2008年03月19日

レトロゲーム万里を往く その77 ザナック

さてここで問題です。あなたにとって、「ファミコン最高のシューティング」とは何でしょう?


何度か似たようなことを書いているが、それが何であれ、「最高」を決めるのは意外に難しい。「最高のゲーム」などというテーマではより一層その難しさに拍車がかかり、「人の数だけベストゲームがある」というテーゼはあながち誇大でもないんじゃないかと思わせてくれる。

例えばゼビウスやグラディウス、あるいはツインビーといった、ファミコン初期の偉大な移植作を挙げる人がいるかも知れない。スターソルジャーやへクター'87といったキャラバン系シューティングも名前が挙がるだろうし、「烈火」やオーバーホライゾンといったFC後期のタイトルが出てきても不思議ではない。

スカイキッドやイメージファイト、B-WINGやエクセリオンといったタイトルに入れ込んだ人もいるし、アーガスやテラクレスタ、ヴォルガードII辺りも当然アリだろう。ファルシオンやコズミックイプシロンの様な擬似3Dシューティングが候補にあがる可能性だってある。私にとっても、「ファミコン最高のシューティング」というテーマで一つのタイトルを選ぶのは結構難しい。

が、「ファミコン最強のシューティング」という言葉を使うとしたら、私は一つのタイトルを迷いなく挙げることが出来る。

「ザナック」である。

ザナック。縦スクロールシューティング。1986年11月、コンパイルよりディスク版が発売。これに前後してMSX、MSX2、海外NESなどでも同タイトルが発売されており、その当初から複数のハードでの展開が進められていたことが分かる。

ディスクシステムという媒体、しかも片面しか使用していないという省エネ容量にも関わらず、その完成度は常識外れに高かった。ザナックというと必ず語られる高速スクロールから、完成されたパワーアップシステム、計算され尽くした難易度とランク調整システム(人工知能システムと呼ばれていた)、操作感からグラフィックや音楽に至るまで、どれをとってもその密度は群を抜いていた。

業務用からの移植作が中心であったファミコンシューティング業界に、突如叩き込まれた超絶完成度。後の縦スクロールSTGにも多くの影響を与えた、とまで言わしめるゲーム全体の質の高さが、私がこのゲームを「最強」と考える所以である。


ゲームの概略については例によってWikipediaが詳細である。

ザナック (シューティングゲーム):Wikipedia

youtubeで画面を参照することも出来る。この曲、一度脳内再生が始まるとなかなか止まらないから困る。

Zanac, Part 1

リンクは張らないが、検索すると12面の動画も挙がっていたので、お時間がある方はどうぞ。「超高速スクロール」という言葉が誇張でないことが分かると思う。

こちらでは、各面のグラフィックが紹介されていた。ご参照頂ければと思う。

夢の島



さて、ゲームの話にいこう。


・そこにあったのは、「でたらめな爽快感」。

ザナックというゲームを一言で表現すると、「どう考えても早過ぎた筈なのに、何故か完成してしまったゲーム」という言葉になるんじゃないかと思う。

ゲーム業界、特にファミコン黎明期〜黄金期のタイトルに、「斬新なゲーム」というのは星の数程ある。ディスクシステムなど、一時期は「ゲームジャンルの実験場」とでも言いたくなる程の実験作の嵐である。

しかし、「斬新な上に完成度も高いゲーム」というのはとんでもなく希少である。当時、常に「ハードの限界」と戦い続けなければならなかった開発者にとって、「新機軸」と「ゲーム自体の面白さ」を両立させるのは至難の業だった筈だ。当時、どれだけ多くの「実験作」「意欲的な新機軸」が、「なんか奇抜なだけのゲーム」として葬られていったことか。


そんな中、ザナックに詰め込まれた新機軸の山は、当時のシューターの度肝を抜いた。

7種類の使い分けが可能で、しかもそれぞれに成長するパワーアップシステム。それに基づいた戦略性。スクロールの速さの緩急。処理落ちなど知ったことか、と言わんばかりの弾幕と弾避け、ボタン押しっぱなしでのソフト連射と撃ち込みの爽快感。

弾の連射数による難易度調整システムは後の「ガンフロンティア」や「バトルガレッガ」を想起させるし、オールレンジキャノン(自機の進行方向に発射されるサブウェポン)の戦略性はイメージファイトのポッドを連想させる。後の数々の名作に流れ込みさえする、その様々な「新要素」のてんこもりは、本来なら破綻して当然の密度だった筈だ。言ってみれば、ザナックは「5年は早い」ゲームだったのだ。


