前回のエントリーで、まずWizardry全般の共通点のお話を書いた。ここからは各論というかなんというか、ワードナがどうとかトレボーがどうとか、ポイズンジャイアントふざけんなボケとかマイルフィックだけはガチとか、そーゆー話に移りたいと思う。
前回の経歴を見て頂けば分かる通り、私の話は基本的にFC版に準拠しているのでご承知おき頂きたい。
・ファミコン初の年齢推奨ソフト。
多分だけど。(注:ちゃんと調べてない)
「Wizardry」。1987年12月22日、アスキーより発売。移植を手がけたのは、かの「ゼビウス」などの製作者として知られる遠藤雅伸氏の率いる「ゲームスタジオ」だった筈である。
およそ、PC畑RPGのファミコンへの移植作としてはこれ以上ない完成度だったと言っていいだろう。元々のシンプルさ故に性能的に無理がなかったということも大きいが、ファミコンという媒体向けにカスタマイズされたその移植方向は、まさに「最適化」というにふさわしいものだった。
コマンド入力方式を採用。迷宮描写は線画・グラフィックの選択が可能。3音階を駆使した「大人の」曲調。イラストレーターには末弥純氏を採用し、その魅力的な絵柄をドット絵職人が性能の限界まで再現する。それがファミコン世界に現れた「Wizardry」の世界であり、その一つの敷居が「13歳以上推奨」という注意書きだった訳である。
・迷宮に放り出されたファミコンユーザー達よ。
確かにどっかの雑誌で読んだ覚えがあるフレーズなのだが、「ポートピアの最後の迷路に敵が出てくる様なゲーム」とか書かれていたのを見た覚えがあるのだが、お前ちょっとそこ座れ。
いや、まあ、実際1987年という当時はよーやっとファミコン少年達が「RPG」というジャンルに慣れ始めた頃ではあり。「女神転生(1987.9)」や「ディープダンジョン(1986.12)」の先駆けがあったとはいえ、まだまだ3Dダンジョン探索型RPGというものはもの珍しいジャンルだったのだろうとは思う。にしてもこの紹介はどうかと思うが。(余談になるが、FC版ウィザードリィの発売は初代「ファイナルファンタジー」発売の4日後である)
なにしろWizardryは「くびをはねられた!」の世界である。街の人などどこにもいないし(買値の二倍で商品をさばく強欲商人ならいるが)、3歩進めば入り口は見えなくなる。当初のHPは一桁しかないし、宝は罠を外さないと手に入らない。13歳の年齢推奨こそあれ、やはり敷居は高かっただろう。面白さが分からない内に挫折した、というプレイヤーも少なくはなかった筈だ。
だが、コツをひとたび飲み込んだユーザーのはまる速度は速かった。馬小屋に泊まってレベルを上げるというコツを身につけ、使える呪文が増えていく喜び、新しい武器を入手する楽しみを味わっていくにつれ、ユーザーはどんどんコアファン化していったのである。マーフィーズゴーストを虐殺し始める頃にはそろそろ後戻り出来ない場所にいた、と考えて間違いないだろう。
Wizardry最大の楽しみ…「手探りの進行と、徐々に広がっていく行動範囲」。それを味わえた人は幸いだ。方眼紙にマップを書いて、必須アイテムを集めつつ迷宮を埋めていく内に、人はだんだんWizardry中毒症状に冒されていくのである。
・卒業式は試練場。
そして、Wizardry世界にはまり始めたプレイヤー達が、「初心者卒業」として提示されるのが中盤の山、4Fの「モンスター配備センター」である。
迷宮の下層に進む為の通行証アイテムを手に入れる為、必ず誰もが通らなくてはいけない突破イベント。ここまで突破してきた猛者達が、レベル不足という厳然たる事実をつきつけられる、その相手は戦士やメイジやハイニンジャ。ここを潜り抜けることが出来れば狂王トレボー(製作者Robertの逆読み、もう一人はAndrew)からお褒めの言葉を頂け、晴れて5階以降への通行証となる「ブルーリボン」を入手することが出来る訳である。
イベントとしての意味はともあれ、大体この辺で「Wizardry初心者」だったファミコン少年は姿を消し、一人のWizardryファンが出来上がる、と考えて良かったろう。このゲームは、まさにWizardryファンの為の「狂王の試練場」だったのだ。
・Wizardryにおけるラスボスの存在意義とは何か。
事務所のおっちゃんです。
手前味噌だが、私はちょっと前こんな記事を書いた。
レトロゲーム万里を往く その27 〜エンディングの呪縛・3〜
こーゆーゲームは勿論「クリア」を目標にすることなく遊ぶことになる訳で、それで楽しいのか?といわれると、これが実に楽しいのである
それは何故かというに、ゲームをやる目的自体が「クリアすること」にはなかったから、ということに他ならない。
この世に遍くありとあらゆるRPGの中で、「Wizardry」程「クリアとか割とどうでもいいゲーム」を私は他に知らない。
ゲームの楽しさにはパーセンテージがある。レベル上げの楽しさとかストーリーの楽しさとか。アイテム集めの楽しさ、点数稼ぎの楽しさなんてのもあるだろう。その内「クリア比重」とでもいうものが、「クリアする、エンディングを見ることによって得られる楽しさ」というものである。
Wizardryにおける「クリア比重」はどんなものかというと。ドラクエやウルティマはもとより、下手するとドルアーガやハイドライドみたいな最初期のRPGや、一部のネットゲーすら圧してぶっちぎり最低水準ではなかろうか。これは、「クリア」という開発者が用意した道筋以外の遊び部分が、Wizardryにおいては途轍もなく広大である、ということを意味している。
Wizardryの凄みというのは、根底にあるシンプルさにあると私は思っている。自分のキャラクターは文字と数字の集積。迷宮には壁と床が広がるのみ。これら最低限の情報と、ごくシンプルなゲームシステムが組み合わさった時、プレイヤーには無限の「想像の余地」が残される。多分これが、Wizardryの「道筋と関係のない面白さ」の源泉ではなかろうかと私は思う。
当ブログからリンクしている、「Curry Diary」様が丁度この辺りの話を書いて下さっている。ちょっと引用させて頂きたい。
【長文】Wizardly 狂王の試練場(FC) (CURRY DIARY (・x・)様より)
名前は、種族は、属性は、レベルは、年齢は、所持アイテムは…?
