すっごいシナリオでした。
当初スティルインラブについては、単純に「ウマ娘でここまでストレートにヤンデレ風味の子は珍しいなあ」と思っていまして、その興味が主で引きに行ったんですが、これについては私の目が曇っていたと言わざるを得ません。
スティルインラブは、確かに「ヤンデレ」のフォーマットに則ったキャラクターが基盤になっているとは思うのですが、彼女のシナリオは「ヤンデレ」というシンプルな言葉でくくれるようなものではありません。「ヤンデレ」の向こうにある、もっと別の何かです。
一応、ネタバレなしの範囲でスティルインラブの育成シナリオについて簡単に書いておくと、
・好みは分かれそうですが、個人的には超良かったです
・ある程度重たいシナリオが好きな方であれば、かなりの確率でお好みに沿うと思います
・ウマ娘における私の好み上位のシナリオが、サクラローレル、アドマイヤベガ、キングヘイロー、ファインモーション、アストンマーチャンあたりなんですが、今回スティルシナリオがすごい勢いで突っ込んできました
・必ず「ウマ娘のキャラストーリー」を4話まで読んでから育成を始めるべきです
・できれば温泉旅行も気合いで引くべきですちょうど温泉旅行の確率が上がるキャンペーンやってるので
・「スティルインラブ」の名前通りのシナリオでした
・ややホラーテイスト・およびホラー的な演出があります(アドマイヤベガより若干ホラー感強い程度)
・スティルの私服が大変かわいいです
・史実上当然ですが、アドマイヤグルーヴもがっつりシナリオに絡んできてとても良い
・あと、レースで登場するカレンブーケドールが異様な存在感
・ある程度重たいシナリオが好きな方であれば、かなりの確率でお好みに沿うと思います
・ウマ娘における私の好み上位のシナリオが、サクラローレル、アドマイヤベガ、キングヘイロー、ファインモーション、アストンマーチャンあたりなんですが、今回スティルシナリオがすごい勢いで突っ込んできました
・必ず「ウマ娘のキャラストーリー」を4話まで読んでから育成を始めるべきです
・できれば温泉旅行も気合いで引くべきですちょうど温泉旅行の確率が上がるキャンペーンやってるので
・「スティルインラブ」の名前通りのシナリオでした
・ややホラーテイスト・およびホラー的な演出があります(アドマイヤベガより若干ホラー感強い程度)
・スティルの私服が大変かわいいです
・史実上当然ですが、アドマイヤグルーヴもがっつりシナリオに絡んできてとても良い
・あと、レースで登場するカレンブーケドールが異様な存在感
以下、スティルインラブの育成シナリオについての感想をつらつらと書き綴りたい次第で、どうしても多少のネタバレは発生せざるを得ません。
そのため、スティルインラブの育成シナリオ(+温泉旅行)未読な方で、少しでもスティルインラブを引く可能性がある方には、これ以降を読み進めることをお勧めできません。
で、以下ネタバレありのスティルインラブシナリオについてなんですが、
おっっっっっっっっっっもかった。
とにかく「ウマ娘でこれをやるのか」という印象だった。
キャラシナリオの最初で、トレーナーが何やら剣呑な状況にあるということが示唆されるのですが、あれがもう「全て終わった」後の状態。つまり、キャラシナリオの最初が「エンディング後」であるということは、スティルインラブの育成シナリオ全体が、「スティルと添い遂げることを選んだトレーナーの、途切れ途切れの回想」である、ということなんですよね。
育成を最後まで進めると「ああ、そういうことだったんだ」というのが分かる。こういう演出、個人的には大好きなんですが、ウマ娘って時々変化球を投げながらも基本的なフォーマットはすごく堅牢に作られている印象だったんで、そこをぶん投げるシナリオを4.5周年で、しかもスティルインラブというウマ娘でお出ししてくるウマ娘開発陣には、敬意を表さずにはいられません。
スティルインラブのシナリオ、最初遊んだ時は「ウマ娘でこれをやるのか」と思いました。ウマ娘の様々なシナリオの中でも極めて特異なシナリオだと感じたのですが、何故そう感じたのかというと、それは「戻ってこない」「そしてそれが正しい」シナリオだから、だと思います。