ところが、当時のコンパイルのスタッフは、驚くべきことにそれを全て整合させてしまった。

上記全ての要素が、一つとしてゲームを破綻させることなく、ディスクの片面という極めて限定された容量内に収まっているという事実には、もはや驚嘆するしかない。こと容量については、ヘタすると現在でも再現不能じゃないだろうか。当時のメインプログラマーには、一体どんな脳みそが搭載されていたのだろう。

グラフィックからBGMまで全て込みで、コンパイル職人芸の粋と言うべきだろう。同社が「ぷよぷよ」の成功後に辿った変遷については、残念極まると言う他ない。


個人的な「ザナック」の思い出について言えば、やはりパワーアップシステム、及びそのレベルアップについての記憶が濃い。どの武器をとっても使い道があるという絶妙なバランスが、ザナックの凄みと言っていいだろう。当時は、よく5番のリワインダーを使いこなせなくて自爆したり、3番(回転弾)の安定度に油断し切って自爆したり、1番(貫通弾)の使い所が良く分からなくって自爆したりしたものである。

初めてレーザーをとった時にはその威力に酔ったものだし、慣れてくると実は0番(オールレンジ)が一番安定してるんじゃねえかなあ、とか思ったものである。この辺りの、「どの武器を使うかあれこれ迷わせてくれる」というゲームは、現在でもなかなか多くはないのではあるまいか。


ファミコン黄金期のオーパーツ、「ザナック」。その爽快感は、今現在でも鮮烈である。



・ファミコンシューティングの特殊性。

ちょっと話は変わる。ファミコンにおけるSTGというジャンルについて触れてみたいと思う。


ファミコンのシューティングというのは、市場としては割と特殊だ。当時ゲーセンでは花形であったシューティングというジャンルだが、ファミコンにおける影はそれ程濃くない。ファミコンにおけるSTGというのは、その大半を業務用からの移植作が占めており、「ファミコンオリジナル(業務用からの移植ではない)」という冠がつくSTGははっきりと少数派な筈だ。勿論、その少数の中にはザナックやファルシオンの様な名作が含まれている訳だが。

他の様々なジャンルにおいては「巨大な実験場」であったファミコンというハコが、STGにおいては徹底的に受身なのである。これ、何でだろう。

多分理由は色々あると思うのだ。業務用でSTGが流行っていた故に、リソースが移植に裂かれざるを得なかった、というのも一つの理由かも知れない。グラディウスの様な超名作が発売された為に、オリジナルSTGではなかなか勝負出来なかった、というのも一つなのかも知れない。ハードの性能的的な問題も一つなのだろう。


無数にあり得る理由の中で、私が一つ思いつくのは、「任天堂の不在」である。


特にファミコン黎明期からプレ黄金期において、ファミコンというハードを引っ張ったのは任天堂自身だった。特に強かったのがアクション。アイスクライマーやバルーンファイト、後には言わずと知れたスーパーマリオの様な、良質なタイトルをばんばん出していたのが任天堂であり、ファミコンというハードの最強の牽引力でもあった。

ところが、ふと立ち止まって考えてみると、その中に「シューティング」という文字がない。


任天堂のシューティング、って何か思いつくだろうか。


もしかすると私が失念しているだけかも知れないが、初期の「ワイルドガンマン」「ホーガンズアレイ」の様なガンシューを別にすれば、「任天堂が出したファミコンのシューティング」というものを、私は一本も思いつかない。ある程度以上知名度がある作品ということになると、ヘタをするとSFCの「スターフォックス」が発売されるまで、任天堂は一本たりともSTGを作ってないんじゃないだろうか。コナミやナムコやタイトーが、当時がりがりとSTGを開発していたことを考えると、これが私には結構意外に思える。

当時の任天堂がSTGというジャンルに魅力を感じていなかったのか、あるいは単に得意分野ではなかったのか。これ、追いかけてみると結構面白そうなテーマに思える。その内また調べてみようと思う。



ということで、大概長くなった。今回の万里はここでしめたい。

次回予定はまだ未定だが、多分ファミコン中期のシミュレーションになる気がする。


posted by しんざき at 17:01 | Comment(10) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
ザナックと聞いて来ましたよ!

PSでリメイク+旧作で出たザナザナもやったよ!