これら全ての情報はユーザーの想像力によって、キャラクターのイメージとなって還元されます。
これあってこそ、「どこまで行っても終わらない」レベル上げとアイテム集めが輝くんではないかと。ここまで徹底的に「好きな様に想像出来て、好きな様に遊べる」RPGなどそうザラにはあるまい。
逆に、RPGにストーリーとエンディングを強く求める人には、正直向いていないゲームではあるかも知れない。
・ワードナよ永遠に。
ワードナはWizardryのラスボスである。なんか居室に「邪悪な魔術師ワードナの事務所」とか案内板を掲げていたりたまに友好的だったりするお茶目なラスボスではあるが、アンデッドの王であるバンパイアロードを引き連れ、最強呪文である「ティルトウェイト」を連発し、その存在感は圧倒的だ。Wizardryの象徴と見られる向きすらある。
しかしそれでも死ぬ。結構あっという間に死ぬ。大抵の場合戦士の二、三撃でお供のバンパイアロードよりも先に死ぬ。
十階(の内五階分くらい)に及ぶ長い探索の果てに、割と一瞬でボコられるラスボス。最強の存在感と最弱の脆さを兼ね備えたこのラスボスがWizardryの象徴となることは、まさに必然なのである。これこそ、プレイヤーにとっては「エンディングなんかどーでもいいからさっさと手裏剣を探さんかい!」という一つの天啓なのだから。
関係ないが、ワードナの事務所には何故かいつ行ってもバンパイアロードとバンパイアがひしめいている。盟友バンパイアロードがワードナを歴訪していた、という話もあったが、「事務所に入るとたこ殴り」という構図はちょっとある種の興行団体の皆様を思い浮かばせるところがある。構成員が大分血色悪ぃとはいえ、指定団体ワードナ組、というのもそれなりに風情があって良いであろう。というか4コマのネタか何かになっていそうな気がする。
・そしてWizardryの世界は続く。
ワードナをボコろーが地図を完成させようが、レベル上げとアイテム集めの虜になった冒険者の姿はいつまでも消えず、Wizardry世界に囚われた人々も今もって多い訳であるが。
例によって長くなったので、取り敢えず今回はこの辺りで一旦区切りたい。次回は、別にPC版のシナリオ通りという訳ではないが、「Knight of Diamonds」FC版のWizardry3の話に入ろうかと思う。実は筆者が一番最初に触れたWizardryはこれだったりもし、思い入れもかなり深い。
入らなくてもいいフロア、ていうか入るとエライ苦労するだけのフロアがあるってのも意外でしたなあ。ヘンなアイテムも然り、こういった「キツキツに作られてない感じ」が、ユーザの想像力を好きにできる領域でしたねえ。
まさか引用してトラバをいただけるとは思ってなかったので、
帰宅するや一気に興奮して鼻血吹きました(ガチで)
残業の午前様の疲れも取れましたええ。
FC版1はワードナ弱かったですねぇ。
マイルフィック(=パズス)とバンパイアロードは強烈でした。
そういえば今度NintendoDSで発売予定のWizはキャラ顔グラ付、
宝箱罠解除がタッチペンのミニゲーム風と、今からクソゲーの
匂いがプンプンしてて激しく不安だったりします。
それでは、失礼しました。
>入らなくてもいいフロア、ていうか入るとエライ苦労するだけのフロアがあるってのも意外でしたなあ。
どこかで聞いた話なんですが、地下4Fまではトレボーの領域で、5階から下が本当のワードナ領域なんだとか。いや、9・10階しか要らないんですが。
>おさかなさん
>とゆーわけで、LinuxZaurusにFCエミュ入れてFC版Wiz1で遊ぶオレがいるのでした。
なんとうらやますぃ。出先でティルトウェイトですか?
>USHIZOさん
>帰宅するや一気に興奮して鼻血吹きました(ガチで)
おわ。大丈夫ですか。いえ、喜んで頂けたら幸いですがそんな大したことでは。
>マイルフィック(=パズス)とバンパイアロードは強烈でした。
マイルフィックはもう、存在感が違いましたね。
フラック級でした。
>宝箱罠解除がタッチペンのミニゲーム風と、
うわぁ。
コメントありがとうございます。
全世界に中毒症状の人が何人いるか分からないゲームですよね、これも。
いや、Wizardry全体の傾向からすれば、むしろ外伝2,3の方が例外的なんじゃないかと思います。他作品では大抵ラスボス弱い様な。