学マスのSTEP4について書きます。ネタバレになるので、未クリアの方には閲覧をおススメできません。ご注意ください。
学マスを遊んでいる時、楽しいながらもほんの少し気になっていることがありました。
それは、言語化すると、「ゲームを始めた当初のコンセプトの、少なくともそのひとつの喪失」です。
もう、プレイヤーの中には覚えていない人もいるかも知れませんが、少なくともゲーム当初、学マスは「歌やダンスが上手くなる」というキャッチコピーで、作中内の育成対象アイドルのボーカルやダンス技術がプレイしていくうちに向上していく、という要素を看板要素の一つに据えていました。

少なくとも最初期の「初」シナリオにおいて、初めて学マスに触れるプロデューサー達にとって、それは完璧に動作しているように思えました。アイドルたちはしょっちゅうライブに失敗したし、最終試験で1位をとれなかった場合、披露されるパフォーマンスもまだまだ未熟なものでした。
時には学校の屋上で、時には噴水の前で、客もまばらなライブの中で必死に未熟な演技を披露する担当アイドル。この時、実際に拙いダンスを踊る3Dモデルと、しょっちゅう音程を外すボーカル。ごくナチュラルに練習中にぶっ倒れる篠澤広。

そして、そこで披露される曲が「初(はじめ)」。「ひとつの夢叶うまで負けない」「たとえ苦しくて諦めそうでも負けられない相手がいる」という、いわば「アイドルという壁への挑戦」を高らかに謳う曲が、この「初」だったわけです。
これ、「ここがスタート地点」だからこそ、「歌とダンスが上手くなる」という要素がきちんと「ゲームの一番の売り」として成立したんだ、と思うんですよね。最初は全くうまくいかない育成、プロデュース。そこで、プレイヤー自身が何度も何度も壁に突き当たるからこそ、そこを一歩一歩乗り越えるアイドルの姿に感情移入できた。そこをくぐり抜けたアイドルたちの姿に感動できた。

大観衆の中でライブを披露する篠澤広。本当の本当に立派になった(無茶振り後の前座だけど)。
その後。最初期の、アイドルとの出会いから初めてのライブまでを描いた「STEP1」から、アイドルたちはそれぞれに歩みを進めました。最初の期末試験を乗り越え、「N.I.A」で見事に勝利をおさめ、次代を担うアイドルの頂点を決めるステージ「H.I.F」に挑戦するまでに成長しました。
例えば広なら、佑芽のライブに触発されて「翌日ライブをやる」とプロデューサーに思いっきり無茶振りして、何故かN.I.Aでは神格化されてファンが宗教団体化したり、その後H.I.F前に「憧れのアイドルの前座としてシークレットライブを挿入される」という無茶振りをされ返したり。
手毬なら、美鈴と仲直りしたり、極月の生徒とのレスバで完勝した姿を思いっきり動画配信されてプロデューサーの計画を崩壊させたり、961プロと勝手に密約をして「過ぎたことはいいですよ」をやり返したり。
これはもうアイドルそれぞれのエピソードが展開されて、個々のシナリオが本当に素晴らしかったんですが、ただその中で、「プレイヤーの習熟度と共に、「歌やダンスが上手くなる」という要素は段々薄れていってしまったなあ、というのは、ほんの少し、本当にほんの少し思ったんですよ。
星奈によってトップアイドルに挑戦する場にまで至った「H.I.F」に、堂々と挑戦するまでに育ったアイドル。そこには間違いなく、一歩一歩プロデューサーと歩んできた足跡があるのですが、「育成ゲーム」という軸でいうと、初期のような「少しずつ歌や踊りが上手くなっていく」という軸と離れてしまったのは確かです。いわば、プロデューサーの手を離れてしまったような、そんな一抹の寂しさがあった。
ただ、STEP4の最後に、その「回答」が待っていました。
「初」オーケストラバージョン。

H.I.F決勝ステージを終え、アイドルとプロデューサーの間の絆を確認する会話のあと、スタッフロールと共に流れ出すのは、STEP1で散々聴いた、あの「初」。その当初はアイドルの歌ではなく、オーケストラ楽器が高々と歌い上げる壮大なオーケストラアレンジ。かつて、未熟なアイドルたちが必死に歌っていたあの曲が、これ以上ない完成度で帰ってきた……!
しかもこれ、壮大な導入からのワンフレーズを聴き終わったあと、ここからアイドルの歌が始まるんですよ。
「私らしい姿を目指したあの頃から変わらない夢を掴み取るの」
「叶えられるきっと この出会いをずっと」

これまで、STEP1のエンディングだった完全シークレットソングの「Campus mode!」からずっと、シナリオ完走後のライブは常に「アイドルの成長」と「プロデューサーとの絆」を感じさせてくれるものでしたが、「H.I.F」というひとつの大団円で、まさかの「初」が流れる。
これ、「アイドルの歌が途中から始まる」というのがひとつの大きなポイントだと思っていて、もちろん最初は「あれ?手毬は歌わないのかな?」と思わせておいていきなりのステージ、というのも度肝を抜かれる演出なんですが、歌の前半部分、「まだ未熟なアイドルが四苦八苦しながら歩んでいく」という部分はインストゥルメンタルになっているんですよね。
「倒れるまでペース配分不要で走る」とか「上手くいかなくて困っちゃう」とか、未熟だった頃の姿を現す歌詞はアイドルの声にはならず、つまりひとつの軸だった「未熟さからの成長」は多少薄れてしまったかも知れないけれど、その根本にある「夢」への思いは変わらない。プロデューサーとの出会いを縁に、この後もずっと歩き続けていく。
広でいうと、まさにこの直前、「今夜だけのトップアイドルという奇跡」という言葉をプロデューサーとの間で交わしているわけですが、それがまあ見事にエンディング・スタッフロールで回収されているなあ、と。
STEP1のあの頃からの「伏線回収」を、本当に見事な形で眼前にお出しされてしまったなあ、と。もうさすがに、開発陣の完全な理解度の前に感嘆する他なかったわけです。
先日のアップデートで、咲季や星奈のSTEP4シナリオが追加されるのと同時に、全員分の親愛度コミュ37話にもこっそりシーンが追加されていました。そこで描写されるのは、このH.I.F編が終ったあと、アイドルたちが歩む道をちょっぴり暗示するもので、「十王プロ編」についての言及もありました。
ただ、「学園アイドルマスター」というゲームの「ここまで」の一区切りとしては、STEP4が描かれたすべてのアイドルについて、素晴らしいシナリオを堪能できたなあ、としみじみするわけなんです。特に広と手毬とことねシナリオは最高でした。ことねPは岩にかじりついてでもSTEP4までをクリアするべき。
今日書きたいことはそれくらいです。


