今までの育成ウマ娘のシナリオでも、重たい、あるいは通常とは離れた特殊な状況になるストーリーはありました。例えばアドマイヤベガとか、ナリタタイシンとか、アストンマーチャンとか、あるいはファインモーションとか、セイウンスカイとか、ネオユニヴァースとか。
ただ、彼女たちは、今までのシナリオでは常に「戻ってきた」。たとえ何かしら重い状況になっても、多くはトレーナーの力、あるいは友人たちの助力で、あるいは快復し、あるいは元の幸せを取り戻し、そしてレースに邁進していた。時にはほろ苦い展開や、どこか物寂しいエンディングもありましたが、殆どの場合、きちんと「現実世界でも幸せと思えるような幸せ」をつかんで、そして走り続けてきたわけです。彼女たちは皆走るのが好きで、そして走り続けることが幸せだった。
ウマ娘には、モデルになった競走馬という「史実」があります。そして、シビアな競走馬の世界ではハッピーエンドもあれば悲劇もあり、その史実をある程度は踏まえた上でシナリオが描かれる以上、ウマ娘の世界でも、どうしてもシビアな展開はつきまといます。
その上で、そのシビアな結果、あるいは悲劇を塗り替える「幸せなif展開」が描かれるというのは、ウマ娘というゲームの一つの確固たるフォーマットでもありました。
ところが、スティルインラブのシナリオでは、そこが違った。いわゆる「普通の幸せ」の枠を踏み越えてしまった。しかも、スティルとトレーナーが、二人揃って。
今までなら、例えば「踏み越えかけたスティルインラブを、トレーナーの懸命な努力や、ライバルたちとの友情が引き戻す」というシナリオが専らだったところ、このシナリオでは「トレーナーとスティルにとっては、戻ってこないことこそが「愛」であり「幸せ」なんだ」と描写されたわけです。
この、「トレーナーも一緒に踏み越える」というところが、ウマ娘的にはもっとも異質なポイントだと思います。
スティルシナリオは、大きく三段階に分かれています。つまり、
1.「本能」を抑えようとする段階
2.「本能」をコントロールしようとする段階
3.「本能」を解放して、本能と一つになろうとする段階
2.「本能」をコントロールしようとする段階
3.「本能」を解放して、本能と一つになろうとする段階
大雑把にいうと、1がジュニア期、2がクラシック期、3がシニア期になります。厳密にいうとちょっと違うけどまあいいや。
スティルにとって、「本能」は恥ずべきもの、隠すべきもの、けれど強敵と戦い、打ち倒し、トレーナーに勝利を捧げるためにはどうしても必要なものでもありました。トレーナーにとって、スティルの「本能」は、自分が魅せられたものでもあり、どうしても惹かれてしまうものでもありました。
クラシックで三冠を達成したスティルは、一度は「本能」を失ってしまいます。ただ、憧れていた穏やかな生活を手に入れて、しかもそれでもトレーナーが一緒にいてくれるということをバレンタインイベントで確認して、スティルは一度は「走るのをやめる」ということを選択しようとします。
また、このバレンタインイベントが滅茶苦茶幸せそうなんですよね。トレーナーと同じように、プレイヤーも「ここで終わるならそれもハッピーエンドだな」と思えるくらいに。
分岐点は、金鯱賞でした。ここでスティルは、トレーナーの笑顔が、レースで走っている自分を見る時と今では違うということに気付いてしまい、「やはり走り続ける」「本能を解放する」ということを選択します。ここから、二人にとってはどこまでも正しい、けれど普通の尺度からすれば何もかもが狂ったルートが始まってしまうわけです。本能を受け入れれば受け入れるほど、一般的な「幸せ」から遠ざかってしまうということは、「スティルが皆に意識されない」という点でも描写されています。
この辺、育成シナリオ中でも、明確に認識しているウマ娘が三人います。アドマイヤグルーヴ、ネオユニヴァース、そしてメジロラモーヌです。
アドマイヤグルーヴは、もちろんスティルの最大のライバルであり、常にお互いを意識し合っている間柄でもありました。この二人の対比がまた、ことあるごとに強調されるんですよね。愛など要らないと思っている、けれどエアグルーヴという「自分を厳しく愛してくれる人」と出会って、愛を理解するアドマイヤグルーヴ。彼女が夏合宿後、バスの中のスティルとトレーナーを見て「自分との違い」に気付いた時の表情、これもめちゃめちゃいい味出してるんですよ。「みんなどうして、あのひとを忘れられるの」って台詞すっごいよかった。
