクターは全て「文字」と「数字」の集合体だった。名前も性別も種族もプレイヤーの任意である。それだけにプレイヤーは過剰な程の創意工夫妄想を自分のキャラクター達につぎ込む余地があり、その分キャラクター作成にも熱がこもっていったのだろう。


さらに付け加えるなら、Wizardryでは自分のキャラが「場合によっては本当に死ぬ」。

他RPGとの比較でよく言及される事なんで、今更繰り返すのもあれかと思うが、まあいいや。

Wizardryにはロストという制度がある。HPが0になって死亡したキャラクターの蘇生に2回失敗するか、あるいはある条件下でキャラクターは本当に「消失」してしまい、二度とゲームには戻ってこない。経験値稼ぎに何十時間を費やしたキャラクターでも、下手するとほんの10秒くらいで還らぬ人となってしまうのだ。

他の多くのRPGと違って、「死」にそれなり以上の重みがある点も、Wizardryのキャラクターや戦闘に一層の味わいを持たせる所以であろう。

RPGと言えばドラクエだったファミコン業界に突如突っ込まれた「くびをはねられた!」の世界、それがWizardryだった訳である。げに恐ろし。



・今回は続きますよ。

はい、例によってエラいこと長くなりました。

なにせRPG界の底なし沼と言われるWizardryである。1回のエントリーではとても書き切れるもんではない。

Wizardryのまだ触れていない楽しみを含め、次回以降はFC・SFC版を主体とした各シナリオ個別の話に触れたいなーと思っている。なんとなくご期待頂けると幸いである。


posted by しんざき at 16:33 | Comment(17) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
お〜!楽しみにしてます♪
マッピングとかやったなあ。懐かしいなあ。
Posted by しょうた at 2005年10月20日 17:31
>しんざきさんへ

こんばんは。
さすがとしか言い様のない細かな記事に脱帽です。
私もゲームの記事でWizは書こうと思ってましたが、かないませんね。

「コントラ デクストラ アベニュー」
byトレボー サックス
何だったんだアレ。

それでは、失礼しました。
Posted by USHIZO at 2005年10月20日 23:34
>しょうたさん
おお、いらっしゃいませこんにちは。しょうたさんもWizardryやる方でしたか。
方眼紙にマッピングは基本ですな。(5はともかく)

>USHIZOさん
お褒めの言葉、ありがとうございます。滅相もございません。
なんとゆーか、どこまで書けばいいか分からなくなって、個人的にはとっとと続きを書きたい気分です。

>「コントラ デクストラ アベニュー」
>byトレボー サックス

Wizardryには、「なんとなく謎っぽくみえる」というだけの理由で追加されたメッセージも結構ある様に思います。
Posted by しんざき at 2005年10月21日 18:22
>「コントラ デクストラ アベニュー」
>byトレボー サックス

コントラ、デクストラはラテン語で、コントラは「右」デクストラは「〜の反対」というような意味らしいです。
アベニューは英語で「大通り」
特に、南北に走る通りをアベニュー、東西に走る通りをストリートといいます。
つまり、シュートで落ちたときに、右のテレポーターには乗らず、北に進めってことですね。

サックス(SUX)はsucksの略で、最低だ、とか、くそったれ、というような意味ですね。

Posted by 通りすがり。 at 2005年10月21日 23:28
↑の通りすがり。さんへ

こんばんは。そうだったんですか!!
15年以上前からの謎が解けました!ありがとうございました!

私は狂王トレボーとワードナが共謀して冒険者に試練を与えて、
もっとすごい敵に立ち向かわせようとしているのでは、とか
勝手に想像してしまってました。

それでは、失礼しました。
Posted by USHIZO at 2005年10月22日 01:40
はじめまして。よく拝見させていただいております。

WIZ経歴、ワタシもほぼ同じくらいなので「ああ、あのころあのころっ」とあっというまに時代がすっとんでしまいました。FC版にて末弥純描く「どうかしたんじゃないか」ってなガチンコモンスター絵にひっくり返った時代でした。

日本語訳文に注目にされるあたり、流石の慧眼ですなあ。確かに、 *おおっと* とか ?ぶき とか、ひらがなと記号のアンサンブルが「…このゲームは一味違うのじゃぜ?」という雰囲気たっぷりでがんした。

はい、以降も楽しみにしつつ、いしのなかに帰ります。
Posted by 通りすがりおやじ at 2005年10月22日 11:24
末弥純氏の美麗な絵がドットで再現されていて、
しかもBGMが壮大優雅極まりない。
FF3とかそっちのけでやりこんでいました。
ターボファイルは必須でした。

何故かWiz1だけ見つからなくなりました。
マロールで石の中に入ったのかもしれません。
リルガミンサーガはオートセーブじゃないから、
なんだか気分が萎えてしまいました。
BGMも変わってしまっていて残念でした。

独り言的で失礼しました。
続きを楽しみに、お待ち申し上げます。
Posted by さぼりやさん@面影屋 at 2005年10月22日 23:43
偶然通りかかったので・・・

wizに問わず、どうしてもSFCをプレイしている
人が多すぎるせいか、なぜかこういったところでPC
版が語られることは少ないようですね。
(それでもWiz好きとしては話題になるだけでも
うれしいのですが)