ザナザナの同時協力プレイもイカしてると思ったよ

ザナックはホント完成度高いイワユル不朽の名作と言うヤツなんじゃないだろうか?
Posted by greed at 2008年03月19日 18:50
>greedさん
あーーこんにちはご無沙汰してます。どうもmixi幽霊で。

ザナックは冗談抜きで、今のSTGと比べても勝負出来るくらい出来が良かったと思います。
Posted by しんざき at 2008年03月19日 18:57
たまに遊んでは60連仕込んでランク上げまくりの
敵ぶちのめしまくりの残機やられまくりの
バカ丸出しパワーゲームをやっては
神ゲー! これ神ゲー! とアホみたいに喜んでおります。
魅力のひとつには、このような、
パターン化不要(あるいは、できないと言えるかもしれません)
なゲーム展開もあると思います。
Posted by 穴 at 2008年03月21日 05:28
>任天堂のシューティング
ドンキーコング3。私はアーケード版しかやったことがないので個人的にはファミコンの STG という気がしませんが、とりあえず。
Posted by 桝田道也 at 2008年03月21日 09:51
自分も「ドンキーコング3」はシューティングではないかと思ってました。
元アーケードですが、ファミコン版もそれなりに良くできた佳作でしたよ。

ザナックは確かにファミコン最強のSTGにふさわしいと思います。
高速スクロールや500円でディスク片面しか必要としないリーズナブルな仕様、FCとは思えない弾幕量に自動難易度調整など、ここまで噛み合ったゲームは他には無いと思いますね。

個人的には、敵弾を全部吸収する代わりに体当たりで破壊できる「カルラ」という敵の発想がすごく斬新だと思いました。こういった仕様は、今のゲームにも滅多に見られませんから。

ザナック×ザナックは発売当日に買ったのですが、シューティング下火になってたこともあって、沢山余ってたのが印象的。発売日が同じだったメタルギアソリッド2とは人付きが対照的だったのは忘れもしません(笑)
Posted by K-HEX at 2008年03月21日 12:48
はじめまして、初コメントさせていただきます。

ザナックは思い出深いですねー。当時ゲームに興味の無かった父親でさえはまっていた脅威のゲームとして印象深いです。そして僕はあまりプレイできなかった(笑

ザナ×ザナは当時お金が無くて買えなかったんですが、今では商品自体が少なくてなかなか手に入りませんね〜。

しかしWiiのバーチャルコンソールで復活したので最近はサルみたいに遊んでますね。やはり面白いです。
Posted by 無傷の黒 at 2008年03月21日 18:31
当時、アーケードで二人同時プレイして遊んだSTGは SON SON、EXED EXES くらいでした。
 アクション系で、チャイニーズヒーローという作品は1コイン二人同時プレイが可能で、友達と遊ぶときは、そっちばっかりw
            一人で遊んでも楽しい♪二人同時プレイなら○倍以上楽しい♪♪

ゲームは1980年代に遊んでただけですから詳しくありませんが、相乗効果が10倍以上のSTGは作れないものなのでしょうか?

 任天堂さんの作品が少ない理由はこのあたりにあるような気がします
Posted by ROM君 at 2008年03月22日 08:53
こんにちはです。

私もザナック好きでした。
一回だけノーコンティニューでクリアできた事があるんですよ。
高速スクロール面での、空中大型艦との戦いとか、
あの一種独特の緊迫感が良かったです。


余談ですが、ザナックはDISK片面のゲームだったので。
イマイチ面白くなかった(難易度が高かった)
STG「ガルフォース」のB面にライティングしてもらって、
A面でガルフォースのデモだけ見れる、というアホなDISKを作った思い出があります。
Posted by あーく at 2008年03月22日 13:37
>ドンキーコング3
あ。そういえば、これがSTGという意識がありませんでした。いわれてみると、ゲーム的にはインベーダーの眷属ですよね。
Posted by しんざき at 2008年03月24日 23:43
はじめまして

任天堂のシューティングといえばゲームボーイのソーラーストライカーがあるのではと

ザナックは後半のステージからのコンテニューが強制的に10面にもどされる仕様(コマンドで同面コンテ可)だったのでノーコンテクリアに必死でした。

サブウエポンも2番を除けば最初は微妙でもフルパワーにするとデタラメ性能になるのでFCで珍しい弾幕垂れ流しに当時の自分も脳汁垂れ流しでした。

Posted by stinger at 2011年06月17日 13:47
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