2026年07月21日

「マイボディ・オン・ザ・ムーン」を読み終わったのですが……(途中からネタバレあり)

正直なところ「not for me」な作品だな、と感じました。

ただ、どうも読む前の期待値設定というか、「この作品に何を期待するか」を間違った状態で読み始めてしまった可能性があると思っていて、そこを適切に設定していれば楽しめた可能性はあります。

ネタバレなしでざっくり大枠としての感想を書くと、

・「月で見つかった謎の遺物と、その遺物に収められた複数の首のない死体」、という豪快な導入
・上記の死体に関わるSFミステリーの要素ももちろんあるのだが、(ミステリー要素と全くの無関係ではないものの)国際情勢・政治・経済・民族問題・VRなど、様々な問題に話が広がっていき、相対的にSFミステリーの濃度が薄くなっていく
・悪い言い方をすると、SFミステリーを期待して読んでいるとどんどん話のピントがずれていくように感じられる。「読みたいところが読めなかった」という印象
・導入の「月で見つかった死体」という点では、「星を継ぐもの」が非常に強く想起されるのだが、徹頭徹尾SFミステリーだった「星を継ぐもの」に比べ、この作品はどちらかというとスパイ要素の強いサスペンス・アクションに近い
・同じ意味で、この小説に「プロジェクト・ヘイルメアリー」や「三体」と同じような面白さを期待して読むべきではない
・「プロジェクト・ヘイルメアリー」「三体」と並べる形でこの作品を売り出すのは、読者に間違った期待感を植え付けるという点で誤りだと思う
・本筋(である筈)のSFミステリーとしてのストーリーや設定自体は魅力的なので、もう少し話の軸が絞られ、SFミステリーに集中できる作りになっていれば「for me」の作品になっていたかも知れない

大きくは以上です。

以下は話の内容が含まれる批判的な感想になりますので、未読の方にはおススメできません。よろしくお願いします。




・ヂャンミン+イザベラ、コーツ、ミント、ジャムと、4者のキャラクターの視点を全部盛りするのはちょっと欲張り過ぎたのでは?という感想
・一人ひとりのキャラクターは魅力的なのだが、4者がそれぞれ違うジャンルの小説の主人公のようで、話の軸がぶれているように見える、その直接的な原因がこの四者視点であるような気がする
・特にミント+ハルキ組、モーケン族に代表される少数民族問題+VR空間というツールを使うためのキャラクター設定なんだろうけど、どうもこの、「アメリカ・ロシア・中国の大国とその間でもまれる少数民族」というテーマが、「SFミステリー」というジャンルとは根本的に相性が悪いように思えてならない
・例えばハルキのテロ絡みの話は「それで済ませていいのか???」となって、核爆弾絡みの話は「なんでその状況でこれで済むんだ???」となり、SFを味わう上でのノイズになってしまっている気がする
・それに伴い、後半の展開がだいぶ「え、ちょっと、ちょっと待って」となってしまった。アクション要素故の多少の設定齟齬くらいなら許容もできるが、宇宙船発射までの時間制限はちょっと考えただけでも無理があり過ぎだし、「神秘小屋」とのランデブーは「え、え、え??」となってしまったし、そこにミントこと「ベティちゃん」が呼ばれて一役買うところにいたってはさすがに「そうはならんやろ」の塊過ぎた
・ルナボディの設定とそこにまつわる謎解き要素は結構好きなので、そこにもう少しフォーカスしてもらえればなあ、と思うことしきり
・ヂャンミンとイザベラのペアは割と好き。コーツはある程度仕方ないとはいえ、ヂャンミンとジャムが謎解きに奔走するパートはかなり面白かったので、やはり自分にとっては、ミントとハルキ、モーケン族絡みのエピソードが話を味わう上でのノイズになってしまっている感がぬぐえない
・ただ、ヂャンミンについても、最後NASAの管制室襲撃絡みの話についてはだいぶ「そうはならんやろ」となってしまった
・総じて「プロジェクト・ヘイルメアリー」や「三体」を期待して読むべき小説ではない、という感想

大体以上です。よろしくお願いします。
posted by しんざき at 15:30 | Comment(1) | TrackBack(0) | 書籍・漫画関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
単純にやろうとしたことに対して作家の技量が足りていなかった印象。
Posted by at 2026年10月05日 08:23
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