ネオユニヴァースは、史実でも「二冠をとった後(G1では)勝てなくなり、怪我が元で引退してしまう」という点で、スティルと相似した境遇の持ち主でもあり、スティルのルームメイトでもあります。彼女、複数の世界線を認識できるという特性もちでもあり、この結果、スティルの「選択」がもたらす意味にも気付いて、スティルとトレーナーの選択についても警告してくれるんですよね。彼女自身はトレーナーに出会えなかった世界線でもあり、「この先に待つのは……"HPED"じゃない」という台詞、意味が分かったあとだと滅茶苦茶重いです。
そしてメジロラモーヌ。ラモーヌも、このシナリオでの存在感が物凄いんですよね。彼女自身レースへの愛に生きる人で、愛と理性の間で煩悶しているスティルを導き、見届けるポジションでもあった。二人の「愛」の帰結を理解し、哀れみながらも「それも一つのあり方」だと認めるラモーヌは、ルドルフが二人を止めようとした時には、「二人にしてあげなさい」とそれを制止した。この辺、「ウマ娘みんなの幸せという、いわば一般的な価値観保持者の代表格であるルドルフが二人を止めようとする一方、先達のトリプルティアラ保持者だったラモーヌが、スティルのありのままを認めるという構造も、シナリオ的によく出来てますよね。
ともあれ、これらの帰結の果てに、あのトゥルーエンドと、そして温泉旅行での二人の、静かな、余りにも静かなやり取りが展開されるわけです。スティルとどこまでも一緒に過ごせるという幸せ。ただ、トレーナーの「次はどんなレースに出ようか」という一言に、言葉を詰まらせてしまうスティル。みんなに愛されることよりトレーナー一人だけに愛されることを選択して、けれどトレーナーの「普通の幸せ」を失わせてしまったことも認識している、このシーン。
これを読み終わった後でキャラシナリオの一話を読むと、これがまたものすごーーーーーーく重い。ヤンデレなんて通り一遍の言葉ではとてもくくれない、ヤンデレを超えた何かがそこにある。この辺超好き。
今回のスティルのシナリオって、システム的にも今までにないような演出が駆使されていて、
・シニア以降、育成画面が常に紅く暗い雰囲気になる
・一部のイベントで選択のループが発生し、しかもループを続けるごとに文字バケが起きるような演出がある
・本来ならエンディングの直前に配置されている温泉旅行のイベントが、何故かエンディングの「後」に流れる
・本来ならエンディングの直前に配置されている温泉旅行のイベントが、何故かエンディングの「後」に流れる
といった要素。特に温泉旅行については、「二人がたどり着いた場所はここなんだよ」という開発者のメッセージのようで、美し過ぎて文句をつける気が全く起きません、
また、
・基本的にシナリオが一本道で、レースに勝っても負けても一切シナリオが分岐しない(厳密にはちょっとだけ分岐ポイントもあるけれど本筋には影響しない)
という点も指摘できるかと思っており、これについては「育成シナリオ全体が「すでに通り過ぎた過去」であって、もう変えようがない帰結なんだ」ということを表現しているのかなーと思います。
史実では、スティルインラブは繁殖牝馬として、「ジューダ」という仔を一頭だけ残し、病でこの世を去ります。その「ジューダ」とは、ヘブライ語で「神に賞賛される者」という意味。
トレーナーとスティルの帰結の美しさが、こんなところにもあるような気がするんですよね。
長々と書いてまいりましたが、この記事で書きたいのは
・スティルシナリオはめちゃくちゃ良いのでウマ娘をプレイしている皆さんは是非読んでください中距離差しウマ娘としてもとんでもない性能なので損はさせませんあと温泉旅行頑張って引いてください
という一点だけであり、他に言いたいことは特にありません。よろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。






