やはりWizといったら英語名ですね。
未だに呪文名とトラップのスペル入力できますから。
(戦闘の監獄?えっと・・・)
TVゲーム系の方には恐縮ですが、英語名のスペルや
アイテム名も採用してほしいものです。
(どうもSFC版のアイテム名には違和感が・・・)
Posted by 歩行者 at 2005年10月23日 00:27
>通りすがりさん
コメント&情報ありがとうございます。
トレボーサックスは、4ではとんでもねえリドルに使われたりしていましたね。

>USHIZOさん
>私は狂王トレボーとワードナが共謀して冒険者に試練を与えて、
トレボーとワードナが同一人物だ、とかのネタもありましたね。

>通りすがりおやじさん
コメントありがとうございます。

>FC版にて末弥純描く「どうかしたんじゃないか」ってなガチンコモンスター絵にひっくり返った時代でした。

末弥氏の絵はホントに凄かったですねえ。アレをドット絵で打つ方も大変だったでしょうけど。
あれのおかげで、不確定名にも味が出ていました。

>「…このゲームは一味違うのじゃぜ?」という雰囲気たっぷりでがんした。
あのセンスは真似出来ねえ、と今でも思います。

Posted by しんざき at 2005年10月23日 00:54
>さぼりやさん
コメントありがとうございます。

>リルガミンサーガはオートセーブじゃないから、
>なんだか気分が萎えてしまいました。

あれだけは、なんとゆーか、やっぱ醍醐味が足りませんよね。まあ、CD媒体の宿命ってこともあるんでしょうが。

>しかもBGMが壮大優雅極まりない。
今でも曲だけで#2が出来ます。

>歩行者さん
コメントありがとうございます。

>なぜかこういったところでPC版が語られることは少ないようですね。

んー、こういったところといいますか、このブログに関していえば扱ってるテーマが専らFC周辺なので。ちょっとPCゲームはコアから外れている様です。AVGはそこそこやったんですが。

>TVゲーム系の方には恐縮ですが、英語名のスペルやアイテム名も採用してほしいものです。
コンフィグ表示で一括解決。(5は無理でしたが)
Posted by しんざき at 2005年10月23日 00:57
初めまして。しること申します。WIZと聞き思わず書き込んでしまいました。FC版といえば、当時のメディアのハマリぶりも素晴らしいものがありましたね。
「隣り合わせの灰と青春」とか
「ウィザードリィ友の会」とか
作家でも相当なハマリぶりの方も多く、火浦功氏とか押井守氏(映画アヴァロンはガチ)とか……
当時中学生だった私も含め中毒者も多く、相当に業の深いゲームでした。
続くエントリも楽しみにしております。
それでは。
Posted by 汁粉善哉(しるこ) at 2005年10月23日 10:30
その昔、PCでWIZ#1〜3を楽しんだ者です。
上の方も書かれていましたが、今でも罠のスペルを指先が覚えています。
特に深層になれば”ALARM”が多かったように覚えています。
Posted by WIZしか知らなかった頃 at 2005年10月23日 17:29
>汁粉善哉さん
コメントありがとうございます。

「隣り合わせの灰と青春」は、ホント凄い影響力でしたね。あれでWIZの創作を始めた人も数知れず、とか。酔いどれの墓標とか。

>火浦功氏とか押井守氏(映画アヴァロンはガチ)とか……
火浦さんは、「放課後の経験値」のネタっぷりが忘れられません。

>WIZしか知らなかった頃さん
コメントありがとうございます。
最強呪文は「t」ですね。
ALARMでポイズンジャイアント5体に先制された日にゃぁ。

Posted by しんざき at 2005年10月25日 00:23
初めまして、こんにちは。ちとお邪魔いたします。

>>リルガミンサーガはオートセーブじゃないから、
>>なんだか気分が萎えてしまいました。
>
>あれだけは、なんとゆーか、やっぱ醍醐味が足りませんよね。まあ、CD媒体の宿命ってこともあるんでしょうが。


そんな貴方にサターン版リルガミンサーガ。オプションでオートセーブ設定可。私にとってのWizardry標準。
……ちょっと重くなるのが玉に瑕ですが。
Posted by 紫しメジ at 2005年11月11日 10:19
>紫しメジさん
コメントありがとうございます。

>……ちょっと重くなるのが玉に瑕ですが。
うちのサターンの場合、パワーメモリーを何度変えてもさくさく壊れる(多分三つくらい壊れた)んですが、アレはマンフレッティの呪いか何かですか。

やっぱ、Wizardryには「取り返しのつかなさ」みたいなものが必要ですよね。
Posted by しんざき at 2005年11月11日 16:22
間が空いた今になってこんなことを書くのをお許しを。

>うちのサターンの場合、パワーメモリーを何度変えてもさくさく壊れる(多分三つくらい壊れた)んですが、アレはマンフレッティの呪いか何かですか。

うわー済みません、釈迦に説法でしたー。
パワーメモリーについては色々怖い話を聞くのですが、何故かウチのには致命的なエラーが全然起こらないのが不思議。LA-LAの祝福か? それともこれからまとめて起こるのか?

とまれ、失礼いたしました。
Posted by 紫しメジ at 2005年11月13日 12:58
>紫しメジさん
>うわー済みません、釈迦に説法でしたー。
いえいえ、とんでもありません。サターンは確かにステキハードなんですが、私の場合パワーメモリーの不具合があまりに多かったんで、殆どダライアス外伝とD&Dの専用機と化していたのが惜しすぎるところでした。

っつか、ドラゴンフォースってゲームでクリア直前データがサクっと消えたのが未だにちょっとトラウマなんですが。
Posted by しんざき at 2005年11月14日 10:31
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